プロローグ―旅立ちの時―
はじめまして、塚原宏樹です。今回は記念すべき「ジャスティス」の一回目の物語です。二作目とゆうことで、今までの反省も含めて頑張って執筆しましたので最後までお読み頂けると幸いです。
…それでは、「ジャスティス」をどうぞお楽しみください。
…ある時代、あるところに青い空と緑の大地に覆われたとても美しい世界があり、はるか昔からそこは人間と神や精霊などの様々な存在が共存するそれはそれは平和な世界でありました。しかし、いつの頃からでしょうか?人間は自らの力に溺れ、自らをこの世界の支配者だと奢り始めてしまったのです。やがて時代は強大なナタリア帝国が支配する時代になり、人間の記憶からは神や精霊の存在はほとんど消え失せてしまっていました。そしてその頃から、世界の各地で魔物が出現するようになり人々の生活に暗い影を落とすようになったのです。まさかこの時、別世界からの侵略を受けようとしていることなど誰も知らなかったのです。この時既に世界滅亡へのカウントダウンは始まっていたことを…。
…これは、そんな世界の端に生を受けた一人の少女とその仲間達の正義と勇気と希望と友情の物語であります…。
《旅立ちの時》
…ここは大陸の西の端の小さな農村。夜明け前、まだ空の暗い中で一つの家にだけ灯りがともっていた。そして、その家の中では一人の少女が何やら忙しそうにあちこち動き回っていた。
「あれー、おっかしいな…ぼくの目覚まし時計どこにやったけなぁ?」
自分のことをぼくと呼ぶその少女は、どうやら自分の目覚まし時計を探しているらしい。
「あっ!あったあった!よかったー!…これがないと朝起きられないんだよね」
少女は目的の目覚まし時計を見つけると、それを手にとって満面の笑みで喜んだ。
「もうすぐ夜が明けるかな?いよいよこの時が…長年の夢を叶える時が来たんだね…」
少女は薄明かりの差し込む小さな窓に目をやりながら独り言った。
少女の長年の夢…それはこの小さな農村から出て、広い世界に旅に出ることだった。小さな農村で育った好奇心旺盛な少女は、いつしか大きな世界に夢をはせるようになっていたのだ。
「さて、そろそろ行かないと…村長さんに見つかったら大変なことになるからね。時計も見つけたし…さっさと荷造りしないと!」
少女はそう言うと再び荷造りを始めた。
そう、この小さな農村では彼女のような若い労働力はとても貴重な存在なのだ。だから彼女がこの村を出たいと村長やその他の村人に言った時も、誰も賛成してくれなかった。
…ただ一人を除いては。
「…どっこらしょ…ふぅ…重い…ちょっと荷物を詰め過ぎたかな…?」
少女は風呂敷に包んだ荷物を片手に、玄関から外へと出た。
…地平線は既に薄明かるくなり始めていた。
「よし!いよいよ旅立ちの時だ。誰かに見られちゃう前にさっさと行こう!」
少女は村の出入口に向かってその歩みを進めた…が、ちょっと歩いたところで一瞬、何故かピタリとその足を止めた。
「お別れの挨拶は…ううん、やっぱりやめよう…彼には心配かけたくないしね…」
…少女はさっきより少し速いペースで再び歩き始めた。
少女はたくさんの畑を横切り、そしていくつかの美しい小川を渡り、まだ灯りのついていない家々の前を通り過ぎた。
当分の間見ることのないであろう自分の育った場所のありふれた景色を、少女はただ黙々と進んで行った。
やがて、少女が村の出入口に差し掛かった時だった、
「…待てよイチ!」
何者かが少女の背後から彼女を呼び止めた。
「バル!なんで…」
少女は少し驚いたように振り向いた。
「なんでじゃねぇよ。…お前、やっぱり村を出ていっちまうのかよ?」
少年が聞いた。
「…そうだよ」
イチが少しうつ向き加減に言った。
「どうしてだよイチ?一体この村の何が、何処に不満があるんだよ!?」
バルが少し強めの口調でイチに言った。
「え?別に不満なんて…そんなもんないよ?むしろ、ぼくはこの村が本当に大好きだよ。村の人達はみんな親切だし、幼なじみのバルもいるし…何より、この村はぼくの古里だからね」
イチは、まるで子供のような無垢な表情でバルに言った。…もちろん、その言葉に偽りなどなかった。
