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元奴隷から愛される異世界生活。  作者: ChaCha


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渇望した女神

祖国が崩れた。

名を呼ばれる前に家族は消え、王子という肩書きは血の音と一緒に砕けた。

鎖が外れたのは、自由になったからじゃない。

商品になったからだ。


顔を焼かれ、鞭を受け、価値を測られ、使われる。

呼吸は浅く、痛みは熱に変わり、熱はやがて感覚を麻痺させた。

壊れないように

生き延びるための技だけが、身体に残った。


正座したまま、ベッドの中央にいるメイ。


膝の上で指を揃え、

背筋はまっすぐなのに、肩は小さく上下している。


光。


淡い煌めきが、彼女の輪郭に沿って、呼吸するたびに濃くなる。

俺が一歩進むたび、あの光が正直に応える。


「夜は……寝るものです」


「月夜で、明るい」

君はこんなに俺に、反応して煌めいているのに。


「……あっ、まだ研究中の――」


逃がしはしない。

手を、腰の後ろに回す。


想いを熱へ耳元へ落とす。

「俺と、研究を重ねましょう…快楽という研究を……」


「ひやぁー!!!!」

淡く煌めく肌が、より一層鮮やかになる。


可愛い。


近づくほど、喉が鳴る。

欲望じゃない、と言い聞かせてきた。

守るためだ、と。


でも、違う。


抱きたい。

初めて、俺の意思で。


「……詰む……このままじゃ」

彼女から零れた言葉。


「ええ」


俺は囁く。


「詰んでください」


俺のためだけに。


腰を引き寄せ。

衣越しに伝わる体温。

太腿に触れる。


無意識に俺の衣を掴んでいる彼女。


「……ルイ……」


名前を呼ばれる。

ああ、この唇から俺の名が……


呼吸が、深くなる。


唇が、頬に触れる。

もう一度、確かめるように。

焦らすように。


「……んっ」

甘い吐息と水音がまざる。


「……詰む……」


淡い煌めきがさらにふっと強くなった。

ああ——正直だ。


額を重ね見つめ合う。


止まる。


俺の身体が、震えているのが分かる。

彼女を抱く腕が、強くなる。


「……苦しい。熱い……」


彼女は、あの女では無い。

欲をぶつけるだけの…あの行為ではない。


床に押し付けられ熱い鉄が顔を溶かしたあの夜。

肉が焼ける匂い、激しい苦痛。


涙が…零れた。


俺の女神さまが、

震える指で、胸元に触れる。


地獄を溶かす声音で

「……ルイ。良い子ね……大丈夫」


その言葉で、俺は崩れた。


額が、肩に落ちる。

深く、彼女の香りを取り込む

息が出来る。

肺に空気がはいる。


生きている。


俺は、彼女にいかされている。


声は、低く、掠れていた。


「……俺が、壊れそうです」


腕に、力が入る。


彼女が欲しい。


激しく重なる吐息。


抱かれたことは数え切れないのに、

抱きたいと、欲しいと思うのは初めてだった。


俺は彼女を大切に抱き上げる。

重さが腕に乗る。

体温が、確かにある。

その事実に、喉が詰まる。


胸元に顔を埋めると、柔らかい息が髪を揺らす。

肩に触れた瞬間、彼女の背がびくりと跳ね、光が一段、明るくなる。


「……俺に反応してる」


囁くと、彼女は小さく笑った。

笑いが震えに変わる。


掌が背を辿り、呼吸に合わせて止まる。

止まるたび、彼女の息が浅くなる。


俺は知っている。

人を溺れさせる技を。


——だが、今日は違う。

溺れさせたい相手が、愛しい。


唇が触れる寸前で、止める。

彼女が身を乗り出す。

淡い煌めく光が脈打つ。

我慢が、音を立てて崩れ始める。


理性が軋む。


熱が逃げ場を失う。


静かに確実に沈ませていく。

ぎゅっとシーツを掴む指先。


息が上がり、言葉にならない音。

必死に堪えながら、それでも漏れてしまう声。


「……苦しいですか」


「……熱い」


泣きそうな声。


俺は一度、動きを止める。

止めることで、震えが伝わる。


抱きしめた腕の内側で、彼女の身体が正直に光る。


「……大丈夫だ」


あの彼女がくれた言葉を、今度は俺が返す。


唇が重なる。

軽く。

もう一度、角度を変えて。

息が途切れ、再び触れる。

触れるたび、光が応える。

その反応に、俺の喉が鳴る。


長い夜だ。

終わらせない。

壊さない。

初めて“自分の意思で抱く”夜を、逃がさない。


——俺の女神様。

渇望は、ここに辿り着くための道だった。



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