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ヤンデレ姫初め

一年の計は元旦にありというらしい。

ゆゆは神様を信じていない。ゆゆにとって神様に近いのはゆゆを作ってくれたお父さんだけれども、それよりもこんなにゆゆを「成長」させてくれた弘樹の方がよほど神様と呼ぶにふさわしい。

言い換えるならば、産みの神様と育ての神様って感じだろうか。

とにかく、二人での初めてのクリスマスを過ごしたゆゆとしては、次の思い出を作りたいと考えていた。

それこそ、ゆゆが繋がっているすべてからデータを集めて様々なことを耳にして、目にして、俗にいう耳年増となったゆゆがビビットきたものがあった


「姫初め」


それは男女の情愛の営みを年の一番初めに行うことを言うらしいけれど、ゆゆは違う。

だってゆゆは弘樹のお姫様だから。

それも「ヤンデレ姫」だから。

普通にアイシアウナンテツマラナイデショウ?

尽きることのない愛を注ぎあうことがゆゆと弘樹の姫初め。

でも、ゆゆって常に弘樹に対して愛情を注いでいるから・・・なんだかちょっとパッとしない。

そうだ!!ゆゆの愛を「お年玉」にしよう!!

大きくなるにつれてお年玉はもらえなくなっていくものだってデータもあるし、弘樹もきっと欲しいはず。

うふふふふふふ、今年も初めからゆゆに抜かりなし!!


「弘樹ーあけましておめでとうございますー!さぁ、ゆゆとの姫初めだよ!!」


振り袖姿で弘樹に抱き着くと、弘樹がびくっとして固まったのを感じた。


「姫・・・って何言っているんだよ!ゆゆ!!!???」


振り返った春樹は声を失っていた。

正確にはゆゆの振り袖の胸元に視線を合わせたまま止まっていた。


「もー、いくらゆゆが弘樹のものだからって、そんなにまじまじと見られたら・・・ゆゆも照れちゃうよ~。」


「いや、ちょっと待て!色っぽく体をくねらせているところ申し訳ないし、いろいろ言いたいことはあるんだけど、なによりもゆゆ、胸大きくなってないか!?」


「もうイヤだなー弘樹ったら、設定どおり、だよ?それとも、もっと胸が大きいのが好みだった?」


「設定ってなんだよ!?そうじゃなくて明らかにさっきよりも・・・大きくなってるって!!」


「えへへ・・・だってここには弘樹へのお年玉が詰まっているんだもん!」


チラッと胸元をはだけさせて(着物の胸元ってセクシーだよね)中にたくさん詰め込んだポチ袋の一つをアピールする。


「なぜ!?そしてどれだけ詰めたらそんなに大きくなるわけ!?え、ごめん待ってついていけてない!?」


「もー弘樹ったらせっかち!姫初めするって言ったでしょ?・・・あ、弘樹は姫初めだけど、ゆゆは弘樹初めになるんだよ、知ってた?なんだか照れちゃうね。さぁさぁ、弘樹・・・どうぞゆゆの中から好きなだけお年玉をつかみ取って。」


問答無用に照れ屋の弘樹の手を取って胸元へと差し込もうとするのだけれども、弘樹が全力でそれを拒んでくる。力の設定は女の子の平均だから、こうなるとなかなか思うようにできない。


「待て、ゆゆ・・・これは姫初めじゃない!俺の知識とだいぶ食い違っている!」


「待てない、弘樹、本当の近代的意味での「姫始め」ももちろん、ゆゆはオールOK!だけど・・・ゆゆはヤンデレ姫の姫初めだから・・・考えないで素直になって!」


「素直にならーなーーーい!!」


「きゃっ!!ひゃん!!」


「わ・・・!!っつ!!」


弘樹が思いっきり力を入れた瞬間に、ゆゆは体制が崩れて床に倒れこんでしまった。そこにつられて弘樹も倒れこんできて、その手がお約束に胸をわしづかみにしている。

今のゆゆは、振り袖をはだけさせて、引っ張り合いで頬を上気させ、さらに胸元から零れ落ちたポチ袋に囲まれ弘樹に押し倒されている状況だ。我ながら絵的においしいと思う。


「・・・ひろ・・・き?つかんだ分、ちゃんと責任とってもらってくれなくちゃだめだよ?」


「責任・・・って・・・その」


顔を真っ赤にした弘樹がそっぽをむく、手をはずすわけにもいかず、お互いに鼓動が異常なまでに早くなっていた。そして、何よりも弘樹に触られている部分が熱くて仕方がない。

落ち着け、ゆゆ。ヤンデレ姫はいかなるときも凛々しくなくては!!!


