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出会いの章 第一部 謎の少女

ここから新しい章に入ります。章ごとにキーワードが決まっていますが、今回のキーワードは『出会い』です。どんな登場人物が出てくるか…必見です。

《インベリス郊外・ロゼリアーヌ邸》



インベリス郊外のとある静かな森の中…そこに広大な敷地を持つ豪華で巨大な屋敷があった。その屋敷の二階にあるバルコニーのテーブルで、男女二人が何やら紅茶とクッキーでティータイムを興じながら会話をしていた。


「今度、マキシの近くにあるアラカイトのゲリラのアジトに派遣されるそうですね姉さん?」

金髪の美しい顔立ちをした少年が、テーブルの向かいに座る黒髪の女性にそう話かけた。

「そうだよカエサル。…全く、テロリストなんぞの討伐に何故このわたしが狩りだされなくてはならんのだ?」

女性は、不満そうに紅茶をすすりながらそう愚痴をこぼした。

「ハハハ、まあまあ…これもお父様直直のご命令なんですから仕方ないですよ」

「だからこそ気にくわんのだよ。あやつは自分自身では全く動かないくせに人使いだけは荒いときた。…もっとも、わたしが今ここにいるのはそんな奴の性格のおかげなんだがな」

「そうですよ。前向きに考えましょう前向きに!」

「…やれやれ、わたしにはお前ら人間の考えることはどうも理解できないよ」

黒髪の女性はため息をつくと、カップに残っていた紅茶を飲み干すのであった…。


「ロ、ロゼリアーヌ様ぁっ!」

その時、屋敷の中からバルコニーにメイド服を着た小さな妖精が飛んで来た。身長は30cmくらい、青い長髪と緑色の瞳で、ちょっと高価なお人形のような感じにも見えるような容姿をしていた。

「なんだ…騒がしいぞサジ。こっちは来客中だ」

ロゼリアーヌはそう言った。

「も、申し訳ありません…でも…守秘回線で緊急のお電話が…」

「守秘回線だと?…誰からだ?」

「ヴォルガノン様からでございますロゼリアーヌ様」

それを聞いたロゼリアーヌは眉を寄せてこう言った。

「…わかった、すぐに行く。カエサルに紅茶のおかわりを持って来てやれサジ」

「は、はい。かしこまりました…」

そう言うと女性は席から立ち上がり、バルコニーから屋敷の中へと消えていった。サジも、それについて行くように屋敷の中へと紅茶を取りに行くのであった…。

「やれやれ…なんだかんだ言って、姉さんも結構人使い荒いんだから」

カエサルは独り苦笑いしながら呟いた。




  《マキシの町》



「ほぇ〜、ここがマキシの町かぁ!ぼくの村やバイーアの村とはだいぶ雰囲気が違うなぁ」


バイーアの村を出てから2日目のお昼…イチはバイーアから東に行ったところにあるマキシの町に来ていた。

「うわぁ…人がいっぱいいて賑やかな所だなぁ!お店もたくさん並んでいるし…なんだか楽しそうだな!」

イチが今歩いているのはマキシの町のメインストリートだ。道の両脇には様々な店舗が立ち並び、多くの人々が行き交っていた。人々は買い物をしたり、立ち話をしたりして各々楽しんでいた。

「待てぇっ!この(アマ)!」

イチがそんな町のメインストリートをのんびり歩いている時だった、後方から男の怒鳴り声が聞こえてきた。

「なんだろう…?」

イチが声のした方を見てみると、こちらに向かって走ってくる少女の姿が目に入った。歳はイチと同じ十代後半で、美しいブロンドの髪と茶色の瞳をしていた。そして、その少女の後ろから二人の兵隊風の男達が追いかけてきていた。

「ええい!道を開けるんだ!」

逃げる少女とそれを追いかける男達はいよいよイチが立っているすぐ近くにまで迫ってきていた。人々が驚いて道を空ける中、イチはその様子をジッと観察していた。…その時だった、


ドサッ!


「きゃあっ!」

イチが見守るすぐ目の前で少女が転んだ。少女はすぐに立ち上がろうとしたが転んだ拍子に足を捻ったのだろうか、上手く立ち上がれないようだった。そこへすかさず男達が駆け寄り、少女を取り囲んだ。

「へっへっ、軍の倉庫に勝手に入った上に番兵をぶん殴るたぁいい度胸だな譲ちゃん。だがもう遊びは終わりだ!」

男の一人がそう言って拳を大きく振り上げた!

