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元奴隷から愛される異世界生活。  作者: ChaCha


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ヒロインだった女

こんなの、うそ。


理解できない。

理解したくない。


だって――

私は、この世界のヒロインでしょう?


「……ありえない」


声に出した瞬間、喉がひくりと鳴った。

周囲の視線が、痛い。


あり得ない。

あり得ない。

あり得ない。


胸の奥で、同じ言葉が何度も反響する。


「……リセット、は?」


思わず、辺りを見回す。

いつもなら、

ここで画面が切り替わって。

選択肢が出て。

なかったことになるはずなのに。


どこ?


どこにあるのよ、リセットボタン。


指先が、空を掻く。


「……あっ」


ひらめいた。


もしかして。

もしかしてだけど。


ルイ陛下は――

攻略対象じゃ、なかった?


そうよ。

そうに違いない。


だって、あんなのおかしいもの。

ヒロインに向かって、

一度も視線を寄越さない王なんて。


「……違うキャラだったのね」


そう考えれば、すべて辻褄が合う。


エリックは……

もう、王子じゃなくなった。


価値がない。


はっきりと、そう思った自分に、

何の躊躇もなかった。


「……ダメね」


あれについて行くわけにはいかない。

肩書きのない男なんて、

選択肢に入るわけがないでしょう。


他の攻略対象は……?


学園は、もう終わった。

卒業後のルートは――


「……わからない」


喉が詰まる。


どこで?

どこで、好感度イベントが発生するの?


今までなら、

無意識でも分かっていた。


次に何が起きるか。

どこに行けばいいか。


でも今は――

真っ白。


「……次の舞台よ」


呟いて、空を見上げる。


そう。

続編があるはず。


だって、私はヒロインなんだから。


「……あるはずでしょう?」


風が吹くだけで、

何も答えない。


胸の奥で、

焦りが黒く渦を巻く。


「今すぐ……今すぐにリセット!」


声を張り上げる。


「続編を寄越しなさい!!」


喉が痛くなるほど叫んでも、

世界は動かない。


それどころか。


周囲の視線が――

明確に、変わっていた。


ざわつく声。

ひそひそと、押し殺した囁き。


「……あの女……」

「女神を冒涜した……」


何?


何なの、その目。


――私が、悪いみたいじゃない。


苛立ちが、矛先を探す。


「……そうだ」


あの女。


メイ・シルヴァ。


「……あの女が死ななかったせいよ」


唇を噛みしめる。


「暗殺者ども……金だけ掠め取って……」


使えない。

本当に、使えない。


だから、こうなった。


私のシナリオが、

全部、狂った。


許せない。


視線を横にやる。


エリックが、そこにいた。


頭を抱え、

何かをぶつぶつと呟いている。


――気持ち悪い。


「……まさか」


この男、

私についてくる気じゃないでしょうね?


一瞬、そう思って――

すぐに、考え直す。


待って。


顔は……

顔だけは、悪くない。


「……ふふ」


口元が、勝手に歪む。


男娼にでも売れば、

資金になるんじゃない?


そうよ。

慰謝料みたいなものよね。


だって、

私には今、何もないんだもの。


「……エリック」


優しい声を作る。


「まずは、泊まれる場所。行きましょ?」


エリックが、顔を上げる。


虚ろな目で、

それでも、私を見る。


手を伸ばす。


エリックが、

その手を掴んだ。


ミアは、にっこり笑った。


――まだ、終わっていない。


私は、ヒロイン。


世界が間違っているだけ。


この物語は、

きっと、ここから立て直せる。


……そう、

まだ、信じていた。


ヒロイン・ミア

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