12/38
熱
「知っているか?」
分かっていて、言った。
知っているのに、訊いた。
「我が触れると、りこの身体は熱を増す」
指先を、鎖骨に滑らせ。
舌先を、耳朶に這わせると。
「我のこの身は、人のような温もりはない」
愛しい人の血はその温度を上げ。
柔らかな肉が朱に染まり、震える。
「だが。我はこうして、りこを温めることができる」
できうるならば。
我の熱を。
貴女に与え。
望んでくれるなら。
我の熱で。
貴女を溶かし。
「我は、それが嬉しい」
最後の一滴まで。
「りこ」
貴女を、我に。
*ブログからの転載です。