セレスティスとランズゲルグ
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バイロイトが死んだという事実を。
もう二度と目覚めぬその体と共に持ち帰った僕は。
無言の陛下を頭に乗せて、城内を歩いていた。
「……」
「いいかい、陛下。黒の竜帝陛下の前では堂々としてるんだよ? あの爺さんの前で弱ってるとこ晒したら、痛い目みるからね?」
「………」
「大丈夫、君にはこの僕がいるんだから」
「…………」
小さな指が、僕の髪をぎゅっと掴んだ。
まぁ、うん。
この情けないところが、この子の可愛いとこっていうか。
人型のカッコンツェルと同じ顔のクセに、中身は正反対で……これがいわゆるギャップ萌え?ってやつかなぁ~。
さて、と。陛下の執務部屋に寄ってから、伝鏡の間で黒の竜帝陛下に導師の使った人形について報告と確認を……あっ、忘れてた!
「……婿殿、あれを持っていってくれたかな?」
当初の予定では。
<監視者>とそのつがいの異界人と共にカイユ達が青の大陸を出るのは、春になったらということだった。
「赤の竜帝陛下とエルゲリスト殿に、お土産とプレゼント買ってあったのにな」
「……」
僕の髪に顔を伏せてるこのオチビさんと、女にだらしない白いおっさんのせいで予定が狂ってしまった。
「婿殿は一緒に買いに行ったからあるのは知ってても、僕の部屋に置いといたから持っていってないよね……僕、部屋に鍵はしてないけど、あの婿殿は育ちがいいから無断で入るなんてしないもの」
腐り物じゃないし。
通商部に預けて、赤の大陸への次の貨物便発送時に一緒に……なんて考えていると。
「……落ち着いたら、お前が持っていってやれ。大陸間飛行の許可出してやる」
陛下が小さな声で、そう言った。
「陛下……ありがとう」
今の僕に腕があったなら、君を抱きしめ。
今の僕に手があったなら、君を撫でただろう。
良かった。
無くて、良かった。
だって。
君は僕の、青の竜騎士セレスティスの<主>。
君は、<青の竜帝>なのだから。
「落ち着くには、導師との戦に勝たなきゃね。さぁ、出陣だよ我が<主>」