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神の光

作者: TDK

この小説は暇潰しに書いたモノです。ストーリーは無いに等しいので気楽に読んでください。

無限の現実のベールを超え、私は何もない空間に足を踏み入れた。私の目にはそこは完全な暗闇で、無限の虚無のように見えた。しかし、本質的にはそこは形而上学的、もっといえば言葉では到底形容する事ができぬ場所だった。今こうしてここを暗闇と思ってるのも、人間のつまらぬ知覚力で何とか形として理解できるようにしているだけだろう。そんな事を考えてる内に、私はその虚無の先──厳密にいえばここには横も上も下も無いが、その先と思われる所に、何かが私をじっと見ていた。それは空間や時間を超え、殆ど抽象的な、だが間違いなく私の目の前に存在していた。ふと、その存在が私にどんどんと近づいているように感じた。それがどんな形なのかと問われたら、何と答えればいいか。天使、悪魔、霊、怪物───少なくとも私の前にはスパゲッティの怪物の姿としてやって来た。そして、そのスパゲッティの怪物は、大きな二つの目を開けた。

その目を見れば見るほど、それに同情心や心など無く、ただただ悪意に満ちながら私を嘲笑っていたのが理解できた。


「“お“前“は“何“故“こ“こ“に“い“る“?“」


スパゲッティの怪物は、声を発した。

あまりに壮大で、恐ろしいその声に私の心の奥底に眠る全ての恐怖が引き起こされ、私の精神は闇へと染め上げられた。

奥歯がガチガチと鳴り、私の肉体は無意識に震え上がり、私の思考をどんどんと蝕んでいった。


「“H“A“H“A“H“A“H“A“!“!“お“前“が“ど“う“し“て“い“る“の“か“は“こ“の“際“関“係“無“い“!“お“前“の“身“体“を“引“き“裂“き“、“ハ“ラ“ワ“タ“を“つ“ま“み“に“し“て“や“ろ“う“」


そして、スパゲッティの怪物は何本かのスパゲッティを伸ばすと、私に掴みかかろうとしてきた。


「あぁ...どうか慈悲深きイエス·キリスト様...このちっぽけな私をどうか...」


私は祈った。

私は別に無神論者では無かったが、余り神という概念は信じてはいなかった。

見た事も無い存在を疑問も無しに信じられる程、私は信仰深い人間では無かった。

しかしこの時は、例えこれからの人生全てが苦しみに満ちていても、この狂った怪物から逃れればそれで良いと確信していた。


「"Hmm..."」


その瞬間、私の背後に恐ろしく光輝く存在が立っていた。

その光は完全な虚無と思われたこの暗闇を照らし、純粋な安らぎと温かみが感じられた。そして、私は彼の姿を見た。

あのスパゲッティの怪物とは違い、彼の瞳には普遍的な愛と美しさが宿り、それでいて何故か身に覚えのあるような気もした。


「"フランク...君は怖いかい?"」


彼が尋ねると、私は首を横に振った。


「いえ...今は全く怖くありません」


私は普段なら殆ど使わないような丁寧な口調で喋った。先程の恐怖は全て消え去り、今私の心の奥底に眠る全ての光が、汚れきった私の精神を浄化した。


「"良かった...フランク。君はこれからあの怪物に立ち向かわなくてはならない"」


「何故です?貴方は文字通りの神だ。貴方なら意識しただけであのおぞましい化け物を消し去る事ができるでしょう?」


私の疑問に、彼はとても優しく答えた。


「"確かに...しかし、人には自らの闇を切り開く力がある。今君の目の前にいる怪物...彼はどういう風に見える?"」


私は彼の言う通りに、スパゲッティの怪物を見た。姿を変わっていない。今も大きく、そして恐ろしい。しかし、同時に安心感も存在していた。事実私は怪物の二つの目を見たが、そこには先程の悪意が無く、まるで金に必死にしがみつく下らないチンピラのように思えた。

何故そう見えたのか。


「なるほど...」


「"分かったかい?"」


「えぇ」


確かにその怪物は恐ろしかった。しかし、私の心の奥底に眠る神の光。それと比べたらあの怪物の闇など余りに小さかった。


───私の目の前にいる怪物は、私の中に宿る神よりも決して大きくはなかった。

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