一人事
「私ね、好きな人できたんだけど」
一人だけの空間に自身の声が響き渡り、つい目を細める。
ハア、と吐く息が夜の空気との温度差で白くにごっていた。
違う、これじゃダメだ。
「気になる人ができた」
これも、違う。
「恋に落ちちゃった」
ダメだ。こんなんじゃ、ダメ。
もっと、そう。直球に。
「好き」
ギュと目を瞑り、下を俯く。
周りには誰もいないはずなのに、バクバクと心臓が煩く鳴るのに眉を顰めた。
「・・・板釘くんのことが好き」
よし、コレだ。
目を瞑ったままその場で深呼吸をする。
さあ、これで練習は終わり。いざ、告白を―。
そして、目を開けたそこには望んで止まなかった板釘くんがいました。
「――な、っ!?」
声にならない叫びが喉からかすれて出てくる。
いつも頭の中に思い描いていた彼が今、目の前にいる。そして、きっと彼は―。
「な・・・って、此処俺んちの前なんだけど」
そう言って困ったように板釘くんは表札を指差した。
そこにはローマ字でITAKUGI、と。まあ、知ってる。今からチャイム押して告白しようとしてたくらいだし。
「聞いた?」
わずかに声が震えるのは緊張のせいだろうか。
なんにしろ、もう私には戻る道はない。
「・・・。」
沈黙は肯定。
気まずそうにそっぽを向く板釘くんの姿をジイと見つめて、深くため息を吐き出した。
そしてそっと口を開く。
「板釘くん。私ね、」
独り言なんかじゃ終わらせない。
私、板釘くんのことが―。
END
始めまして、パラと申します。この作品はパラとしての処女作でした。
本当に短い文でしたが、この一作にたくさんの思いを込めて書いてみました。
これからも、たくさんの活動をしていけるよう。もっと文章力がつくよう。
それでは、数多くある小説の中、「一人事」を読んでくださりありがとうございました!
全くの初心者ですが、これからもどうぞ生暖かい目で見守ってやってください!