第六話 ; 「実は私、炎出せます」 「実は俺、銃使えます」
大変久しぶりの投稿です。
申し訳ない!
今後は少しずつペース上げていきます!
「うおりゃあ‼︎ 燃えろぉ‼︎」
狭い空間で、エンマは好き勝手に炎を出して暴れていた。
彼女の能力『紅の女王』によるものである。
エンマの扱う炎は、彼女の感情に大きく影響する。
ちなみにエンマは今、盗賊団を殲滅する為頑張っているが、頑張り過ぎて若干テンションが上がり過ぎている。
その結果。
「ん? って熱い⁉︎ エンマちゃん、燃えてる‼︎ 燃えてるよ‼︎」
「当然だ‼︎ 私は今、こいつらを倒す為に燃えに燃えているからな‼︎」
「違う‼︎ そういう比喩的な意味じゃなくて燃えてんの‼︎ 見て、俺のスーツ、わかる⁉︎」
そう言われてエンマが黒霧の方を見てみると、いつも彼が大事にしている黒のスーツが足元から燃えていた。
「あ、すまない」
「うん、許す‼︎ 許すからこれ早く消して‼︎」
黒霧がお願いすると、足元の炎があっという間に小さくなり、すぐに消滅した。
これも、エンマの能力によるものである。
ここで一度、エンマの『紅の女王』について説明しよう。
まず、自由に炎を出すことができる。
これは、某有名RPGのメラメラしたり、ギラギラする呪文や魔法を想像してもらえるとわかりやすいと思う。
次に、炎を操ることができる。
簡単に例えると、炎を剣や盾のようにできるし、球体にもできれば、壁にもできる。 意思を持った動物のように動かすことも可能なのである。
そして最後に、炎を自由に消すこともできる。
これにより、彼女の前で火事になることはない。
この能力の最も重要な点は、「自分が出した炎以外の全ての炎も対象」 ということであろう。
以上が『紅の女王』の能力の全てである。
エンマの父、今は亡き前魔王は生前この能力についてこう語っている。
「いいかいエンマ、お前の『紅の女王』はとても強力な力だ。 それだけに注意が必要だ。 この能力を扱うためには、誰よりも熱く、そして誰よりも冷静にならなくてはいけないよ」
とても良い教えだが、うっかり黒霧のスーツの裾を焼いて七分丈にしてしまっているあたり、まだまだ能力を使いきれてはいないようだ。
「エンマ、このまま暴れて雑魚をまとめとけ。 俺はその間に時沢さん助けてくる」
「了解だ‼︎ こっちは私に任せておけ‼︎」
急ごしらえの作戦だったが、実際エンマの操る炎で盗賊団は大混乱。
いくら広いとはいえ、四方をコンクリートの壁に囲まれた部屋で炎に追われたのでは、逃げるべきか、戦うべきかの判断もつけれない。
エンマが上手く場を混乱させている隙に、黒霧は時沢が縛られている方へ走った。
「黒霧さん、ありがとうございます‼︎」
「時沢さん、まだお礼を言うには早いですよ」
「その通りだ」
その瞬間、縄を解こうとする黒霧の顔面に向けてナイフが投げられた。
「ッツ‼︎」
反射的にのけぞった黒霧は、直撃こそ裂けたものの頬に浅い切り傷をおった。
黒霧が投げられた方向を見ると、顔面がピアスだらけでさらにハデなメイクをした男、ギャリーが近ずいてきていた。
「よく避けれたな。 一撃で仕留めるつもりだったんだがな」
「なら今度からは無言で攻撃するんだな」
そう言うと黒霧は、スーツのシャツとベルトの間から拳銃を取り出した。
「ほお、コンバットマグナムか。 なにかこだわりでもあんのかい?」
「……俺の尊敬するガンマンがこいつを愛用しているんだよ」
黒霧とギャリーは会話を交わしながら、しかしお互い相手の動きに細心の注意をして距離を保っている。
今、室内はエンマの炎によって温度が上昇しており、二人の額にじんわりと汗の粒が浮かび上がる。
「お前のナイフも中々の良品みたいだが、俺のマグナムにはかなわねぇよ」
「なぜそう言いきれる?」
聞かれた黒霧は、余裕の笑みを浮かべながら答えた。
「有名な言葉がある。 『銃は剣よりも強し』ってな、名言だぜこれは」
それを聞いたギャリーもまた、クックと笑いながら返した。