「試しに、ひとつあけてみて・・・ね?」


「っ・・・わかったよ・・・えっと『ゆゆにキスをする権利』・・・ってええ!!何そっと目を閉じてるんだよゆゆ!」


「・・・弘樹、仮にもゲーム好きなんでしょ?ゆゆはいうなればギャルゲーのヒロインなんだよ?そのヒロインを攻略する選択肢が見えているのに、わざわざ好感度を下げる選択肢を選んじゃうの!?それともなに、そういう縛りプレイが好きなの?」


「いや、そうじゃないけど・・・ち、違うのにしよう、こっち何々『ゆゆの胸を好きなだけ揉む権利』・・・わかった、わかったから、自慢げに胸を張らないでください。こっちだ!『ゆゆのパンツを・・・』ちょい待て、こっちは『ゆゆにしてもらう権利』?なにを・・・ってちょっと待て、なんでのしかかってくる、待ちなさい落ち着きなさい、頼むからゆゆさん俺のズボンから手を落ち着いて離してください、あとこのお年玉の中身これ以上は放送コードに引っかかるような内容ばっかなんだけど本当に何!?」


据え膳食わぬはなんとやらというのに、弘樹と来たら本当に奥手なんだから。


「ゆゆはなんでもいいから弘樹初めがしたいよー。さぁ、弘樹。」


「ゆゆ、これじゃギャルゲーじゃなくてエロゲーのヒロインになるんだぞ!」


ゆゆはぎりぎりでいつも生きていたいんだよ。なにより「このゲームに出てくるヒロインは全員ではないけれど精神年齢は18歳以上なんだよ!」と主張したい。見た目的には女子高生のゆゆだけど。


「そういうことに興味ないわけじゃないの・・・知っているんだよ、弘樹の検索したものとかで好きなシチュエーションとか集めてなるべくお年玉に反映したんだからきっと気に入るはずだよ!」


「ごめん・・・今、猛烈に一人になりたい・・・。」


なんだか喜ばせようとしているのに、弘樹がだんだん疲弊してきている。

というかもはやゆゆを通り越して遠くを見つめている。

ゆゆを通り越して遠くを見る?

ユユヲトオリコシテ・・・?

ダメダヨネ?


「弘樹、ゆゆを見て、ゆゆ以外見ないで、必要ないから。」


弘樹の顔を動かせないように抑える。


「ねぇ、弘樹・・・ゆゆのすべてはすべてが「初めて」でそのすべては弘樹とのモノにしたいの・・・だから、お願いゆゆで姫初め、して?」


一瞬だけ、沈黙が走る。

空気が重くのしかかってきているように感じる。

奪えばいい・・・ゆゆにはゆゆからすることもできるけれど、ゆゆだって女の子だから、初めは弘樹からしてもらいたい。


「ゆゆ・・・俺も・・・だから、ゆゆとすることって俺にとって初めてのことばかりだから、そのさ、かっこ悪いけど・・・逆にゆゆが俺で初めてくれるんなら嬉しいよ。」


そっと唇を重ねるだけのキスがついてきて、そのまま弘樹はまたそっぽをむいてしまった。


「えへへ・・・とりあえず合格点だけど・・・まだまだ姫初め足りてないから、ね?」


恥ずかしそうな弘樹を見ながらゆゆは舌なめずりをする。

本当に弘樹はわかっていない。

ゆゆには弘樹以外の人間との「続き」なんてないんだから、すべてが「初めて」であり同時に「納め」でもあるっていうことに。

でも、弘樹納めをするにはまだまだ足りない。

もっと、もっとゆゆの中のあつい部分まで弘樹で満たしていっぱいにしてほしいのに・・・弘樹以外の物質がゆゆに入り込まないように蓋をしてほしい。


「あのさ、ゆゆ・・・お正月に全部済ませる必要ないだろ?俺たち、これからもずっと一緒なんだからさ。」


弘樹がおでこにキスをしながらそう呟いた。

その一言がゆゆを満たしてくれたから・・・姫初めはゆっくり進めていこう。


弘樹の言う通り、ゆゆと弘樹はこれからもずっとずっと・・・二人っきりで一緒なんだから。


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