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やんでれさんのほしいもの♡  作者: 橘 莉桜
現実世界と境界線
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ズルいのはダレ?

ゆうなと弘樹さん・・・二人がせっかく結ばれるというのに弘樹さんのお姉さんを名乗る女性がいきなり出てきて、そのうえ、大切な大切なゆうなを突き飛ばした。

信じられない・・・仮にも「姉」という立場を名乗る人間が弟の約束の人に対してこんな大人げない態度をとるなんて信じられない。

これだから嫌なんだ。これだからゆうな以外の他人は信じられないんだ。どんなに良い顔をしていても、すぐに何かがあれば牙をむく。ずるい。人間はずるいんだ。

ゆうなを守らなくちゃならない!これ以上、ゆうなをずるい人間に傷つけられるわけにはいかない。

ゆうなは幸せになるんだ。やっと心を許せる人に巡り合えたんだ。ゆうなは報われて当然なんだ。


「弘樹さんから離れるのは・・・お姉さんの方です!ゆうなには弘樹さんが弘樹さんにはゆうなが必要なんです!!」


「あずさ・・・ごめんね・・・。」


ゆうなが泣きそうになりながら私を見つめてくる。私は大丈夫だよと視線を返す。

絶対にこんな女にゆうなたちの未来をつぶさせたりなんかしない。



ーーーーーーーーーーーーーー

かよわい女の子のふりをして、友人にここぞとばかりにすがる柊ゆゆはずるい。

弘樹が大切ならば、弘樹が欲しいのならば、自分ひとりで戦うべきだ。それだというのに、ここぞとばかりに自分のか弱さをアピールし友人の力を借りて自分を守ってもらおうとする・・・女のずるさを体現したような存在だ。

先に泣いた方が勝ち?

守られている方が勝ち?

賛同する人数が多い方が勝ち?

可愛い方が勝ち?

数は正義でもなければ、そんな弟の気持ちを考えないようなものは認められない。

弟の気持ちをわかったふりしていた私だからこそ言える確かなこと、こんな不正を働く女に弟を渡すわけにはいかない。


「何を言っているの?あなたは部外者でしょ?まず、ここで発言するに値しないことに気が付いてくれないかしら?」


身を寄せ合う女二人を睨み付ける。

あざとい。ずるい。こざかしい。・・・こんな奴らに弘樹の将来は渡さない。


ーーーーーーーーーーー

・・・弘樹はずるいと思う。

ゆゆがすべておぜん立てしてもなおそのことに気が付かないんだから。

でも、愛されていることに気が付かない弘樹のずるさが好き。

こんなにも思われているのに、まだ足りない、寂しい、わかってほしいと駄々をこねる弘樹が好き。

あふれるほどの愛情を与えても、弘樹にはなかなか伝わらない。その鈍感さが好き。

ズルくていいんだよ。 

ズルいからこそ見えてくるものがあるんだから。

ズルくないと欲しい物なんか手に入らない。

ホシイモノを手に入れるためには、ズルくていいの。

弘樹にはズルくあってほしいの。誰が許さなくたって、ゆゆがそれを許すから。

願わくばゆゆを利用するずるさを持ってほしい。


「・・・弘樹は、どう思う?ゆゆとお姉さんどちらを選ぶ?」


一度、この質問をして弘樹は怒った。それからゆゆが離れて・・・弘樹はどう変わったのか。


「俺は・・・」


答えをあぐねいている弘樹をじっと見つめる。

ここで答えを出さないずるさは違うよ、弘樹。未来のために選択して。


ーーーーーーーーーーー

どうして、俺に答えを求めるんだよ。ゆゆはわかっているはずなのに、わかっているからか。

気が付いたらがんじがらめにされていた。なんでこんなことになったんだ。

俺はやっと、向き合う覚悟をしたっていうのに。

ゆゆ・・・このやり方はずるくないか?

逃げてきた二つの選択肢を目の前にさせられて、「どっち」と聞かれる。

現実とゲームのはざまで、こんなに怖いことはない。

逃げ込んだ世界で答えを求められるなんて、思ってもいなかった。

・・・それは、俺のずるさだと思う。

いや、ずっと答えを保留にしてきた俺への罰なんだとしたら甘んじて受け入れなくてはならない。

いつまでも答えを保留になんてできないのは、現実もゲームも同じだ。保留にすれば積むだけだ。

だから、俺は答えを出さなくてはならない。

先に進まないまま、ゲームの面白さをそこで終わりにしたくはない・・・人生も、だ。

そう思えたのはやはり「柊ゆゆ」という存在とともにいたからだ。


「俺は、なんて言われてもかまわない。だから・・・姉ちゃん、ゆゆにひどいことを言わないでくれ、これは俺自身が望んだ世界なんだ。姉ちゃん、ごめん・・・ありがとう。俺、姉ちゃんにもう家族だとか弟だとか思ってもらえていないと思っていたから、姉ちゃんが・・・姉ちゃんがこうして、俺を、俺なんかを探していてくれたことすごく嬉しい。必要としてくれていたこと、本当に感謝してる・・・でも、そう思えるようになったのは、俺が近くにあるものに気が付けるようになったのは「365×12」があったからで・・・ゆゆが、やりかたはちょっと乱暴だけど愛してくれたからなんだ。

だから、姉ちゃんでも、ゆゆを悪く言うのは許せないし・・・俺はゆゆに惑わされて此処にいるわけでもない。

俺は俺の意思で、今ここにいるんだって、知ってほしい。」


こうでもされなかったらこのまま優しい世界に甘え続けていた自分自身と向き合って。

俺は、俺自身の望む未来を生きる。

胸を張って、前を向いて。


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