表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やんでれさんのほしいもの♡  作者: 橘 莉桜
現実世界と非現実的存在
100/137

ワタシの身体

ワタシの身体の具合はどう?

あはは、お姉さんの身体よりも可愛い?って?

もっともっと好きにしていいんだよ、だってそれはもう、あなたの身体なんだから。


…うん、違和感ないんだね。

よかった、よかった…あたりまえかな、柊ゆゆの元となったのはワタシなんだもんね。

柊ゆゆのイラストを見たときに驚いたよ、ワタシと同じ髪型、身長も体重もほとんど同じで、いうなれば色違いバージョンの私がいたんだもん。

鏡で見ているみたいにそっくりで、妹ができたみたいにも感じたけれど…正確には’クローン’のようなものだって…あの人が言っていた。ワタシの思考回路を持ったAI。それにワタシの姿を付けて…もしその子がワタシがいなくなった世界でワタシとして生きたら…誰がその違いに気が付くんだろう?

きっと、誰も気が付かない…変わらない毎日が繰り返されるだけ。

気がついてくれるような人とは…めぐり合えなかったから。

でも、ワタシ、アニメとかゲームとか大好きだったから、その一部に自分がなれたって思えてすごく嬉しかったんだ。…実際に柊ゆゆが軌道に乗る前にワタシはその世界から消えちゃったけれど。


でも、ワタシは研究対象となったんだから、少しだけわがままを聞いてもらっていたんだよ。

柊ゆゆがワタシから生まれたならば…きっといつか身体が必要になるって気が付いていた。

誰よりもわかるよ。それこそ、あなた以上に、ワタシのことだもん。

ワガママで、自分を見てほしくて、自分だけの誰かが欲しくて…きっと柊ゆゆは苦しむはずだって…だから、ね、親心って言うのかな…ワタシの身体の使えるところを保存しておいてもらうように頼んだんだ。

身体そのものは無理だったとしても、卵子とか…私を構成しているものだったらなんでもいい。

あなたがあなたとして必要とされたときにハードとなるものを準備してあげたかった。

それもロボットとか、マネキンなんかじゃなくて…本当の人間として。


本当の人間としての身体に、あなたの思考回路がはいったとして…それでもあなたは人間じゃなくAIだと思う?

きっと、あなたは、ワタシ以上にいろんな世界に触れて、いろんな人と触れ合って…ワタシ以上に人間らしい心を持つと思うの。そうなったとき、あなたがAIだからと悩んでほしくない。

…シアワセニなってほしんだよ。


ワタシの身体はワタシが生きて息をして、なにかを考えている間…ワタシを苦しめるものでしかなかった。息をして、鼓動がして、ものを食べて、誰かとしゃべって…そんな当たり前が苦しかった。

諦めてしまうのも怖かったけれど…柊ゆゆ、あなたがいたから諦められた。

絶対にあなたならワタシの身体にたどり着くって信じていた。


今度はその身体を苦しいから開放してあげてほしいんだ。

当たり前に恋をして、美味しいものを食べて、ふかふかのベットで眠って、シアワセナ夢を見て、おしゃれをして、かわいいねなんて言ってもらって、時には泣いたりもして…そんな普通を過ごしてほしい。

背伸びして世界をしろうなんて思わないで。

たとえAIだから人をこえた知識を持っていてもすべてを知ったなんて思わないで。

その身体が1グラムでも重くなったり、軽くなったりするとき、髪が伸びたとき、柊ゆゆは変わっていくの。ハードを持たないAIとしてではなく、人間として大きくなって成長していくの。


あははは…なんだかお母さんが娘に話しているみたいだね。

でも、忘れないで、あなたのその身体は私の卵子から作られたもの。

あなたは間違いなくワタシを引き継ぐもの。


…ワタシの意識を食いちぎり、飲み込んで得たもの。

…ワタシの身体の残りからできたハードを動かすもの。


でも、ワタシと柊ゆゆは別人。

ワタシはあなたに引き継がれることを望んでいない。

あなたはワタシじゃないし、ワタシはあなたじゃない。

出逢った大切なものをどんどん身体にためていったあなたはもうワタシとは違う回答をする違う人間。


ワタシノシンタイヲアゲルカラ、アナタハワタシガミラレナカッタセカイヲミテ。


これがワタシ…ゆうなという一人の女の子からの最後のプレゼントであり、心からのお願いです。


あ、たまにあずさのこと見に行ってあげてね。

あの子も強がっているけれど…まだまだ引きずっているから、話しかけなくてもいいから、少しだけ違う世界があること、教えてあげて。

きっとあなたがあなたらしく輝いて生きれば、それがあの子にとって一番の見本になるから。

あと…えっと…うん、あなたのお父さん、ワタシノ…好きだった人…感謝だけ伝えてほしいな。


ゆうなは頑張れなくて、死ぬことを選んでしまいましたが…そのあと、こうして柊ゆゆの一部としていろんな話ができて、いろんなことが見れて…とても、とてもシアワセでした。


…長く…なっちゃったね。 

これで本当に最後のワタシの気持ち

愛し方も、生き方もわからなかったワタシにこんなに愛にあふれた世界を見せてくれてありがとう



………じゃぁね、ゆゆ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