女の子はやんでれさんを目指す
…ゆるせないと思いました。
このあいだ、研究室に来たお姉ちゃんは…ももかたちの作ったお姉ちゃん。
人間じゃないのです。
今は、ももかのお父さんとお母さんもお姉ちゃんと同じように人間じゃありません。それでもももかは、ただいまが言えてシアワセでした。なのにそれはいけないことだとみんなが言いました。ももかはもうシアワセなおうちには帰れないんだよって言いました。
どうして?と聞くと人間じゃないものに人間が育てられてはいけないと言われました。
ももかには意味が分かりません。お父さんもお母さんも、人間と何がちがうのですか?
悪いことをしたらちゃんとしかって、悲しい時はお話を聞いてくれて…今までのお父さんとお母さんと変わらないのに…なにがいけないのですか?
ももかはお兄ちゃんと、人間じゃないお姉ちゃんを探しました。
人間じゃないお姉ちゃんは…お兄さんと、もう一人のお姉さんと三人で楽しそうにお話をしながら歩いていました。
学校に行くみたいです。人間じゃないのに人間と同じことをしています。
お兄さんと人間じゃないお姉ちゃんはとても仲がよさそうです。二人でべったりしています。
ももかは…なんだかとてもいらいらしました。
どうしてももかはゆるされなかったのに、こっちのお姉さんはシアワセをゆるされたのですか?
「…ゆるせないです…。」
ももかはお兄ちゃんに言いました。
お兄ちゃんはとても悲しそうな顔をしながら、わかったよ、と言いました。
…本当はうそをついていたお兄ちゃんのことだってゆるせなかったのですが…あまりにもももかにごめんなさいをするのでしかたがないのです。
少し前、人間じゃないお姉ちゃんは、急に研究室にやってきて研究室の人たちに言いました。
「…私…ゆうなの赤ちゃんを返してください…あなたたちなら意味が分かるはずです。
この場で渡さないのなら、もう一度、この研究所をつぶすと思ってください。
私はあなたたちが失敗作だと言った柊ゆゆ…前の事件を理解しているなら、私の言っていることの 意味、わかりますよね??
私はいまだにここの一部なのです…データを流すことも潰すことも…簡単にできます。」
にっこりと笑いながら、そのお姉ちゃんはすごく難しいことを研究室のおじさんたちに言いました。
おじさんたちはすごく慌てて、青くなってみんなして入ってはいけない部屋へときえていきました。
お姉ちゃんはそこに残っているしかなかったももかを見ると、少しさみしそうにしました。
「…ごめんね、早くいろんなことがわかるようになるといいね。」
「…う?」
「今は、分からなくていいの…でも、きっとわかるから。あなたのことを愛してくれている人がいるってこと。」
なにを話しているのか分からなかったけれど…お姉ちゃんはももかにはおじさんたちとは違った笑顔をむけてくれていました。
すぐに、おじさんたちはベットに眠った女の人を乗せて連れてきました。
ももかは驚きました。その女の人は、目の前にいる人間じゃないお姉ちゃんにそっくりだったからです。
人間じゃないお姉ちゃんは、その女の人に優しくさわりました。
「…ありがとう…ゆうな、この子は大切にゆゆの身体にさせてもらうね。」
何が起こったのかは、わかりませんでした。
気が付いたら、人間じゃないお姉ちゃんは消えていて、眠っていたはずの女の人がむくりと立ち上がり、大きく背伸びをするとそのままなにも言わずに研究室を出ていってしまったのです。
おじさんたちはしきりに「奇跡だ!」「データを残せ!」「俺たちの研究が神に認められたんだ!」
いろんなよくわからない言葉を話していました。
人間じゃないお姉さんが人間になったんだよ。
とおじさんたちはももかに言いました。
それならば、ももかのお父さんとお母さんももう一度人間になればいいんだとももかは思って、おじさんたちにおねがいしました。
「あのAIが人間になれたのは人智を超えた愛があったから…特別じゃないと無理なんだ。」
みんながももかたちは特別じゃないから無理だと言いました。
どうしてだろう…ももかはお父さんたちが大好きなのに…あのお姉さんの大好きと何がちがうの?
どうしてももかはトクベツをしちゃいけないの?
トクベツになれる愛ってどんなものなの?好きじゃ足りないの?
「…お兄ちゃん、トクベツの愛ってなぁに?」
「それはね…なにがあってもずっと好きってことかな…。」
「ももか、それならトクベツだよ、なにがあってもずっと好きだよ!なのにトクベツじゃないの?」
「それは…。」
お兄ちゃんはちゃんと答えを教えてくれません。
答えがわからないときには、よーく調べなさいと先生が言っていました。
お花が大きくならないのもよーくみれば原因がわかるって教わりました。
「…トクベツのお姉ちゃんを観察しよう!」
「ももかちゃん、待って!」
お兄ちゃんが止めるのを聞かないで、ももかはトクベツになったお姉ちゃんを追いかけることにしました。よーくみればきっとトクベツの意味がももかにも分かって、またみんなでおうちに帰れるから。
ももかはトクベツを知らなくちゃならないのです。
…ももかはトクベツにならないとシアワセになれないのです。
ももかは…トクベツになりたい…。
「…トクベツになったお姉ちゃん…ももかにトクベツの好きをオシエテ?」
教えてくれないと…やっぱりももかは…お姉ちゃんをゆるせないようになってしまうから…ちゃんと、ももかにオシエテください。
お姉ちゃんの持っているトクベツの好きをぜーーんぶ!!