ハクとりこ
*これはHPの拍手小話から移動したものです。
「どうしたの?」
ソファーに座って本を読んでいたら、ハクちゃんが帰って来た。
竜帝さんに呼ばれて彼の執務室に行き、30分程私の側から離れていた。
「……りこ」
「ハクちゃん?」
私へと歩み寄りながら、その身に纏う黒の長衣の腰に巻いた銀色の帯を白い指で解いた。
「りこ」
「これ、持てばいいの?」
「……」
ハクちゃんが無言で頷くと、彼の真珠色の髪が広い肩から流れる。
艶のある絹の帯の先を私に握らせ、ハクちゃんは私の足元に座った。
「ハクちゃん、こっちに……」
ソファーに座ればと言おうとして、止めた。
彼が私に握らせた帯の端を、その首に巻いたから。
「りこ」
黄金の瞳が、私を映す。
整いすぎて現実味の無い冷たい美貌に、表情が生まれる。
それは。
満足気な……。
「……お帰り、ハクちゃん」
私は本を置き、膝に寄りかかった彼の真珠色の髪を撫でた。
ゆっくり、ゆっくり。
この気持ちが、彼に伝わるように……深く、深く染込むように。
「大好きよ、ハク」
「りこ……」
閉じられた目蓋にキスをして、2人を繋ぐ銀の布を自分の手首に巻きつけた。
「私ね、貴方が」
貴方が望んでくれるなら。
私を、この私を。
離さないで。
離れないで。
「貴方が、大好き」
貴方が許してくれるなら。
私から、放れないで。
こんな私だけど。
放さないで。
ずっと、側に……。