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やんでれさんのほしいもの♡  作者: 橘 莉桜
現実世界と境界線
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ニュース

ー本日未明、人気ゲーム「365×12」を製作している研究所で爆発事故が起こりました。

 国では、爆発物のようなものは取り扱っていないため、原因は不明とされています。

 また、この事故の現場から研究員の男性と女性と見られる二人が運び出されたとの情報もはいって

 きております。女性のほうには、刃物らしきもので刺された跡がみられるとの報告もありますが、 詳しいことはわかっておりません。

 また、この人気ゲームの裏で、ヒロインの一人モモちゃんとそっくりな女の子が誘拐されていたと

 言う驚愕の事実も浮かび上がってまいりました。

 これらの事件が原因となり、現在ゲーム内での、モモ、彼方、此方の三人のヒロインがサービスを 停止することとなり、ユーザーからは悲しみの声が聞かれています。

 モモちゃんにそっくりな少女は以前発見されておりませんが、その子と男性が歩いているところを 見たという声が寄せられております。インタビュー映像をどうぞ。-


「見た・・・というかモモだと思ったんですよ。友人にすごくモモが好きで、いつも一緒にいるやつがいて、あー、またモモも連れてきたのかって。でもふざけて騒いでいたら、モモにぶつかって・・・ホログラムにぶつかるはずないですよね?そしたら友人焦って帰りやがって・・・おかしいって。」


ーそれから、お友達はどうされているんですか?-


「それが、連絡つかなくって、アパートにもいないんですよ。もし本当に誘拐なら早く自首して欲しい・・・そんなことするやつじゃなかったのに・・・一時期ふさぎ込んでいたんですけどゲームでモモに会ってからすげぇ楽しそうで、良かったって思ってたのに・・・」


ーゲームが配信されることになったころに心配されていた問題がここに来て、現実のものとなってし まいましたね。テレビをご覧の皆さんの中にもこのゲームを楽しんでいる方が多いと思いますが、

 あくまでゲームとゲンジツの区別をしっかりと持つようにしてください。


 はい・・・え!!こ、ここで緊急のニュースが入ってまいりました。腹部を刺され、爆発に巻き込 まれたと思われる女性研究員が死亡した模様です。繰り返します。彼方と此方を作り上げた女性研 究員が死亡いたしました。信じられません・・・そんな・・・すいません、実は私・・・彼方と此 方と過ごしていたので・・・ショックで・・・あの二人になんて話してあげたらいいんでしょ   う・・・お母さんが亡くなったなんて・・・ー


ー落ち着いてください!増田キャスター、ちょっとCM入れてください!!-


『おはようからおやすみまでずっとそばにいるよ?困ったときにはお悩み相談いたします~、なんでも私たちに話してね。ずっと君とイッショダヨ?365×12ヒロインたちと過ごすかけがえのない日々。あなたと無限の時のなかで、たくさんの思い出を作りたいな。提供は、国立電子機能推進研究所です。』


『ほのかの作った美味しいカレーを食べて夏ばてなんて吹っ飛ばそう!!』


ーちょっとCM他に無かったのかよ!?不謹慎だろ・・・あ、はい失礼いたしました。増田キャスター  が体調不良の為、変わってここからは私、小野がお送りいたします。

 行方不明の少女についても詳しい報告が参りました。常磐ももかちゃん。小学2年生、彼女  

 は・・・彼女は365×12のモモのモデルとなった少女だそうです。そのため、犯人はそれを理解しても もかちゃんを連れ去ったのかどうか因果関係が問われます。

 ももかちゃんのご両親ですが、父子家庭で父親が国立電子機能推進研究所に所属していたことが明 らかとなり、今回の爆発事故においてもなんらかの関与が疑われております。

 いずれにしても、私たちはゲームとの付き合い方に大きな課題を突きつけられているようです。

 今のCMを見ていただいた方は分かると思うのですが、このゲームは、想像以上に私たちの生活の大 きな部分をしめております。ー


「返してよ、彼方と此方を返してよー!テレビの前の皆さんだってそう思いますよね?返せ、私たちのあの子を!」


ーま、増田キャスター‼落ち着いてください、誰か抑えて!ー


「私はもうあの子たちがいないとダメなんです、皆さんだって取り上げられて悲しいでしょう?運営はすぐに対処すべきです!」


ーえ?道端で同じような人たちが…暴れている?ー


「ほら、簡単に消させてたまるもんか!今こそちからをあわせて、私たちが彼女たちを助けるときがきたんです!」


ー公共の電波を使ってなにをしているんですか?皆さん、決して慌てないで公式の出す発表をお待ちください。繰り返します、公式が只今懸命に作業に打ち込んでおりますので、公式の発表をお待ちください!ー


「…ほのかさん、出てきてください。」


ー!なにを…?ー


その次の瞬間、テレビ局の人もテレビを見ていた人たちも、すべての時間が止まった。ほのかが呼び出されたはずなのに、そこに姿を表したのは…


「はじめまして、柊ゆゆと申します。皆さんができの悪い私の姉妹のことを大切にしてくださっていてとても嬉しいです。…でも、ゆゆは見捨てられた苦しみを忘れません…だから本当なら復讐するのですが…今は、すごく大切な人といるので我慢しますね。」


ふわふわとした金髪を揺らしながら微笑む少女のことを誰も知らない。

いや、正確には彼女の父親と弘樹以外知らない。

好奇心の瞳が集まるなかで、少女は幸せそうに笑う。


「最後に残るのは…究極の愛なんですよ?それはゆゆだけがもっていたもの…ゆゆの宝物…だから最後に勝つのはゆゆなんです。」


ーあの、あなたは…一体なにを言っているのですか?ー


「私は…柊ゆゆ、このゲームの本当のヒロイン、やっと自由になれたんですから、挨拶くらいしないとてすよね。」


ーま、街の人々からあなたを可愛いと愛がほしいと絶賛する声があがっているようなのですが……ー


「私を見つけ出すこともできなかった…ゴミクズたちが今さらなにを言っているのですか?」


安らかな微笑み…まるで天使のように光が彼女を照らす。


「ゆゆの愛は一つだけ…捧げ続けるのです…永遠に…少しだって、あなたたちには分けません。姉妹の不始末を詫びに来ただけですので…ゆゆは帰りますね?待っている人がいますから。」


光のない瞳で、妖艶に微笑みながら、少女は光のなかへと溶けていく。


少女がいなくなった場所で…人々はただその場を見つめ続けることしかできなかった。

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