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出会いの章 第六部 動き始めた歯車

今回はこれからの物語の導入部分とゆうことでやや短く抽象的な話となっておりますが、重要な表現もたくさんあると思いますのでぜひ最後までお読みいただければ幸いでございます。相変わらず更新のスピードは遅いですが、なにとぞノスタルジアが完結するまではご辛抱くださいませ。

「…全て正常値。特に問題は無いようだな」

口髭を生やした軍服の男がそう言う。

「当たり前だ、わたしを誰だと思っている?」

腕や頭に様々な計測用の機器をつけ、診療台の上に寝ているロゼリアーヌがそう答えた。

ここはナタリア帝国の首都インベリス郊外にあるコロッサル直轄の研究所。主に生物を扱った研究がされている。表向きは新たな遺伝子治療などの開発をする国家機関だが…実は裏では秘密裏に違法な人体実験や合成獣(キメラ)の作成、生物兵器の研究などが行われているのである。今は月に一度行われるロゼリアーヌの健康診断の最中である。

「いつもは嫌がる検査の日だとゆうのに今日は妙に機嫌が良いなアゲハ。何か良い事でもあったのか?」

「いや、最近ちょっと面白い玩具を見つけてね…こないだもそいつがやらかしてくれたんでね。それよりも、まずはクーデターの成功と政権を掌中に収めたことおめでとう」

そう、先日コロッサルが起こしたクーデターにより国王は殺され新たな軍事政権が誕生していたのだ。無論、軍部相手に誰も批判をすることはなかった。

「ふふ、人間から主導権を得ることなど造作もないこと。明日からはこの俺がこの(ナタリア)の最高指導者だ。…お前の玩具、イチとか言ってたな、2日前のマートレーの脱走の件か…ヴォルガノンも追っ手を出している頃だが」

「だろうね、奴とどこまで対等できるか…見物だとは思わないかコロッサル?」

「そんなことに興味は無いさ。それよりも、一緒にいたアラカイトの姫がどう行動するのか…気になるところだ」

「…また仕事か?」

「ふふ、まぁ近くな。…いいか、何のために俺がお前を創ってやったのか…それを忘れるなよアゲハ」

「はいはい、覚えておきますよお父様…なんて」

ロゼリアーヌはそう少し皮肉を込めて言うのであった…。



《アラカイト南側国境付近》


「う〜、なんだかだいぶ寒くなってきたよぅ」

バギーの後部座席でイチが手の平に息を吹きかけながらそう言う。彼女の白金色の髪を枯草色の平原の乾いた冷たい風が撫でていく。

「マートレーからもうだいぶ北へと進んできたからなー…で、アラカイトまではあとどれ位なんだよリリア?」

助手席のエンドラーズが、隣の運転席でバギーを運転するリリアにそう尋ねる。

「もう少しよ。この平原を越えたらアラカイトの領土だから…幸い、この辺りはナタリア帝国の支配もまだ曖昧だから比較的安全なの」

リリアがハンドルを動かしながらそう答えた。

三人がマートレーの砦を脱走してから3日が経とうとしていた。脱走の際に運良く見つけたバギーに乗った三人は北方の大国、アラカイトを目指して一面の枯草が広がる寂しい荒野を北へと走っていた。

「…にしてもなぁ、まさかリリアがアラカイトのお姫様だったなんてな。初めて聞いた時には驚いたぜ正直。なんでもっと早く教えてくれなかったんだよ?」

「ごめんね、隠すつもりはなかったんだけど…色々あって話しそびれちゃったのよ」

「でもさ、リリアって全然お姫様って雰囲気じゃないよね。ぼくのイメージだともっと可憐と言うかなんと言うか…」

「ふふ、そうね。でも私みたいに親の言うこと無視してテロ活動するようなお姫様も中にはいるのよイチ」

リリアが苦笑いしながらそう言う。

「親って…要は国王とその妃だろ?大丈夫なんかい一国のお姫様が勝手に国外にテロ活動なんかに行っちゃって」

「そうね…お父様はお怒りになるでしょうね当然。でもね、死んだ母さんが言ってたの。人のために生きなさいって…これはこれで母さんの、つまりは私の意志を実行しただけ。後悔はしない」

「…そっか、お気楽魔法使いと違って姫君ってのは大変なんだな」

エンドラーズが今にも雪が降り出しそうな薄明るい曇り空を見上げながら言った。

「…そう言えばさ、昨日からラジオが変な事言ってるけど…どうゆうこと??」

イチが話題を変えるようにそう質問する。どうやら、鈍感な彼女とて暗い空気を察する能力くらいはあるようだ。

「それな、なんだかナタリア帝国でクーデターが起きたらしいぜ?ホントかどうかは知らんが」

エンドラーズがカーラジオのチャンネルをいじってみる。…が、もうだいぶ町から離れてしまっていて電波が入らないようだ。雑音だけが虚しく響く。

「…きっと大変なことが起こるよ。私にもまだわからないけど、(アラカイトに着いたら詳しく説明できると思う」

リリアが厳しい表情でそう言う。

「泉の精霊さんも同じようなこと言ってた、何か嫌な予感がするって。あと…この世界の住民ではない『誰か』が魔物を操っている…みたいなことも」

イチが泉の精霊の言葉を思い出しながらそう口にする。

「もしかしたら、俺達は何かとんでもない事に巻き込まれかけているのかも…いや、既にその環の中に入ってしまっているのかも知れないな…」

エンドラーズが神妙な面持ちで言う。


…いつしか、空から小さな粉雪が静かに降り始めていた。乾いた風が粉雪を躍らせる幻想的な荒野の中をバギーはただ黙々と北の大地に向けて進んでいくのであった…。

《この世界の環境条件》


この世界には大きな大陸が一つ存在するだけで、他の島などはほとんどありません。陸地は全体の30%ほどで、海と陸が完全に二分化した極端な世界だと考えても差し支えないと思います。赤道付近〜中緯度付近には豊かな森が広がっていて安定した気候が保たれています。四季はあまりハッキリとはしておらず、植物や動物の種類は土地の違いによって異なることが多いようです。中緯度〜高緯度には草原や荒野が広がり、極地には僅かですが氷河が存在しています。比較的安定した生物にとっては暮らしやすい環境がこの時代には広がっていたのです。

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