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EP1

世界についての説明とこれからのこと


「まず、ここはイ―リス大陸の東ある精霊の森なのは説明した・・・」


「あぁ・・・そこまでは頭に入ってるよ。というより気になってんだけど・・・君って一体何者なんだ?」


俺はずっと気になっていた。

だって、俺より遥かに背が小さいのに翼出したりしたらそりゃあ気になるものだ。

少女は、一度自分の翼を見てから、再び俺を見る。


「私は精霊・・・・風の中級精霊のエルファシア。みんなからはエルって愛称で呼ばれる・・・」


「エルファシアか・・・・俺もエルって呼んでいいかな?」


俺の提案にエルファシアは軽くうなずく。

どうやら良いらしい。


「じゃあエル。この世界について教えてくれないか?」


「構わないけど・・・・私も質問したい・・・」


とエルがどうやら俺に聞きたい事があるみたいだ。


「あぁ、構わないさ。こっちばかり聞くのも良くないしな。」


「じゃあ聞く・・・・・・あなたは何者?」


瞬間、周りの空気が一変した。

風は先ほどまでの穏やかな風ではなく、突き刺さるような冷たい風となり、俺の体に当たる。


彼女の眼は俺を測るかのような視線が伝わってきた。


(嘘は言えないな・・・)


俺はそう思い、本当の事を口にした。


「俺も・・・・よく分からないんだ。目を覚ましたら此処にいたから、何者っていわれたら、ただの人間としか言えないな。」


「・・・・・嘘・・・」


彼女は信じられないといった表情で俺を見る。


「ウソっていわれてもな。俺としちゃそれが事実であるからな。」


エルは俺に近づくとまじまじと俺を目を見つめる。

彼女の黄金色の瞳に見つめられ、俺は顔が熱くなるのを感じた。


「うん・・・・・嘘は言ってない・・・」


そう言うとエルは、ゆっくりと俺から離れ、何か考えるように眼を細める。


「そんなに俺が珍しいのか?」


気になって俺は彼女に問いかける。


「だって・・・・この精霊の森に初めて入ってきた人間だから・・・・・」


「え?!そうなのか。」


俺の言葉にエルはゆっくりと頷いた。


「この森は特殊な結界が張ってあるから、普通の人間が気づくことはないし、精霊以外でこの森にいるのはあなただけ・・・」


「じゃあ、君が此処に来たのは・・・・」


「精霊とは違う気配を感じたから・・・・」


そうエルから言われ、俺は苦笑した。

エルが気絶しても俺の近くにいたのは、俺という存在がこの森にいたからであって、決して俺が気になったわけではないようだ。


ちょっとショックだったりする・・・・


「まぁ、しょうがないよな。俺みたいな人間がいたら・・・・びっくりしても。」


ちょっと自嘲気味につぶやく俺。

それを見たエルは、ゆっくり俺に近づき


撫で撫で


と頭を撫でてきた。


「ありがとう・・・」


俺がお礼を言っても、エルはしばらく俺の頭を撫でてくれた。

その感触はまるで母が自分の子を撫でるかのように、優しく、温かいものだった。








その後、エルは俺にこの世界について教え始めた。

この世界の名はゼクスリアというらしい。何故そう呼ばれようになったかはエルは知らないと言った。気づけばみんながそう呼ぶようになったという。

次にわかったのは、このゼクスリアは精霊によって創られたらしい。

この世界における精霊は万物を司り、世界を創造したとされ、人々から崇められている。

精霊には大きく分けて地水火風の4属性が存在し、そこから更に光、闇、氷、雷、時を加えた9属性に分けられる。

またパワーバランスが有り、大きい順から四属性なら火>風>地>水となり、9属性だと時>光=闇>火>風=雷>地>水=氷となっている。

精霊には4階級のタイプ分けがされており、地位が高い順に精霊王、上級、中級、小級に分けられる。

精霊王は文字通り、精霊の中の王であり、各属性の精霊を見守る存在

上級精霊は、各属性の中で力が大きく、それぞれが独自の目的をもって行動する事が出来る存在。

