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ジリ君とおっさん(1)未来編
恋をした。
「ねえ、おっさん」
恋をした。
あのこを一目見たときから。
僕はあのこに恋してる。
だから。
「ジリのこと、<処分>してくれないかな?」
これ以上、求めてしまう前に。
「ならば」
なのに。
「【部品】を残せ」
おっさん。
あんたはなんて残酷なんだろう。
「……おっさん、相変わらずお馬鹿だね」
おっさん。
さすがだよ。
手段選ばず、形振り構わず。
最低で、最高だ。
「分かったよ、ヴェルヴァイド」
僕の大事な<主>には。
僕の大好きな<姉様>には。
吐き気がするほど自己中で。
笑っちゃうほどお馬鹿のあんたが、僕の<主>には必要だ。
「母様の【誓約】に僕は従う」
この血は永遠に。
<白金の魔王>のもの。
「お前はりこの『ジリギエ』だ」
ワタシ ノ タマシイ ハ アノヒト ト
デモ カアサマ ハ アナタ ノ ソバニ ズット イル
「……おっさん。僕の名前、覚えてたんだ」
恋をした。
怒りんぼうで、泣き虫な。
可愛いあのこに恋してる。
僕はあのこに恋してる。
あのこが逝くときは、僕も一緒についていこう。