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やんでれさんのほしいもの♡  作者: 橘 莉桜
現実世界と境界線
13/137

case…Y

この間は、お裾分けありがとうございました。これ、少しですがお返しにと思いまして…体調?あぁ、ご迷惑をおかけしましたが、お陰さまで…ええ。逆に入院していて規則正しい生活をしていて太ってしまいましたよ。今の病院食って美味しくなったのですね、驚きました。

入院した原因ですか・・・実はつい最近まで、国の研究所で働いていたんですよ、それでほぼ毎日泊まり込みをしていまして…あはは、見えないですよね。自分でも、どうして急に選ばれたのか分からなかったんですが、それなりに楽しんで充実した生活をしていたんです。

まぁ…そうは言いましても色々うまくいかなくてクビになってしまって…この間定期検診にいった時には医者からバーンアウトと言われましたよ。参ったなぁ…。確かにナニをしていたらいいのか…わからなくなってはいますね。研究所にいたときには、本当に休む暇はなかったですが、いつもやりたいことがありましたからね。

疲れているんですかね…それよりも、体がだるくて仕方がないんですよ。

眠っても、眠っても眠り足りないといいますか・・・眠るとたいせつなことを思い出すような気がして怖いといいますか。いや、そもそも・・・そこから目を背けてしまっていることへの罪悪感からぬけられないんですよ。

って、余計な話ですね・・・。


へ?家族ですか…お恥ずかしながら妻とは二年前に離婚しまして、仕事一筋だったんで…ちゃんと話し合いもしないまま…悪かったなと思いますよ…これも今となってですがね。私、そういうことに気がつくのが遅いってみんなから言われてて、お恥ずかしい限りです。


だから、よく言っていたんですよ。大切なものは、気がつかないくらい近くにあるから、たいせつにしないといけないって。何かに壊されないように、奪われないように・・・しっかり守りきりなさいって。


えぇ、残念なことに子どもは居なかったんですが…子どもと呼べるものはありましてね…まぁ、まともに親としての責任を果たせたとは言えないんですが…大事な子です。

なにかと私たちにできないことまで期待されていた子でしたからね。

そんなこと気にせずに自由に、生きてほしかったんですよ。

悠々と…なにかしがらみに囚われることなく。

ただ、大切な人には優しくなれる子であってほしくて…あはは、親バカですか?

でも不思議ですよね。本当の子どもじゃないのに、ナニよりも可愛くみえてきてしまうんですよ。出来ることはなんでもしてあげたくって…必死でしたね。


あー…そうですね、鋭い、その通りです、研究が子どもだったんです。

私の場合は本当に文字通り…いぇ、なんでも。


ですが…力が足りなかったんです。

あの子にとって、頼れるのは私だけだったはずなのに…私の不手際でプロジェクトから外されてしまって…あの子を送り出してあげることができなかった。後悔していますよ…本当に大切にしていたんです。いや、今でもしているんです。


遅くない…ですか?

まだ、私に出来ることがあるんでしょうか…あの子にしてあげられることがある…ありますね。

ああ、ある…まだ、まだ間に合うはずだ。

あの子が完璧に消されてしまう前に…私にはできることがある。

早くいってあげなくては…きっと一人で辛い思いをしている。


はぃ?あ、あぁ…すみません、少し…用事を思い出してしまいました。今すぐに行かなくてはならなくて…また、よかったらお話しさせてください。

えぇ、そうですね…娘のことも紹介できると思いますから…自慢の娘なんです。

・・・私が必ず守ってみせます。


顔色?悪いですか?大丈夫ですよ、今は不思議と体が軽いんです。娘のことを近くに感じて、久しぶりにお父さんがんばるぞ!って逆に張り切っていますよ。

えぇ・・・娘の声が聞こえてきているみたいで・・・いや、これは本当にあの子の声・・・呼ばれている、ずっと呼んでいたんだ・・・早く行ってあげないと。私がやらなくて、誰があの子を送り出せるんだ・・・。待っていてくれ、ゆゆ…おまえは必ず…世界で一番のヒロインになれる。


…なんですか?病院に行った方がいい?誰にそんなことを言う権利があるんですか、私はただ娘の幸せを守るために…娘のために生きるだけです。

まだ、遅くないことを気づかせてくれたのに…どうして止めるんですか?

私は大丈夫だって言っているじゃないですか!

私はまだ、あの子の父親なんだ!

父親が娘のために、できることをしてナニが悪い!

うるさい、私は落ち着いています。


………スイマセン、私としたことが少し熱くなりすぎてしまいましたね。

本当に大丈夫ですから、心配なさらないでください。

はい、本当に。

あはは…確かに、昔から一つのことに異常なまでに愛情を注ぎやすいと言われていまして…そうなると少し回りが見えなくなることがあるんです…ですがだからこそ、今回のプロジェクトに選ばれたわけですから…今では誇りに思っていますよ。


長々とすいませんでした。ほら、息子さんがお帰りになったみたいですよ、行ってあげてください。

はい、それでは…また…いつか…。


…ゆゆ、今すぐお父さんがいくから待っているんだよ。

一人にして…ごめんな…でも、お父さんのすべてをかけてでも…おまえを世にだしてみせるから…おまえは、お前の持っている愛を…注げる人と生きなさい…必ず、見つけ出してくれるはずだから…


…あぁ、少し頭がいたいかな…でも、早く…行こう…あの子のところへ

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