「確かに一理あるが、残念ながら今回、その名言はあてにならん」
「なに?」
「なぜならお前の銃より、俺のナイフの方が早いからさ」
ギャリーは服の中に隠し持ったナイフを取り出し、狙いを定めるように揺らしながら黒霧の心臓へ向けて切っ先を合わせた。
ほぼ同じタイミングでまた、黒霧も右手に持ったコンバットマグナムの銃口をギャリーの眉間に向けた。
「なら、やってみな」
「やってやるさ」
二人の顔からにじみ出た汗が、互いの顎を伝い滴となって彼等の肌から離れたその時、二人は同時に動きだした。
ギャリーが右脚に力を入れ、黒霧に向かい一気に駆けだす。
瞬間、マグナムの引き鉄が引かれる。
銃口から眉間に向けて弾丸が発射。
と同時に黒霧は振り向きもせず、一切の迷いなく右腕だけを後方へとまわし次弾を発射。
前方に放たれた弾丸が外れる。
黒霧の前方にギャリーはいない。
しかし後方に、穴の開いた左肩から血を流すギャリーがいた。
すかさず、うずくまるギャリーの右太ももへ発砲。
勝負の決着を伝えるように、彼の叫び声が響いた。
「それだけの重傷なら、瞬間移動みたいな頭使う能力は痛みで使えないだろ」
「な、なぜ俺が瞬間移動できると知っていた⁉︎ なぜ俺が背後から攻撃してくるとわかった⁉︎」
痛みに苦しみながら問いかけるギャリーに黒霧は笑いながら答えた。
「情報が入ってたからな。 後は長年の経験と勘だ」
「……ッ‼︎ 畜生、誰だよ俺の情報流しやがったのは。 あの技の為にかなり気を使って能力隠してきたのによ……。 前情報さえなかったら、あんたなんかもうこの世にはいないぜ」
実際、ギャリーの言っていることは正しい。
黒霧は熟練された銃の技術や高度な体術を有しているし、戦闘経験も豊富である。
しかし、ギャリーの瞬間移動による不意打ちを初見で躱すことはおそらくできなかっただろう。
余裕ぶってはいるが、黒霧もまた、ギリギリの勝負だった。
「さっさと殺せ」
ギャリーは諦めたように言い放った。
「え、嫌だけど」
が、返ってきたのは彼の覚悟を粉々にするような、気の抜けた返事だった。
「俺達は、そこで縛られている時沢さんにペット探しの依頼を受けてきただけだから、無駄な殺しはしません」
「だが、さっきは……」
そう。
確かに先程の勝負では、黒霧はギャリーに対して殺気を放っていた。 それに加えて黒霧のマグナムは確実にギャリーの眉間を捉えていた。
「いや、だってあれくらい本気でやらないとお前、背後から一撃で仕留めようなんて思わないだろ?」
「なっ……⁉︎」
黒霧の言う通りだった。
ギャリーは黒霧の仕草や殺気から、生け捕りできるレベルの相手じゃないと判断していた。
だからこそ、初見で確実に仕留めれる技を選んだと思っていた。
しかし、黒霧の話を聞いたギャリーは、全て理解した。
「選ばされたのか、背後からの攻撃を」
かつてない敗北感にギャリーが襲われている間に、黒霧はさっさと時沢さんを助けていた。
「わ、私にはよく状況が飲み込めていませんが、とにかくありがとうございます‼︎ 後は早くケリーを……‼︎」
「大丈夫、任せてください。 一番厄介な奴を倒せたんで、後はどうとでもなります。 向こうはエンマがうまくやってくれてますから」
そう言ってエンマが暴れている方に目を向けた。
するとそこでは、ボロッボロのケルベロスが目を回しながらエンマにぶっ倒されていた。
「…………。 えぇぇぇっ⁉︎ なんでぇ⁉︎」
「ケリィイイィイイ⁉︎」
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【黒霧とギャリーの戦いを観ていたウラクリア】
「ウフフフフ、これはもう私のおかげで勝ったようなものね。 今度来たら恩を売りまくって、エンマちゃんを触り放題、嗅ぎ放題ね‼︎」
「グルルルル……」
「という冗談よ‼︎ ジョーダン‼︎ だから狼化はやめましょう? ね?」
変態とその従者は相変わらずであった。
次回、迷子のケルベロス編完結か?