おじいさんのおはなし 2
8
「もうずいぶんたちましたね。この子がうまれてはじめての冬がくる前ですから。」
お父さんはおじいさんに言った。
おじいさんもにこにこしてぼくを見て、どんぐりコーヒーを一口飲んだ。
「おと…」
あわててぼくは手を口にあててふさいだ。
ここは交番で、お父さんはパンダじゃなかった。
あれ?でも、今、お父さんは『この子』って言ってたよな?
「ぼくはもう学校に通っているんだね。大きくなったね。」
小さいおじいさんは、大きなぼくのかたまで登って、にこにこしながらあたまをなでてくれた。
とても気持ちいいさわり心地だった。
「前の校長先生なんだよ。」
お父さんはぼくに教えてくれた。
「あのとき、ここに引っ越してきてよかったです。さそってくださって、ありがとうございます。」
お父さんはおまわりさんのぼうしをぬいで、大きくおじぎした。
「おかげで、こうして静かにくらしていけますし、この子の成長を近くで見ることもできます。」
今度はお父さんの大きな手でくしゃっとあたまをなでられた。
ぼくは、よくわからなかったけど、おじいさんは、お父さんがパンダって知っているらしいことはなんとなくわかった。
「それはよかった。少し心配だったんです。むりやりこんな仕事をお願いしたので。仲間とはなれて本当はいやだったのではないかと。」
おじいさんのおはなしは、だんだんむずかしくなってきた。
でも、ちょっと知りたい気がして、うちに帰れなかった。