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あかい いと
運命の人。
いつか出会う、最愛の誰か。
それは糸でつながっているのだと、貴女は言った。
互いの小指をつなぐのは、目に見えぬ赤い糸。
赤?
目に見えぬと言ったのに、なぜ赤だとわかるのだ。
糸?
そんなものでは易く切れ、使い物にならん気がする。
「…………」
頭部から自分の髪を引き抜いた。
眠る貴女のその細い小指に、色の無いそれを糸に見立てて結んでみる。
「……む?」
色の無いそれは。
確かに少々心許無く思えた。
なるほど。
ゆえに、『赤』か。
「こうすればよい」
親指の先の肉を食い千切り、嚥下した。
そこへ髪を沿わして、染め上げた。
赤く染まった、白い髪。
赤に変わった、白い糸。
「………」
我が染めた、我だけの。
「……ん、ハクちゃ……」
我の赤い糸。
「んんっ……おはよ…」
貴女を。
「あ。……ずっと、手を繋いでいてくれたの?」
縛りたい。
「ああ、そうだ」
結ぶそれがただの糸では、我は安心などできぬ。
結ばれるのが小指だけでは、我には足りぬ。
我の全てで。
貴女を雁字搦めに、縛りたい。
身体も、心も。
魂も。
「おはよう、我のりこ」
だから今日も。
我は微笑む。