ある一家の日常風景
<ご注意!>あほあほな小話なので、このようなネタがお嫌いな方は回れ右でお願いいたします。苦情はご容赦くださいませ。
夕食後、居間でお茶を飲んでいたら。
「りこは裸えぷろんが好きなのだ」
なんの前ふりも無く飛び出たハクちゃんの言葉に。
その場が凍った。
「へ?」
「は?」
「ねね、ぎゅい?(ねね、なにそれ?)」
「!?」
ダルフェさん、カイユさん、ジリ君。
そしてお茶菓子を持って来てくれた女神様。
皆の視線が一斉に私へと集まった。
「ハ……ハクちゃ……な・なに言っ!?」
私はそんなマニアック(?)なこと、したことな~いっ!
いろんな意味で無理っ!!
美しい竜帝さんなら許されても、こんな私じゃ石投げられちゃうし!!
いやいや、そうじゃなくてですねっ!
うっ、しっかりするのよ、りこ!
ここで取り乱したら怪しまれるかもしれないっ!
「私、その、えっと、ちがっ!」
私の脳内混乱などお構いなしに。
冷酷系魔王顔にくっついている色素の薄い唇が、この空気を一切無視してさらに続けた。
「りこ。りこは我の裸えぷろん姿が好きなのだろう?」
「え?」
我のって……私じゃなくて、ハクちゃんのことっ~~!?
「……ぶごぉうっ!!」
両手で口を覆った女神様から変な音がした。
私の時じゃなく、ここでこの反応。
さすがハクちゃんが大好きな竜帝さんです!
この反応……人型を想像したんですね、女神様
「……ヴェルヴァイド様。そのような言葉、どこで知りました?」
むせる女神様の背中をやさしくさすりながら、カイユさんが訊いた。
穏やか過ぎる口調とは逆に、そのお顔は……それを見たジリ君は、座っていたダルフェさんの頭から飛び立ち、ソファーの下へと隠れた。
女神様はカイユさんに差し出されたタオルで口を押さえながら、足早に執務室へと帰っていった。
「だ、旦那! ちょい待っ……!!」
「昨夜読んだダルフェの本に載っておったのだ。我がりこのお手伝いをする時の状態を世間では裸エプロンと称し、珍重するのであろう?」
それを聞いたカイユさんの口角が、ひくひくと小刻みに動いた。
「前回同様、それも間違った解釈です。トリィ様、『用事』ができましたので私達はこれで失礼いたします」
「かか! ギギュイィ!!」
ソファーの下からジリ君がささっと這い出し、小さな手で器用にすばやく窓を開けた。
「ハニー、ごめっ……ぐげごぉっ!?」
同時に鈍い低音が響き、全開の窓から何かが高速で庭へと飛んでいった。
「はて? りこ、我は間違っておったのか?」
「……その本、ためにならないからもう読むのやめようね」
私はハクちゃんから『男なら果て無き浪漫を求めよ。さぁ立ち上がれ冒険者達!入門編』を強制的に取り上げた。