第1話 深夜2時の踏切
月夜異聞〜月夜の書庫シリーズ〜へようこそ。
月夜の書庫に眠る、少し不思議で少し怖い物語をお届けします。
それでは、今夜も一冊の禁書をお楽しみください。
月夜にだけ現れる秘密の書庫。今夜もまた、一人の来訪者が扉を開く。
「ようこそ、月夜の書庫へ」
月明かりの差し込む書架の奥で、黒いスーツにサングラスをかけた男は、携えた本を静かに閉じた。
「月夜の司書、望月と申します」
彼は微笑み、数えきれないほどの本が並んでいる書架から、古びた一冊を手に取る。
「今夜語るのは、決して開いてはならない禁書の一冊」
《深夜2時の踏切》
時刻は深夜二時。私の自宅近くには、不気味な雰囲気を漂わせる踏切があった。
こんな時間には当然終電も終わり、警報機は鳴るはずがないのに……
毎晩決まって、この時間になると警報機が鳴り出す。
カン……
カン……
カン……
最近の私は、残業に追われる日々を過ごしているうちに、何か刺激が欲しかったのだろう。
普段は近づかない踏切に、好奇心から近づいてみた。すると、遮断機の向こうに立つ、白い服の女に気がついた。
女はずっと、こちらを見ている。ただただ、こちらを見ている——
女の冷たい視線に悪寒が走った瞬間、目の前の線路を黒い巨大な影が、ものすごい速さで走り去っていった…
ふと嫌な予感がして辺りを見渡すと、私の周囲には、大勢の人影が立っていた…
「な……なんだこれは……!」
恐怖からか、体から力が抜けていくのを感じる。私は、一歩も動けずにいる——
トン……トン……
トン…………
周りから、何者かが近づいてくる音が絶えず聞こえてくる。周りに立つ人影は、私の方を向いている。
「あなたも、こちらにおいで……」
低く冷たい声が、耳元から聞こえてくる——
この声は、あの白い服を着た女に違いない……振り向いてはいけない。見てはいけない……逃げなければ……
《これは、とある男が最後まで語ることのなかった物語。深夜2時には、この世のものではない何かが、今でも生者を求めて待っている。》
望月は静かに本を閉じ、元あった棚へ戻した。
「深夜二時の踏切——これもまた、月夜の書庫に眠る一冊。」
月夜にだけ現れる秘密の書庫。そこに眠るのは、誰かの夢、誰かの人生、そして誰にも語られなかった物語。
「また、次の月夜にお会いしましょう。」
月夜の書庫の扉は、音もなく静かに閉じられる。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
月夜異聞は、一話完結でお楽しみいただけるホラー短編集です。
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それでは、また次の月夜にて。