中級精霊は、上級に比べて力が劣るが、自分の意思と姿を持っている存在。

最後の小級精霊は、通称微精霊と呼ばれており、数は最も多いが力は微々たるもので、さらに自我を持たない。姿は陽炎のように光る球体らしい。

基本的に、大気に充満するマナと呼ばれる世界を構成するエネルギーを蓄えて、微精霊なら百年、中級なら一万年、上級なら一億年経てば、次の階級に進むとされている。

だが、精霊王に関して、前の王が上級精霊の中から選られなければなれないらしい。

また、精霊の属性によって色があるらしく、火なら赤、風なら緑といった色があるようだ。


次はゼクスリアに住む生き物についてだ。

ゼクスリアには、俺の様な人間の他に、様々な種類が存在するそうだ。

よくファンタジーで出てくる長寿で長い耳が特徴のエルフ

魔界と呼ばれる世界に住み、人に災悪を齎すとされる魔族

人とともに生き、生涯を見守るとされている妖精

幻の存在と云われるドラゴン種

などが存在するようだ。

この他にも、猫人や狼人といった者も存在するらしい。


最後はゼクスリアの大陸についてだ

現在俺がいるのは、東にあるイ―リス大陸の東の果てにある精霊の森の中。


大陸は大きく分けて東西南北の4大陸に分けられる。

まず北にあるのは、四大陸の中で最も大きい陸地を誇るバラン大陸

東にあるのが、現在俺がいるイーリス大陸

西には、多くの山々に連なって出来たアスカ大陸

最後の南は、一年中雪や氷河に覆われているパスメイ大陸となっている。


また、エルによれば先ほど紹介した地水火風の4属性の精霊も、東西南北によって北が火、西が水、東が風、南が地といった精霊による偏りがあるらしい。

東でたとえるなら、東には風の精霊が集まりやすいと言えば解っていただけるだろうか。

何故偏るのかは俺自身わからないが、エルによれば、おそらく精霊王が関わるからだろうという発言があったので、俺はそう思うことにした。


以上が、俺がエルから聞いた、この世界についての詳細だ。








「頭・・・・痛ぇ・・・」


とはいえ、俺からしたら、覚える量が多すぎた。

もともと俺は、頭がそんなに良いわけではない。

例えるなら、天才と馬鹿の中間といったところだ。

しかも量も量で、いきなり何千ページという世界史の教科書を渡されて「次に日までに全て覚えて来い」と言われて、覚えられるわけがない。

せいぜい最初の章の2~3ページが限度だ。


俺の理解力とは、その程度のものなのだ。


「大丈夫?」


「あぁ・・・・なんとかな」


エルが心配そうに聞いてきたので、俺は平気そうな表情をつくって答える。

その時、俺自身なんで平気な表情をつくったのか自分でも不思議だった。









「じゃあ・・・次は・・・・あなたについて・・・・・教えて。」


説明を聞いた後、エルが今度は俺自身について問いかけてきた。


「わかった。」


それに対して、俺はゆっくりと頷いた。

元々、こちらの質問に対し、エルはしっかりと答えてくれた。

なら、エルの質問に答えるのが当たり前だ。

俺は一旦、大きく深呼吸して語りだす。


「俺の名前は、中川なかがわ かい。年齢は17で、ゼクスリアとは違う地球という星で育った人間だ。」


俺の言葉にエルは驚愕の目で俺を見る。


「驚くのも無理もないかもしれないけど、これが事実なんだ。それを証明できるものがないから、嘘と思えるかもしれないけど・・・・・」


そこで俺は一旦言葉を切った。

これから言おうとしているのは、多分俺の今後に関わる事だから。

言葉を切ったのは、彼女に少し心の整理をさせてあげたかったから。


もう一度、俺は深く深呼吸して、彼女に向き合う。


「・・・・エル・・」


静かに彼女の名を呼ぶ。

名前を呼ばれた彼女は未だに、驚いた表情のままだ。

それを見た俺は、ゆっくりと頭を下げて


「俺の話、信じてくれないかな?」


ゆっくりと右手を前に出した。








少し長い時間が立った気がした。

実際は一分も経ってなかったのだが、俺にはその時間が10分にも20分にも感じていた。


(もし、彼女が俺の話を信じてくれ無かったら・・・・・)


