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もうじき冬
「おはよう、お父さん」
朝起きると、いつもお父さんは窓の外をながめている。
ぼくが起きてくるのを待っているようにお母さんは朝ごはんを食卓に並べ始めた。
「今朝は急に寒くなりましたね。もうじき霜柱がおりる頃かしら。」
お母さんは淹れたてのコーヒーをお父さんの席に置き、それを待ってたみたいにお父さんが席についた。
「そうだね。来週には今年の仕事もおわりかな」
お父さんはカップを両手で抱えて、温まるみたいにしながら一口飲んだ。
そろそろ、山では熊が春まで冬眠する季節になるらしい。
その間だけ、お父さんの仕事はお休みになる。
ぼくのお父さんはこの山のおまわりさんです。
でも、この山には他とちがう秘密があるんです。