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やんでれさんのほしいもの♡  作者: 橘 莉桜
現実世界と境界線
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もものおじかん

「すごい、ニュースになっているよ、モモたん消えちゃったんだって…でも、関係ないね、俺には本物のモモたんがいてくれるからね。」


知らないお兄さんは、パソコンを壊してからももかをまた知らないところへ連れて行きました。

そこは、木で囲まれたおとぎ話の中の世界のような場所です。

ももかはたまにテレビを見させてもらいます。お父さんの会社で大きな事件があったことを知りました。

とてもとても心配です。


「モモたんは…どうなってしまったのですか?」


「何を言っているんだい?君がモモたんだろ?」


違いますというと、お兄さんはとても怖くなります。だからももかは黙っていることを覚えました。

本当はお返事をしないのは悪いことだとお父さんに教わっていましたが、「うそもほうべん」という言葉があることをももかは知っています。…お父さんがももかを悲しませないようにお母さんが病気でそれが悪い病気なことを隠していたように。


「モモたん、今日はオムライスを作ろうか?それともハンバーグカレーがいいかな?そうだ、デザートにパフェも作ろう!」


お兄さんはお料理を作るのが上手じゃないので、作るのはももかです。でも、あまり美味しくはできないのですが、お兄さんは美味しいと言って食べます。お料理は味が大事なんじゃないんだそうです。だれがつくって、だれと食べるかが大事なんだそうです。

…そのことは、ももかもよくわかります。お母さんが作ってくれて、お父さんとお母さんと三人で食べたごはんはどんなレストランよりもおいしかったからです。

だから…今はごはんがあんまりおいしくありません。


「モモたん元気がないね?そうだ、今日はおうちにピザ屋さんを頼もうか!そうして、新しく始まったアニメを見ながら一緒に食べよう。」


お兄さんはももかの好きなものをなぜかすごくよく知っています。ももかの好きなアニメのことやお洋服、好きな遊び、なんでも準備してくれます。

でも、ももかの一番合いたい人を準備してはくれません。


「ピザはいらないのです…ももかがごはんを作ります。」


「遠慮しなくてもいいのに、モモたんは本当に良い子だなー。」


ももかは、お兄さんがももかのためにたくさんお金を使っていることを知りました。でも、ももかはそれに喜んであげられません。だから、せめてもにももかができることはももかがして、お兄さんが余計なお金を使わないようにと思っています。

それに、お兄さんは気を付けないとお父さんみたいに偏ったものしか食べません。

好きなものだけを食べていてはだめだよとお母さんが言っていました。

お兄さんはももかが作ったものは残しません。だからももかはお母さんがしていたことを思い出していろいろ工夫をします。


お兄さんは怖い人だけど…悪い人ではなくて、とてもさみしいってわかったから。


「おぉ、モモたん、にゃんころセブンの八人目が出てくるって情報がでてるよ!楽しみだね~!久しぶりにおもちゃコーナーに行こうか!」


「…八人目…」


「どうしたの?モモたん、嬉しくないの?」


…にゃんころセブンは七人で完璧だったのに…数が増えたら…けんかしちゃうんじゃないかな…ももかは…イヤだな。

失敗したり、恥ずかしい思いをして…にゃんころセブンは強くなっていくけど、ももかはそういうシーンになると大好きなんだけど、胸が苦しくて、苦しくて見ていられなくなってしまうの。だから…しらないにゃんころがふえるのは…イヤだな。


「お兄さん、ももか…おうちに帰りたいです。」


はっとしました…ももかはなんでこんなことを言ってましまったんでしょう。お兄さんはまた怖いお兄さんになるに決まっているのに…いけない、いけないのに…。


「おうちに…帰りたいの、お父さんにももか、元気だよって伝えられたら、それで…ぐっ‼」


「なんでそんなことを言うのかな?モモたん、モモたんは、ずっと俺についていてくれるんだよね…それにモモたんの家はここだよ…分かるよね、ね?」


「ぐ…る…し…ぃ」


「分かるよね?分かれよ!もうモモたんはおまえしかいないんだよ!」


つかまれた…首が…痛くて、苦しくて…逃げ出したいのに、足がバタバタするだけで…涙だけが溢れてきて…。


「…わかっ…た…の」


「そうか、そうだよね!モモたんは良い子だからね、二度とウソはついちゃいけないからね…」


「げほ…げほ…分かりました…」


お兄さんは、ももかをぎゅーっとしました…心臓がすごくドキドキしているのがわかりました。


お兄さんは…とてもさみしい人なんです。

ももかもお母さんが死んでしまったときすごくさみしい思いをしましたが…お父さんがいてくれました。

だけど、お兄さんには…きっとももかしないのだと思いました。


お父さん…ごめんなさい…ももかは…もう帰れないと思います。

ううん…ももかはここで死んでしまうのだと思います…そして…モモたんとして…生きていくのだと思います。


「…ごはん、作ってきます…」


せめてもに、おいしいごはんを食べてもらおう…お兄さんがさみしくないように…。


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