そんな予感が頭をよぎった。

もしそうなれば、俺は名も知らない土地に放り出されることだろう。

そして、結果は見るまでも無く、死しかなかった。

俺の中で暗い考えが出始めたときだった。





ぎゅうっ


「!!!」


俺の右手を暖かい何かが包み込んだ。


「さっきも言った・・・・・あなたは嘘を言ってないって・・・だから私は・・・・あなたを・・・カイを信じる。」


エルの言葉に俺は、感謝しながらゆっくりと顔を上げる。

そこにいたのは、先ほどまでの彼女の姿はなく、俺に優しさを込めた微笑みをくれる彼女の姿があった。


「ありがとう・・・・」


嬉しさが押し寄せる中、俺はなんとか感謝の言葉を述べた。









「さて、これからどうしようか?」


エルの信頼を得た俺は、これからの方針を考えることにした。


「とりあえず、ここから近い街に向かうのがベストなんだろうけど・・・・・。エル、近い町でどれくらい掛かるんだ?」


今の俺に必要なのは、この世界の情報と知識だ。

エルからゼクスリアについての知識は得たが、それは全てとして考えれば、まだ初歩の領域だ。


「一番近いのは、ナスカっていう町だけど・・・・ここからだと、歩いたら・・・・・多分4日ぐらいかかるよ・・・」


エルからそう聞き、俺は苦笑いした。

歩いてゆけば4日でつけるのならさほど問題ないように思えるが、俺が苦笑いした理由は別の問題だ。


確かに歩くなら問題はない。


「でも、此処は地球の様な場所じゃないから道中も危険がないとは言えないよな。」


「うん・・・魔物とかもでるから。もし出会ったら・・・・・今のカイじゃ、まず勝てない。」


「だろうな。」


俺も最もだと思った。

もし、魔物に出あえば、忽ち食われて終わりだ。

武道をやっていたとはいえ、それはあくまで護身程度で、達人レベルには程遠い物なのだ。

更に言えば、今の俺は丸腰状態なのがさらに拍車をかける。


「いい方法がある・・・」


悩んでいた俺に、突如エルがそう言いだした。


「精霊王に会ってみたら・・・・・どうかな?」


「精霊王って、この世界を創ったとされる存在だろ。そう簡単に会えるのか?」


「会える・・・・・だって此処は、精霊の森だから。」


(どういう理屈だよ・・・・)


心の中で俺はそう思った。

だが、エルの提案は、俺にとってはありがたい事だった。

世界を創ったとされる存在に聞けば、俺が何故このゼクスリアに来たのかの理由が分かるかもしれないからだ。


「此処は、マナが集まりやすい場所だから・・・・・・精霊王達もそういった場所にいる事が多いの・・・・」


「達ってことは、精霊王は一人じゃないのか?」


「うん・・・・・4属性については説明したよね?」


俺はゆっくりと頷く。


「その4属性にはそれぞれの精霊王がいる・・・・・此処にいるのは風の精霊王のウィンリルラ様。」


「つまり、ウィンリルラ様に聞けば、これからの事について、何かわかるかもしれないってわけか・・・」


「そういうこと・・・・」


そう言うとエルは後ろに向いて、翼を広げ飛びあがる。


「ついてきて・・・」


そう言うや否や、エルは森の中に入って行った。


「俺は、行くとも言ってないんだがな・・・」


俺は苦笑しながらも、エルの後を追って森の中に入って行った。




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