「それじゃあ…なんでなんだよ…どうしてこの村をでる必要があるんだよ…!?」
バルが拳を固く握り締めながらイチに言った。
「特に理由はないよ。ただ、ぼくが外の世界を見てみたくなったから…それだけだよ」
イチが言った。
「なんだよその理由…昔っから好奇心旺盛で純粋無垢なヤツだとは思っていたが…まさか村を出たいなんて言い出すとは夢にも思わなかったぜ…」
バルはかなり呆れた様子でため息混じりにそう言った。
「ふふふ…バルこそ、相変わらずの心配症だね。…わざわざこんな朝早くの時間にぼくの見送りに来てくれるなんて」
イチが微笑みながらバルに言った。
「なっ…そ、それは…お前が昨日自分で言ってから…」
バルは少し照れくさそうだ。
「でもバルは昨日は力づくでも止めてやるって言ってたよね?」
「ふん!関係ねーよ。どうせ止めても聞かないだろうし、俺にお前の行動を抑制する権利はないからな」
バルは腕組みしながら照れくさそうに言った。
「その通りだよ、流石は幼なじみだね!だけどバルには本当に感謝してるよ…ぼくが旅に出るって言い出した時、賛成してくれたのはバルだけだったから…ありがとうバル…ぼく…バルと一緒にいれてホントによかったよ」
イチが少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら言った。
「な、なんだよ急に…そんなに気にすんなよ!俺達幼なじみじゃねぇか!困った時はお互い様だ。…と、ゆうわけでだ、コレは俺からのせんべつだ…持ってけよ」
そう言うとバルは一本の剣をイチに手渡した。
「…これは?」
「銅の剣さ。村の小さな鍛冶職人からじゃあこんなもんしか渡せないが、木の棒よりかは役に立つと思うぜ?…最近は魔物も増えて物騒だからな。武器ぐらいは持って行けよな」
バルが言った。
「わぁ!ありがとうバル!…それじゃあ…ぼくからも…」
イチはそう言うと、バルのすぐ目の前まで来た。
「な、なんだよイチ…」
「目瞑ってよバル」
「は?」
「…いいから!」
バルはイチに言われた通りに目を瞑った。
…チュッ!
バルの頬にイチの唇が当たった。
「なっ…なななっ!?」
顔を真っ赤にしたバルがびっくりしてイチの方を見た。
「…それじゃあねっ!」
イチはその一言を言い残すと、バルに背を向けて走り出した。…やがて村の出口を通り過ぎ…そして…やがてバルの視界から消えていった…。
「…ったく…本当に行っちまったな…今度はいつ会えるのだろうか…?もしかしたら…もう二度と…いや、きっとまた会えるさ…必ずな…」
…バルはイチが走り去って行った方向をいつまでも眺めていました。彼女の無事を祈りながら…そして、あのキスの意味を考えながら…。
《旅の始まり》
…地平線から太陽が顔を出す頃、イチは村から少し離れた丘の上にいた。
「朝かぁ…今頃は村中大変なことになってるんだろうなぁー…」
イチは振り返って村をの方を見てみた。改めて丘の上から見てみると、自分の村が所詮は辺りの景色の一部に過ぎない小さなものだとゆうことがよくわかったようにイチには思えた…。
「…さてと…とりあえずは何処に行こうかな?やっぱり最終的にはナタリア帝国の首都なんかに行きたいなぁー…でも行き方わからないし…ま、適当に歩いてればそのうちつくよね」
イチは再び村に背を向け、ひたすら小道を進んで行った。…彼女が振り返ることは二度となかった。
…こうして、好奇心旺盛で気まぐれな少女の旅は始まったのです。まさか、後に彼女がこの世界の救世主になることなど一体誰が予想出来たと言うのでしょうか?
―イチ―…それは千年先までその名を残すことになる少女の名前…。
プロローグとゆうことでほんの触りの部分でしたがいかがでしたか?
感想や評価、お待ちしております。
…さて、お気付きの方もいらっしゃると思いますが、この物語は作者のもう一つの作品「ノスタルジア」とリンクしております。今後、両方の作品を愛読して頂ければ作者としても幸いですので、ぜひ「ノスタルジア」の方も読んでみてくださいね。
…それでは、次回にまたお会いしましょう。