ハクの過去・それって趣味?
*これはHPの拍手小話から移動したものです。
「わっ!? これってナマコ!?」
ダルフェが食堂から運んできた昼食を見たりこが、声を上げた。
食卓に置かれた木製のトレーにのっているのは、“本日のお勧め定食”なのだ。
「姫さん、ナマコ食える人?」
「はい! 父が好きだったので、家でも良く食べていました」
りこはトレー右端の小鉢を覗き込み、香りを嗅いだ。
「このナマコ酢、にんにくと刻んだ玉ねぎも入ってる。……ハクちゃん?」
その我は小鉢を手に取り、中を見た。
ふむ、この海鼠は……。
「これはこの大陸の西海地方産のものか? この小さな突起……種は千木海鼠か」
「産地と種類まで分かるの? すごいね、ハクちゃん」
「へぇ~、旦那がナマコに詳しいなんて意外っすねぇ」
「海鼠図鑑に参考調理例として載っていた」
小鉢をトレーに戻しながら言った我に、りこが問うた。
「海鼠の図鑑? ここの本棚に、そんなマニアックな本あったかな?」
「りこが見たいならば、赤の大陸に取りに行って来るが。“あれ”は死んだが、竜宮にはいろいろ残っているはずだからな」
「赤の……竜宮? あっちで海鼠が名産の国って……げっ!? まさか……旦那っ! ちょちょちょっと待ってください!」
急に顔色を変えたダルフェに、我はあることを思い出した。
「………む?」
それはメリルーシェで、ランズゲルグが我に言ったこと。
女。
比較。
乳。
「大丈夫だ。我はあれの乳などより、りこの乳のほうが好きだ」
「なっ!?」
「げっ!?」
む?
ちと、顔色が……りことダルフェはどうしのであろう?
「ヴェルヴァイド様、これをお使いください」
カイユが我に差し出したのは、鋳物の鍋だった。
その鍋は、我の反省部屋コレクションの一つ。
つまり。
我は『反省部屋行き』な失態をおかしたのだな?
「…………りこ。では、また後でな」
我は竜体となり、自らその鍋の蓋を開けて入った。
*某所のちょこっとオトナ版番外編~Diabolus~ネタの小話です。
(追記:現在『ちょこっとオトナ版』はWEB上にはございません)