「待ってよ!」

見かねたイチが男達に歩み寄りそう叫んだ。彼女としては、やはり少女を放ってはおけなかったようだ。もっとも、彼女がこの騒動の一部始終を観察していたのも少女に救いの手をさしのべようとしたのも、彼女が育った村にはこんな騒動もそれを助けるヒーローもいなかったために、彼女がそれに興味を持ち憧れていただけなのかも知れなかったが…。

「なんだお前はっ?」

男達はイチの方をギロリと睨みつけた。

「それはこっちの台詞だよ!大の大人が二人がかりで女の子一人に暴力振るうなんて卑怯だよ!」

イチは屈強な男達にも怯むどころか、怒ってくってかかった。

「なんだと〜!生意気な小娘め!まずはお前からだっ!」

男達はいきりたってイチに真正面から飛びかかってきた!そして一人がイチに向かって思いっきり拳を振り下ろした!…しかし、ヒョイッとイチはその攻撃をいとも簡単にかわしてしまった。そしてそのまま相手の腕の隙間を潜り抜け下顎にアッパーを一撃くらわした!

「ガッ…」

アッパーをくらった男はバランスを崩してそのまま倒れてしまった。

「なっ…」

イチは素早く身をひるがえすと、今度は驚くもう一人の顔面に裏拳を叩き込んだ!

「オブッ…」

裏拳を叩き込まれた男は顔面から大量の血液を流しながら気を失ってしまい、そのまま地面に仰向けに倒れこんだ。

「ふぅ…ずうたいばかりでたいしたことなかったなぁ」

イチは相手の鼻血で汚れた左手を服の裾で拭いながらそう呟いた。…が、次の瞬間に今まで静かだった観衆から拍手喝采が巻き起った。

「え、あ、いやぁ…そんなに喜ばれても」

イチは照れながらも、一応民衆に手を降って応えてみた。

「…ちょっと、アンタ私のこと忘れてない?」

イチが民衆に手を降っていると、足元から声がした。

「え?あ、ごめんなさい、大丈夫ですか?」

「えぇ、私は大丈夫だけど…まさか本当に忘れてたのね…」

男達に追われていた女性は少し呆れたようにそうイチに言った。

「すいません、何せ忙しかったから…」

イチはそう弁明には程遠い弁明をした。

「いいよ別に。それより早くここを離れましょう?騒ぎを聞き付けた他の兵隊が来ると厄介だから」

ブロンドの少女はそう言った。

「えっ、でもこの人達はどうするの?」

イチが倒れている二人の男達を指差した。

「そんなの放っておきなさいよ!てゆーか、そもそもアンタがボコしたんでしょーが!」

「あ、確かに」

「とにかく何処か目立たない所に行かないと…悪いけどちょっと肩貸してくれる?転んだ時に捻っちゃったみたいで…」

「う、うん!わ、わかったよ。と、とりあえず裏路地にでも…」

イチにはいまいち状況が飲み込めなかったが、とにかく彼女は少女の言う通りにすることにした。…と、ゆうわけでイチは少女に肩を貸しながら、そそくさとメインストリートから遠ざかって行った…。



 《イチ&リリア》


「ここをこう巻いて…っと、はいおしまい!」

メインストリートでの騒動の後、イチと少女は裏路地に身を潜めていた。裏路地に積まれた木箱に腰掛け、イチは持っていた包帯で少女の捻挫した右足首にテーピングをしてあげていた。

