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ガルデウッドとランズゲルグ

*この小話はHP拍手お礼から移動しました。

「毛先のカットだけでいいのぉ? ねぇ陛下~、サイドに変化入れてみない?」

「入れない。毛先だけでいい」


 久しぶりに<青の竜帝>陛下が、あたしの店に来てくれた。

 父親譲りの美貌には、隠し切れない疲労の色……あたしの前ではいつだって凛としていた陛下らしくないその様子に、心配と不安を感じてしまう。


「あらぁ~、残念……相変わらず細いわね~。ちゃんとご飯食べてるの? またお菓子ばっかり食べてるんじゃないの?」


 勝手知ったるなんとやら……おちびちゃんの頃からうちで髪を整えてる<青の竜帝>は、自分で棚からケープを取り出し身につけて、鏡の前に座った。


「城の食堂で、3食きちんと食べている。菓子は昔ほど食べていないし、意識して肉を摂るようにしている」

「それにしちゃ、顔色が悪……」

「ガルデウッド」


 硬い声音が、あたしの言葉を遮った。





「セレスティスが死んだ」





「……………そう。チーズタルトがあるの。カットが終わったら、お茶にしましょう」

「……ガルデウッド」


 あたしは青い宝石を溶かして作られたような、長く美しい髪を手に取り口付けた。

 この青い髪に触れられることが、あたしにとって最高の栄誉で幸せ。

 生きてて良かったって、思う。

 もっと生きていたいって、思える。 


「大丈夫。あたしのお迎えは、まだ先よ。ひ孫の顔を見るまでは、絶対に死んだりしないわ。おかまの生命力をなめないでちょうだい!」

「……ああ、そうだよな。真冬に乳首透けてるレカサ着てるガルデウッドじゃ、黄泉に行っても追い返されそうだ。…………頼むから、まだ逝かないでくれよ……*****」


 小さな小さな声だけど。

 青い髪を梳かすあたしには聞こえてる、伝わってる。


 ---お祖父ちゃん。


 伏せた目から、一粒こぼれた煌めきに気づかないふりをして。

 あたしは鋏を動かした。 




*これは『僕が、君のティアラ』の後日小話になります。カッコンツェルのつがいは、ガルデウッドの娘です。(カッコンツェル=ランズゲルグの父親)

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