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元奴隷から愛される異世界生活。  作者: ChaCha


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王の入場

扉が、音もなく開いた。


――それだけで、場の空気が変わった。


ざわめきが、途中で切れる。

囁きが、喉の奥で凍る。

呼吸をしていたはずの人間たちが、同時に一拍、息を忘れた。


来た。


誰が告げるでもなく、全員が理解する。

足音は静かだ。

威圧するための歩幅でもない。

だが、その一歩ごとに、床石の下から世界が軋む。


魔力圧。


数値では測れない、質の違う圧。

剣を抜く理由を失わせ、魔術の詠唱を考えることすら馬鹿らしくさせる、絶対的な差。


――王だ。


それも、

「国を治める者」ではない。

「勝てない存在」だと、身体が先に理解してしまう種類の王。


誰も動かない。

誰も、近づこうとしない。


視線だけが、引き寄せられる。


王の歩みは、一直線ではなかった。

だが、彼が進む先にだけ、確実に“道”が生まれる。


兵士は、反射的に背筋を伸ばし、

貴族は、頭を下げる角度を失い、

他国の使節は、国境という概念が、この場では無意味だと悟る。


――この男の前では、国力など、誤差だ。


そして。


王が、足を止めた場所。


そこは、最前列でも、玉座でもない。

ただ、一人の女性が座る席。


淡く、光を帯びた存在。


追いポーション。

重ねられた研究。

本人が無自覚なまま、限界を更新し続ける力。


その女性が放つものは、癒しだった。

近くにいるだけで、呼吸が楽になる。

胸の奥が温かくなり、理由もなく「大丈夫だ」と思えてしまう。


だが――。


その席の前に立った瞬間。


王の魔力圧が、さらに深く沈んだ。


癒しを、包み込む圧。

守るための力。

世界に向ける刃ではなく、その席を中心に据えるための支配。


外から見れば明白だった。


この国の重心は、ここだ。

女神の席。

そして、その前に立つ王。


どちらが上か、という話ではない。

並び立った時点で、完成している。


誰かが、ようやく理解する。


――蒸発。


あれは、誇張でも、噂でもない。

この魔力圧を、真正面から受けて、存在を保てる者がいるはずがない。


王は、何も語らない。

宣言もしない。

威嚇もしない。


ただ、そこに在る。


それだけで、

序列は確定し、

勝敗は終わり、

世界は、この国を“強国”として認識してしまった。


誰も、逆らえない。

誰も、抗えない。


そして誰もが、確信する。


――この王が立つ限り、

――この女神が座る限り、


アグナス王国は、揺るがない。


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