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元奴隷から愛される異世界生活。  作者: ChaCha


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餌付け

気が付いたら、私は勝手にマジックバッグを開いていた。

正確には、気が付いたら手が動いていた。


回復系。

回復系。

回復系。


素材を出して。

火を起こして。

ポーションを作って。

瓶に詰める。


ひたすら、回復。


「……なんで回復ばっかり作ってるんだろ」


口ではそう言いながら、手は止まらない。

出来たてのポーションを、視線の先へ向ける。


そこにあるのは、腰布一枚。

骨と皮しか残っていない身体。

まだ眠っている、雑巾みたいな存在。


……いや。


「……雑巾じゃない」


奴隷だ。


私はその身体に、ポーションをふりかけた。

しゃば、と液体が落ちる。


特製ポーションのお陰で、外傷は見た目だけなら完治している。

それでも、前世の私が頭の中でうるさい。


――こんな一本で治るわけないでしょ!?


……分かってる。

分かってるけど。


「……汚いなぁ……」


泉の水を操作して、ぬるま湯にする。

寒くならないように。

タオルを浸して、ぎゅっと絞る。


身体を拭き始めた。


ふき。

ふき。


……。


「……介護か!!」


思わず声が出た。

介護職の人、本当に尊敬してます。


爛れて剥がれかけていた肉片。

腐りかけていた部分。

顔にあった大きな火傷。

赤黒く固まって、ばりばりに張り付いていた血。


それ全部が、特製ポーションのおかげで。

つるつる。

ぴかぴか。


……本当に、すごいな私。


ふき。

ふき。


拭いても拭いても、まだ臭い。

裏も表も、軽く転がせるくらいガリガリだ。

骨の形が、そのまま手に伝わる。


「……こんな姿まで……」


この子も、ここまで生きるために頑張ったんだろう。


顔を見る。

半分以上が爛れていたはずなのに、今はちゃんと「顔」になっている。


「……綺麗」


さすが私。

……本当に、ガリガリだけど。


ふきふきしていると、暇になった頭が勝手に余計なことを考え始める。


王族は狙われやすい。

暗殺。

毒。

裂傷。

呪い。


もしも、エリックに何かあった時。

私が助けられるように。

支えられるように。


そう思って、学園で研究を重ねてきた。

なのに。


本人は、ヒロインと逢瀬を重ねてたっていうね。


……バカみたいだ。


その時。


ぐぅ~~~~。


自分の腹が鳴った。


「……お昼か」


ぷち工房の火を使い、鍋を置く。

スープ。

お粥。

干し魚を細かく刻んで入れる。


噛めない可能性。

飲み込めない可能性。

全部、想定済み。


よし。

できた。


私は少年のそばに座る。

肩を軽く叩く。


ぺち。

ぺちぺち。


「おーい!ごはんですよっ

たったひとさじ味キマる!」


……やってしまった。

某CMみたいな発音。



その時。

瞼が、ぎゅっと動いた。

ゆっくりと、開かれる。


次の瞬間。


がばっ。


少年は勢いよく起き上がった。

怯えた目で周囲を見回し。


「わっ……なに……!? ひぃっ」


即座に土下座。

額を、地面に打ち付け始める。


「ちょっと!!」


思わず声が荒くなる。


「せっかく治したのに、やめろ!!」


……あーあ。

額から血が出てる。


私は作りたてのポーションを掴んで、ばしゃっとかけた。

びくっと、身体が跳ねる。


震える少年。


私は、はっきり言った。


「自傷行為。

これからは一切禁止」


少年は、目を丸くする。

意味が分からない、という顔。


一拍遅れて。

振り子みたいに、こくこくと頷いた。


「よし」


私は、にこっと笑った。


「素直な子は、好きだよ」


……さらに震えた。

言い方、失敗した気がする。

でも、もう遅い。


私はお粥を持ち上げる。

ふー。

ふー。


「はい。

あーん」


ぎこちなく、口が開いた。

一口。

二口。


咀嚼できるか。

飲み込めるか。

様子を見ながら、ゆっくり。


器が空になるまで、与えた。


その間、少年は一言も発さなかった。


私は、ふと思った。


……雛鳥に餌付けしてるみたいだな。


前世を持つ私。

高位貴族として育った私。


どちらも、人を

「使えるか」「使えないか」で見ていた。

それは、奴隷商人と同じ思考回路。


否定は、できない。


空になった器を置く。

静かに、息を吐いた。


さて。

この子が何者で。

これから、どうなるのか。


それは、まだ分からない。


でも。


今日から、この子は。

私の「管理下」。


それだけは、確かだった。

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