表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元奴隷から愛される異世界生活。  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/165

眠るご主人様を思って

……眠っている。


湯を浴びたあと、

彼女はほとんど言葉を残さず、ベッドに沈んだ。


髪は、まだ少し湿っている。

石鹸の匂い。

あの、甘い香り。


余程、疲れていたのだろう。

呼吸はすぐに整い、

静かな寝息が、部屋を満たした。


俺は、しばらく動けなかった。


――抱き締めた瞬間。


胸の奥が、ひくりと跳ねた。


温かい。

軽い。

確かに、ここにいる。


同時に。

失う恐怖が、遅れて襲ってくる。


もし、今。

目を覚まさなかったら。


もし、

この温度が消えたら。


指先が、震えた。


俺も、相当に緊張していたのだと知る。


親しげに。

当然のように。


――俺の女神を、腕に抱く男。


息が、詰まる。


それは、ほんの一瞬の光景だったはずなのに。

視界に焼き付いて、離れない。


吐息が、漏れた。


……欲しい。


俺が。

この腕で。


俺だけが。

彼女を、抱くべきなのに。


思考が、熱に溶ける。


理性は、言葉を失い。

感情だけが、残る。


渇望すればするほど。

甘さと、恐怖が混じる。


与えられること。

必要とされること。


それが、どれほど恐ろしいか。

同時に、どれほど救いになるか。


――愛。


彼女は、与える。

惜しみなく。

無自覚に。


あの唇で、

「好き」と言って。


あの瞳で、

俺を見る。


撫でる手。

声。

香り。


すべてが、

俺を肯定する。


布を、握る。

きつく。


逃げ場を失くすみたいに。


指に、力が入る。


身体が、熱い。

呼吸が、乱れる。


……震える身体。


布が白く染まる。


ここまで、壊れているとは思わなかった。


俺の、女神様は、おかしい。


俺が、ここにいるのに。

平然と、他の腕に身を預けるなんて。


……消えてくれないかな。


あいつ。


そんな考えが、

自然に浮かぶ自分に、

もう驚きもしない。


眠る彼女を、

起こさないように。


俺は、静かに乱れた息を整えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