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元奴隷から愛される異世界生活。  作者: ChaCha


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目覚めた冒険者と、二人旅

朝の光が、木々の間を縫って落ちてくる。

夜の森とは別物みたいに、音が多い。

鳥の声、葉擦れ、遠くの水音。


私は、外套を直しながら、地面に座る“おっさん”を見下ろしていた。


……生きてる。

ちゃんと。


「信じられないでしょ? ありえる?」


半ば呆然、半ば笑い話みたいな声でそう言うと、

おっさん――いや、もう“おっさん”って呼ぶの失礼かな――が、肩をすくめた。


「よくここまで頑張ったな」


あっさりした一言。

慰めでも、同情でもない。

事実をそのまま置いただけの声。


それが、妙に胸に残った。


「……それで?」


「それで、ここにぶっ倒れてた俺を見捨てなかった、と」


「……一回、全力で見捨てようとはしました」


「だろうな」


笑う。

軽い。

この状況で、軽い。


「俺はレオ。

 しがないソロ冒険者だ」


おっさん――レオは、そう名乗った。


それから、なぜか。

本当に、なぜか。


めちゃくちゃ仲良くなった。


理由は分からない。

多分、どっちも“死にかけ”だったから。


あれから数日。

森を抜けるまでの間、

私は思い切って事情をぶっちゃけた。


追放のこと。

狙われているかもしれないこと。

行き先が、ルクス王国であること。


黙って聞いていたレオは、

最後に、うんうんと頷いた。


「なるほどな。

 じゃあ、正面から行かずに回ろう」


「……回る?」


「違う国を経由する。

 急がば回れ、だ」


……即決。


「護衛、ついでに引き受ける。

 俺も、ギルドに顔出すまで時間が欲しいしな」


どうしてそんなに軽いのか。

不安がないのか。


「……理由、聞いていい?」


「おう」


レオは、少しだけ表情を曇らせた。


「護衛依頼を受けてな。

 荷の中身が禁制品だって分かって、抜けようとした」


あっさりした口調。

内容は、全然あっさりしてない。


「そしたら口封じ。

 まあ、殺られた」


「……殺られた」


「死にかけた、が正確か」


私が、真顔で言う。


「……成仏してください」


「生きてる生きてる」


即ツッコミ。


……テンポがいい。

この人。


レオとしても、

ギルドへの報告は必要。

でも、命を刈り取られる寸前だった以上、

追っ手がいる可能性は否定できない。


つまり。


私たち、

似たような立場。


「渡りに船、だな」


レオが、そう言った。


「……ほんとに」


ボッチ街道、即終了。


行き先を地図で確認する。


「ルクス王国か……

 また、遠い国に行くな」


指が、地図の一部をなぞる。


「しかもここ。

 数年前に戦争が終わった地域を抜けるしかない」


隣国ディバン帝国。

アグナス王国へ戦争を仕掛け、

アグナス王国は滅び、

今は、取り込まれてわちゃわちゃしている。


……要するに。


「危ないってこと、ですよね」


「そう。

 でも避けると、魔物溢れる山脈地帯」


二択。


どっちも、地獄。


ため息が、同時に出た。


「……人生、ハードモード過ぎない?」


「今さらだろ」


即答。


昼。

簡単な休憩。


マジックバッグから、

干した果実を取り出す。


「これ、好き」


「なに?」


「これ。

 はい、食べてみて」


差し出すと、

レオは素直に受け取った。


「おー。

 さんきゅ」


もぐもぐ。


「……うまいな、これ」


「でしょ」


何気ない会話。

他愛ないやり取り。


それだけなのに、

胸の奥が、少しだけ軽くなる。


ボッチは――

一先ず、卒業。


危険は減ってない。

状況も、好転してない。


それでも。


隣に、

話せる人がいる。


それだけで、

こんなにも違うんだ、と。


私は、干した果実をもう一つ口に放り込みながら、

静かに思った。


……二人旅。

悪くない、かも。



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