出発
2
朝ごはんを食べ終わると、お父さんは仕事に行くしたくをはじめた。
ぼくはまだがっこうに出かけるには早いから、のんびりご飯を食べているけど、お父さんはうちから山の真ん中くらいにある交番まで行かないといけないから、急いでいた。
「どんぐりや木の実も減ってきて、そろそろみんな冬ごもりの支度が終わるな。あと一週間位で、冬休みだ。そうしたら、お母さんの手伝いもできるからな。」
お父さんは泥の粉をからだじゅうにはたきながら、お母さんに言った。
「お願いしますね。うちもそろそろ寒くなってきたから、支度をしないと。」
お母さんは笑って答えた。
「じゃあ、行ってくるよ。ひょっとしたら、帰りは明日の朝になるかもしれない。」
そう言ってお父さんは出かけていった。
「明日まで、お父さん大丈夫かしら。粉は交番にあったかしら。」
お母さんは山を降りていくお父さんの背中を窓越しに見ながら心配そうにつぶやいた。
ぼくもそろそろがっこうに行かないと。
うちは山の上の奥のあんまりだれも住んでない竹やぶの中にあるから。
「気をつけて、行ってらっしゃい。日が暮れるのも早くなったから、あなたも早く帰って来なさいね。」
お母さんはげんかんまでぼくを見おくりに来てくれた。
「うん、行ってきます。」
ぼくも家をあとにした。