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やんでれさんのほしいもの♡  作者: 橘 莉桜
現実世界と非現実的存在
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死後の世界について

死後の世界について考えたことはありますか?

私は、最近よく考えてしまいます。それこそ夕飯の支度をしているときに、次は大根を切ろうとしていたはずなのに、「あぁ、大根って死んでからも食べられるのかな?」みたいな見当はずれなことを思ってしまったり…というのも、私はあまり身体が丈夫ではないからです。

本当なら病院でみてもらえばいいというのですが、私の両親は忙しくてあまり私に関心がありません。

生活費も最低限度を渡してくれるだけなので、それをやりくりして…だから病院にかかるなんていうことは少し…私には難しいのです。

こういうことを知ると、大人は眉をひそめて、関係機関と言うものに連絡をしようとするのですが、私は今の生活が嫌いなわけではないのです。無理やりどこかに連れていかれるのは嫌なんです。

両親はあまり優しくはないけれど、優しい時もあって、だからここを守らなくてはならなくて、なにより弟君と二人で家族をしているのは、楽しいし、幸せです。

あ、話がズレてしまいました…それで、死後の世界についてのお話です。

今の私にとって、死後の世界はそっと手を伸ばしたところにあるくらいの身近な存在です。


近所にとても優しいおばあさんが住んでいました。

私はおばあさんとお料理を作るのが大好きでした。

おばあさんはいろんなことを教えてくれました。

おかげで私は料理やお洗濯が得意になりました。


おばあさんは私に「死後の世界」についても話してくれました。

今、たくさん辛くても頑張って笑っていると大人になっても優しい顔のままでいられて、さらにお年寄りになると生まれてから一番多くしていた顔になるのでその時も優しい顔でいられると、死んでからも幸せになれるそうです。多くの人は、生きているうちに怒ってばかりで怖い顔や難しいことを考えすぎて困った顔になってしまうそうです。


私は、一時期死ぬことが怖くて仕方がなかったのです。

あれは確か、小学校の三年生くらいの夏休みのことでした。学校の前でキリスト教の人が配っていた絵本を読んだときから「死」というものを強く意識したのです。その中の地獄で苦しむ人たちの絵が怖くて、怖くて…できればもう二度と触りたくもなかったのです。でもその本を捨ててしまうことはとても悪いことのように感じて困っていた時に、おばあさんがその本をもらってくれました。

おばあさんはその本の言うことはとても正しいことだけど、ほのかちゃんにはもっと簡単なお話があるよと言いました。

そうして、死んでからも笑顔でいられるお話をしてくれたのです。

そのお話を聞いてから私は死ぬことへの怖さがなくなりました。

おばあさんはとても優しい顔をしているので、きっと死んでからも幸せにしていると思うんです。

そう…きっとおばあさんは私のことをあの優しい顔で死後の世界で待っていてくれているんです。


だから私は、またおばあさんとお話しするためにも笑顔でいなくてはいけないのです。

私は弟君のことを考えると笑顔になれます。一緒にご飯を食べて、お勉強をして、一緒に寝るのがとても幸せです。だから一日のほとんどを笑顔で過ごしています。

弟君がいてくれて本当に良かったなって思います。

だって、弟君といるとたくさん笑顔になれるから、きっと私は死んでからも幸せになれるんです。


でもこれは私だけの秘密にしてあります。


おばあさんが亡くなってから、弟君は「死」というものを昔の私みたいに怖がるようになってしまったから…弟君にも死んでからも幸せになれるお話はしてあげたのですが、まだよくわからないみたいだから。

私は鳥を見ると「死んだら一緒に空を飛べるのかな?きっと気持ちいいだろうな」と考えてもそれを口にしないことにしました。

私は死ぬことは怖くないけれど、弟君は私が死ぬことをとても怖がっているみたいだから。

私は弟君はとても優しいなって思うんです。だって普通なら「自分が死ぬこと」を怖がるはずなのに、弟君は「私が死ぬこと」を怖がってくれるから。

だから、そんな優しい弟君の為にも、私は死後の世界で幸せにならなくてはいけないのです。


一つだけ、弟君と会えなくなるのだけは寂しいし、心配ですが、きっと私が幸せになれる世界には弟君がいると思うんです…それは弟君も死んでしまってそばにいるとかではなくて…なんていうんだろう、きっと弟君とは死後の世界でも一緒にいられると思うんです。

ただの予感でしかありませんが…だってそれが私の幸せだから。

形はお姉ちゃんと弟君ではなくなってしまっているかもしれませんが、きっとずっと一緒のはずです。


最近、また咳が止まらなくなってきました。夜に弟君の目が覚めないか心配になります。とても苦しくて苦しくて…涙が出そうになりますが、すやすやと寝ている弟君の顔を見るとやはり笑顔になれるのです。

笑顔になればなるだけ、これからもずっと弟君と幸せでいられる。

死後の世界について考えることは幸せな未来について思いをはせること。



私は夢を見ます。

大人になった私が、自分の身長を追い越してしまった弟君と一緒にいろんなことをする夢を。

いろんな人を笑顔にして、私たちも笑っていて…とても幸せで、でも少しだけ…なにかが少しだけ切ない…そんな夢を。どうかこのシアワセな夢が醒めませんようにと私は祈りながら瞳を閉じます。


死後の世界が幸せでありますように。

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