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プロローグ

王国のモデルはイギリスだったので、悪魔を主人公にして見ました。

だから、他の作品とは違って、ちょっとファンタジーっぽいかもしれません。

個人的には「靴ずれ戦線」みたいな作品も好きなので、これで結構納得してます。

 蝋燭の光のみがぼうっと照らす石造りの室内。

黒いローブを身にまとった一人の少年が、魔法陣を前にしていた。

 その周りには同じ黒いローブを着た大人達が静かに囲み、それを見守っていた。

 少年は淡々と呪文を唱え続け、室内にはその声だけが響く。

「私、グリムはあなたにこの身を捧げましょう。さあ、出でなさい!」

 彼がそう声を張り上げると、次の瞬間、魔法陣が怪しく輝いた。

 そして、そこにはぼやっとした黒いもやの様な塊が現れていた。

「―――君かい? 僕を呼んだのは?」

 もやがそう問うと、少年は恭しくお辞儀する。

「そうです。呼びかけに応えていただき、ありがとうございました」

 すると、その黒いもやは少年の様子に機嫌を良くしたのか、ちょっと得意げにする。

「ふむふむ、殊勝なやつだな。で? 君は僕に何をくれるの?」

「私の魂をすぐにでも捧げましょう。こちらに契約書を」

 そう言って、少年は一枚の羊皮紙を差し出した。

 それには、黒ずんだ血文字で何やら書いてあり、黒いもやはそれを見て、満足したな声を上げる。

「いいだろういいだろう。では、お前の魂を貰って行くぞ!」

 そう言うと、もやからにゅっと黒い触手が伸びる。

 それは少年の胸の辺りをまさぐると、白く光る塊を取り出していた。

 取り出された少年が力なくばたりと倒れるも、黒いもやはその白い塊を自らの中へと取り込んでしまっていた。

「はっはっはっ! では、お前達の望みを聞いてやろう」

 そう言うと、今までそれを見ていた大人のうちの一人の男が、一歩前に出る。

「私達の望みはただ一つです」

「ふふん。何でも言いたまえ、この僕がちゃちゃっと殺しちゃうから」

 すると、男は咳払いして一言願う。

「―――では、この戦争に勝たしていただきたい」

「は?」

 しかし、悪魔と名乗った黒いもやは、間抜けに訊き返していた。

「え? 今なんて・・・・・・?」

 すると、男は難しい顔をして話しだす。

「悪魔であるあなた様も、ご存じでありましょう? 今、我々王国は、共和国、公国などと共に北の大帝国と戦争をしております」

「ま、まあ、そのぐらいは知ってるけど・・・・・・」

「そして、我々王国は技術的に遅れ、兵力も足らず、苦戦を強いられている状況です。ですから、その戦争に勝たしていただきたいのです」

 すると、悪魔は慌てたように声を張り上げていた。

「ち、ちょっと待って待って! 僕、悪魔だよ? 悪魔って言うのは、人を呪って苦しめたり殺したりするのが仕事で、その、戦争に勝つって言うのは・・・・・・」

「出来ないと申しますか?」

「・・・・・・うん。特定の人を殺せって言うのは何とかなるけど、あんまり大人数は無理だよ。それに、僕って、その、実はそんなに高位の悪魔じゃないし・・・・・・」

「しかし、あなた様はすでに少年の魂を持って行かれました。すでに契約はなされているはずです」

「あ、あぅ・・・・・・。まあ、そ、そうなんだけど。その、僕の力じゃ無理って言うか。あの、望みを変えてもらえないかな? 僕の専門は機械の故障とか事故だし。特定の人間なら、呪いとは分からない様に殺せるよ」

「それは困ります。この少年が望んでいた事は、戦争に勝つ事です。あなた様がそれに応えられないと言うのなら、彼は何のために魂を捧げたのですかっ?」

「うぅ・・・・・・。さ、先に望みを聞かなかった事は謝るよ・・・・・・。けど、僕には無理なんだよ。もっと簡単な望みにしてくれなきゃ」

「それは出来ません。我々は戦争に勝つための力が必要なのです」

 そう言うと、男はおもむろに手に持っていた杖を目の前へと突き立てる。

「あなた様が戦争を勝つように出来ないと言うのなら、彼は無駄に命を失った事になってします。―――彼一人が生きていれば、何人かの帝国兵は殺せたかもしれないと言うのに」

 男がそう言うと、突然、周りの大人達がなにやら呪文を唱え始めていた。

 すると、地面に書かれていた魔法陣が再び輝きだし、悪魔は辺りを見回す。

「な、なんだっ?」

「ふふふっ。それならば、仕方ありません。あなたにその彼の代わりをやってもらうとしましょう」

 そして、少しずつ大きくなる呪文の声と、そう言ってにやりと笑った男の姿を見て、悪魔は戦慄した。

「なっ? ちょっと待て! か、彼の代わりって、どう言う意味だよッ?」

「そのままの意味でございますっ!」

 言うが早いか、辺りの呪文の声が高まり、やがて最高潮になっていた。

すると、途端に地面の魔法陣から眩い光が溢れだす。

「くっ! まさかっ!」

 悪魔は慌てて姿を消そうとする。

しかし、即座に契約書から鎖の様なものが現れ、すぐさま悪魔をぐるぐるに拘束していた。

「ちっ、契約かッ!」

 悪魔は必死にもがいて抜けだそうとするが、男はそんな悪魔へと手を差し伸べていた。

「ようこそ! 私達の戦場へ!」

 そして、男がそう言うと共に、室内は眩い光に飲み込まれる。

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