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元奴隷から愛される異世界生活。  作者: ChaCha


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詰んだ

最初は、ただ必死だった。


自分ができることを、全部やる。

それだけを考えて、メイは動いていた。


ルイのため。

レオのため。


――そのはずだった。


だが、気づけば。

彼女の手から生まれたものは、アグナスの“皆”を支えていた。


魔具を作る。

ポーションを詰める。

魔術陣の補正を書き換える。


休む暇はない。

考える余裕もない。


「材料を補充!」


声が、戦場に響く。


「揃えてます!」

「次、いけます!」

「搬送、間に合います!」


返事が、即座に返ってくる。

誰も迷わない。

誰も疑わない。


――彼女の指示が、戦場を動かしている。


それが、どれほど異常なことか。

メイ自身は、まだ理解していなかった。


前線。


レオが、敵陣を裂いていた。

剣を振るうたび、血と肉が舞う。

疲労など感じさせない動き。


「……終わらせるぞ」


その声は、低く、冷たい。


ルイは、さらに奥へ踏み込んでいた。

魔術陣が重なり合い、空間そのものが歪む。


人が、消える。

蒸発する。

存在が、削り取られていく。


嗤っていた。

はっきりと。


――これは、復讐だ。

――これは、裁きだ。


そして、その力の源がどこにあるかを、

ルイは誰よりも理解していた。


後方。


メイは、血の匂いと焦げた空気の中で、

次の魔具を完成させる。


手が震える。

胃が、重くなる。


(……私、今……)


生命を奪う側に、立っている。


頭では分かっている。

分かっているのに、止まれない。


止まったら、

誰かが死ぬ。


だから。


「次、前線へ!」

「回復、優先!」

「無理しないで、生きて戻って!」


必死だった。

必死で、戦いながら、戦争を支えていた。


そして。


――開戦、たった数日。


信じられない光景が、広がっていた。


敵は、崩れている。

数で勝るはずのディバン軍が、押されている。


「……これ、いけるんじゃないか?」


誰かが、そう呟いた。


その言葉は、瞬く間に広がる。


勝てる。

生き残れる。

終わらせられる。


希望が、確信に近いものへ変わっていく。


その瞬間。


――背後。


空気が、裂けた。


音はなかった。

気配も、ほとんどなかった。


“奇襲隊”。


最初から、メイを狙っていた者たち。


一閃。


冷たい衝撃が、胸を貫く。


理解が、追いつかない。


視界が、白く弾けた。


(……あ)


心臓。


――貫かれた。


力が抜ける。

足元が崩れる。


血が、熱い。


「メイ!!!!!」


レオの叫びが、戦場を引き裂いた。


声が、遠い。


次の瞬間。


ルイの中で、何かが――完全に、壊れた。


視界が、赤に染まる。

呼吸が、消える。


「……触るな」


声は、低く、静かだった。


だが。


次の瞬間、

ディバン側が――蒸発した。


魔術陣でもない。

詠唱でもない。


存在そのものが、消えた。


地面が割れ、

空気が焼け、

音が、遅れて追いつく。


暴走。


いや。


――解放。


ルイの魔力が、限界を越えて溢れ出す。


「返せ」


誰に向けた言葉かも、分からない。


敵が、

地形が、

戦場が。


次々と、消えていく。


レオが、必死に叫ぶ。


「ルイ!!止まれ!!」


届かない。


メイの身体が、地面に倒れる。


視界が、暗くなっていく。


音が、遠のく。


(……ああ)


(詰んだ)


それが、最後の思考だった。



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