セレスティスとダルフェ
*HP拍手小話に、ほんの少し加筆したものです。
「どうしようかな」
僕は迷っていた。
「今なら、できちゃうんだけど」
<色持ち>の彼を殺すかどうかを。
「短命な君の愛は、カイユにとって……」
突然、僕等の前に現れた『彼』は。
真っ赤髪をしていた。
赤い髪。
それは<赤の竜帝>が持つべきもの。
でも、この『彼』が赤の竜帝陛下じゃないのは一目瞭然だった。
当代赤の竜帝は、雌だ。
女帝なのだから。
辛うじて生きてるような状態なのに。
彼の視線は、鮮やかな緑の瞳は。
玉座に座る陛下を庇うように立つ、僕の娘から離れなかった。
僕の娘の空色の瞳と彼の緑の瞳が。
視線を合わせて繋がり、混じり解け合っていた。
ーーこの2人は、つがいになるっ……!?
そう感じた僕は、指先の震えるを隠すために手を強く握った。
「……」
父親として。
僕はどうすべきか。
「完治したら、僕じゃコイツを殺せない……殺すなら、さっさとしないと駄目なんだよね」
幸いにも。
僕にはその力が有る。
「……………」
溶液に満たされた水槽に沈む、燃え立つような赤い髪の。
赤の大陸から来た、<色持ち>の雄。
先代陛下からもらった刀を、僕はゆっくりと鞘から抜いた。
<色持ち>の髪のような、真っ赤な溶液の中で身体を癒す姿は見えないけれど。
「どうしようか、な……」
彼の眼は、きっと僕を“視ている”……。