「ありがとう。えっと…名前は?」

少女がそうイチに聞いてきた。

「ぼくはイチ!君は?」

「私はリリア、よろしくね!イチはこの町の人なの?」

「ううん、ぼくは西の端の方からこの町に来たんだよ」

「へぇ、旅人なんだ!」

「リリアは?えっと…なんでさっき兵隊さんに追われてたの?」

イチがそう聞くと、リリアは少し間を置いてからこう答えた。

「職業柄、他国の軍隊とは対立することも多くてね。…イチは旅の目的とかあるの?」

リリアはどうやら話の話題を自分のことからそらしたかったようだったが…イチはそれに気付くこともなく、素直にリリアの質問に答えた。

「特には無いかな?昔から世界の色々なことを見るのが夢なんだ」

イチが無邪気に答えた。

「ふふふ、アナタなかなか変わった人ね?メインストリートで兵隊をボコボコにしてたから、もっと武闘家みたいに堅い人かと思ってたけど全然違うんだもん」

リリアが笑いながらそうイチに言った。

「そ、そうかな?確かに運動神経はいいってよく言われてたけど。別に喧嘩が好きなわけじゃないよ」

「わかってるよ。だってアナタそんなに野蛮そうじゃないもの。…ちなみに何歳なの?」

リリアが興味津々にそうイチに聞いた。

「17歳くらいかなぁ?」

イチはそう答えた。

「なんだ、私とあんまり変わらない歳なんだ。てっきりもっと歳下かと思ってたよ」

「それって、ぼくがチビでペッタンってこと?」

「ま、ぶっちゃけそうゆうことになるわね」

リリアが笑いながらサラリとそう言った。

「むむ…これでも牛乳は毎日欠かさず飲んでるのになぁ」

イチが少しばかり不服そうに言った。

「アハハ、ごめんごめん!…それより…イチは剣には自信はあるの?」

リリアはイチの腰にあった剣を指差しながらそう言った。

「え?あぁ、これね。旅に出る時に幼なじみがくれたんだ。本当は護身用なんだけど…こないだバイーア村で魔物を倒した時にはこれのおかげで助かっちゃったよ」

「…バイーア村の!?それってこないだの村長が魔物だったてやつ?」

「えっ、知ってるの?」

イチが少し驚いたように聞いた。

「え、えぇまぁね。…そうか…この娘が例の…どうりで強いわけだ…」

…リリアはそう呟いた。

「え?何か言った?」

イチが聞いた。

「えっ、あ、あぁ、何でもないよ。こっちの話だからさ」

リリアはそう答えた。

「…そうだ!アナタ私達のアジト…じゃなかった、キャンプに来ない?」

リリアが何かを閃いたかのような表情でそうイチに言い出した。

「キャンプ?」

「そ!実は私達は武器商人の一座でさ、近くに仲間のキャラバンが来てるんだ。助けてくれたお礼もしたいし…来てくれるよね?」

リリアがそう笑顔でイチに言った。

「うーん…特に行くあても無いし、いいよ。ぜひ行かせてもらうよ!」

イチはそう答えた。

「決まりね!私達のキャンプはここから北にあってそんなに遠くはないんだけど、今から行ったら夜になっちゃうから今日はこの町に泊まっていきましょ?…もちろん、宿泊代は私が払うからね」

「え?いいの?やった!ありがとう!」

「うふふ、大げさなんだから。さて、もうほとぼりも冷めた頃だし…行こっか?」

「うん!」

こうして、二人は宿を探すために再び町中へと繰り出して行きました…。


「うふふ…単純な娘。これなら仲間に引き入れるのも楽勝ね…」

裏路地から出る際にリリアがそう呟いた…。




  《悪夢の前兆》


その後、イチとリリアの二人は特にいざこざに巻き込まれることもなく、無事に宿を見つけることができた。イチはそこで久々にシャワーを浴び、暖かく美味しい食事にありつくことができた。イチとリリアは世間話や他愛もない話に花を咲かせたあと、朝早い明日のために早々にベッドに入ったのであった。…しかし、何故かイチは寝付けない。

「…なんだろう…眠れないや」

イチが横に目をやると、リリアは既にスヤスヤと寝息を立てて眠りに付いていた。イチが眠れずにいたのは、別に彼女が何かを悩んでいたからでもなければ不眠症だからでもなかった。…ただ、この時イチは何か不吉な胸騒ぎを覚えていた。イチはベッドから起き上がると窓の所まで歩いて行った。…窓の外には相変わらず静かな夜の世界が広がっているだけだ。

「なんだろう…何だか物凄く嫌な感じがする…」

イチは自分の胸に手を当てながらそう呟いた。


…北の空がなんだかいつもより明るく見えた…。

こんにちは、塚原宏樹です。

今回の物語を読んで様々な疑問が生まれたことだろうと思います。段々と複雑になっていきますが、わかりやすくするように努力します。

それでは、次話でまたお会いしましょう。

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