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やんでれさんのほしいもの♡  作者: 橘 莉桜
現実世界と境界線
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あずさ 21歳

私の名前は「木之元きのもと 梓紗あずさ」25歳。最近大学を卒業して社会人になったばかりで毎日に追われてなんとか生きている。お給料は決して高くないけど、とりあえず残業が少なくすんでいるのだけは助かってはいる。お給料だけではまかなえない部分を補う仕事をすることができるから。

この場所での私は「あずさ」幼く見られがちな顔立ちを利用して21歳の大学生ということにしている。学生の頃は気が付かなかったけど、学生というブランドはやっぱり強いし・・・本当のことを書きすぎるのもアレだから別にいいかなって思っている。

おしまい。


プロフィールは短めに。

そうそう知ってますか?プロフィールを長く語る人ほどうつになりやすいそうですよ。これは、大学で学んだ豆知識。いらないですか、そうですか。

それじゃぁ、この場所で期待されているであろうお話をしますか?

身長は143センチ、足は21センチ子どもサイズがぴったりですが、実はちょっとおっぱいには自信があって、Dカップありまーす!ワンピースとかふりふりのお洋服が好きでーす。お酒は強くはないけど、楽しい雰囲気にしてくれる人大好き!カラオケも今どきのから、演歌にアニソンまで幅広く歌いまーす。押しに弱いところがあるので、りリードしてくれる人がいたら嬉しいな☆


大体こんな感じで過ごしています。自分でもどうしてこうなったのかはあまり思い出したくありません。

嫌いなものは、家族、大人、男。好きなものはお金。

あぁそうそう、最近は「365×12」が特に大嫌いです。

だって、あのゲームができてからこの場所に来る男の人減ったし、男の人が減るってことは「お小遣い」もらうチャンスが減るってことで、私にとってはあのゲームは商売敵。だって無限におしゃべりの相手をしてくれるんでしょ?10分1000円の私なんて相手にするよりずっといいのはわかるもん。

でも、ゲームにはできないことが「実体のある」私にはできるから、ぬくもりとか、快楽とか、結果人間の本能の求めるものを埋められるのは人間だから、最終的にはまた男の人はこっちに戻ってくると思っているから、私はここに通い続けている。


はじめて来たときは、友達と一緒で、すごく緊張したのを覚えている。どっちかが先に指名されるか、どんなことを言われるか、それとも二人とも一緒に指名してくれたりするのか・・・はじめてはとにかくドキドキして大変だ。相手を選ぶとかそんな余裕もなく、好きなようにもてあそばれた苦い記憶もある。まぁ、それは自分が未熟だったから仕方がない。

友達は途中で死んじゃった。

ここの店員と付き合っていたんだけど、そいつが自分のことしか頭にないドSの意味をはき違えた最低な男で、言葉巧みに恥ずかしい写真や怖い思いをたくさんされて、お金をまきあげられて、助けてっていった直後に自殺しちゃった。

今でもあの子を覚えている。忘れられるはずがない。助けられなかった自分も、あの子の言葉を信じてくれなかった大人もすべてが憎かった。大人たちはこんな場所に出入りしていた私たちを見ないふりして、汚いものにふたをするように説教だけをして、すべてをなかったことにして、たいしたお咎めもなく店員はのうのうと生きている。


それ以来、私に友達と呼べる人はいない。


え?なんでそんなことがあったのにまだおまえこそ、のうのうとここに来ているんだって?

・・・だって、私一人きれいな場所には戻れないから。あの子が最後にいた場所を完璧に否定して、逃げて自分ひとり、今更普通に生きれるなんて思えないから。それに私は、この場所の味を知ってしまったから。自分をあの家から解放するには、こうでもしないとお金が足りない。

悲劇を気取ったりはしない。結構よくあることだと思うし、ここにいる子はたいてい何かを抱えているから気にする必要もないし。


・・・一人で、自己責任でいればいいから気楽なんだよね。

汚い世界ではあるけど、私を求める人はいて、私はそのおかげで生きることができて、そうやって世界が成り立っているからしかたがない。

怖いのはこのまま年を重ねていって、誰にも相手にされなくなって、本当に一人になるときかな。

今だって、いつまでこの嘘がまかり通るかドキドキしてるし。

時間の流れって残酷だね。

唯一とも言ってもいい私の価値を無くしていってしまうんだから。私は、美しく老いることはできないって自覚している。お化粧とか年相応の言動とかとること苦手だし、子どもらしく振舞うことで得することを覚えてしまったからこの習性はきっと修正できない。そう考えると、来年のことはおろか、一か月後のことを考えるのも嫌になる。

男の人は嫌いだけど、一時でもおなかがいっぱいに満たされる感覚を知ってしまうと、その安らぎにすがりたくなる。泣きたいくらいに、私はお腹がすいて我慢できなくなる時があるんだ。みんなはこういう時どうしているんだろうって聞いてみたくなる・・・聞く相手ももういないけど。


だから、私は今日もこのガラクタだらけのビルの雑居のような部屋の中に座っている。

この中の漫画は読み飽きたし、特にインターネットも使いたくもない、いや、PCに近寄ることはマジックミラーに近寄るということであり男たちの視線を一身に浴びることになるからあまりしたくない。

空っぽになった紙コップを見つめる。


「ミルクティーでも、飲もうかな・・・。」


誰にともなくつぶやき、立ち上がろうとした瞬間、チンチンと女の子の来店を表すベルが鳴った。

店員の男がなにやら丁寧に説明をしているということは、初めての子が来たのか・・・特に興味はないけれどそっちを見てみた瞬間、私は雷に打たれたような気分になった。

ふわふわの肩までの髪。ゆるくかかったウェーブ。ピンクのカーディガン、人形のように整った顔立ちには見覚えがあった。


「ゆうな・・・。」


小さく名前を呼んだとき、室内を見渡す彼女と目があったような気がした。

目を離すと消えてしまうのではないかという儚さ。愁いを帯びた瞳。忘れもしないゆうなのトレードマークの四葉のクローバーのヘアピン。


『大丈夫、大丈夫、私たち二人とも将来はとっても幸せになるよ。この四葉がついているもん!』


男たちが踏みにじった四葉・・・。

でもゆうながいるはずなんてない。そんなことありえないんだ。

そう自分に言い聞かせても、私の瞳はその女の子から離せなくなっていた。


この子と・・・ゆうなともう一度、友達になりたい・・・。

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