ダルフェ・赤の竜騎士時代編~1~
「ダッ君、ダッ君! お帰りなさい!」
夜盗狩りの仕事を終え自室の戸を開けると、親父が居た。
「……」
3日ぶりに会った親父は。
「ダッ君、怪我しなかった!? 一人でお仕事にいったって聞いて、パパはもう心配で心配で! 陛下は……ママは心配ないって言ってたけど、でもパパはっ、パパはねっ、心配で……ダッ君が心配で心配で、大好きなプリンも咽喉を通らなかったんだ!!」
ハンカチを握り締め、ぶるぶる震えながら言った。
「……してない」
人間の夜盗共が相手だ、怪我なんかするはずがない。
<赤の竜帝>の治める帝都周辺を徹底的に『掃除』してきたから、思っていたより時間がかかってしまった。
「お腹空いてるでしょ!? パパが特製ビックオムライスを作ってあげるよ!」
親父は涙がぼたぼたと落ちる目を、ひよこ柄のハンカチでごしごしとこすり。
「ちょっと待っててね、ダッ君! 急いで作って、すぐに持ってくるからね!」
俺の部屋から城の厨房へと、黄色い自転車に乗って向かった。
誰も居ない廊下を、チリンチリンとベルを鳴らしながら……。
寝静まった深夜の城に、間抜けな音が響く。
「ったく、人の部屋にチャリを入れんなって何度言えば分かるんだか」
きっと、あとで<赤の竜帝>に呼び出しをくらって“お仕置き”されるんだろう。
「………夜中の2時に、巨大オムライス」
親父特製ビックオムライス。
卵を60個使うそれは異常なでかさのオムライスで、中のトマト味チキンライスの量も半端無い。
「ま、いいけどな」
胃もたれとは無縁な丈夫な息子で良かったな、父さん。
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