あなたは神に会いたいですか? たとえ命を懸ける事になっても。
宗教法人【神の里】の総本山。
ここでは、試練を突破すれば神に会えると言う。
今日もまた、神に会うために多くの人が集まっていた。
山奥にある大きな舘。
ここは、宗教法人【神の里】の総本山。
この館では、神に会う事が出来る。
しかし、会うためには神の試練に受からねばならず、試験に落ちた者はその消息を断っていた。
だが、神に引き付けられるように、今年もまた多くの参加者が神に会うべく集った。
その人数、百人。
彼、田中 優斗もその一人。
「皆様、ようこそ神の里へ。私が今回あなた方を案内する担当のフィリスと申します。なお、この名前は私が神に与えられた名前です」
現れたのは、神の里の信者の女性。
顔を隠しているので、素顔は分からない。
「皆様には神に会う資格があるかを測る為の試験を受けてもらいます。そのために、まずは契約書にサインをお願いします。こちらにサインしないと、試験は受けられませんのでしない場合は即刻お帰りください」
渡された契約書には、舘内の事は決して口外しない、何が起こっても全て自己責任、などが掛かれていた。
当然、全員がサインした。
大勢の挑戦者が神の里の信者に連れてこられたのは、一つの部屋の前。
「まずは第一の試験です。この扉の中で三十分間入っていただきます。ただし、時間内は部屋から出てはいけません。もしトイレに行きたい方がいらっしゃいましたら、今行ってください」
トイレに行く人はおらず、挑戦者全員が部屋に入った。
その部屋は、只の真っ白な部屋。
何もない、本当に真っ白な部屋。
「では皆様、三十分後にお会いしましょう。この扉に鍵は在りませんので、いつでも出る事が出来ます。ただし、先程説明した通り、出たら失格になる事をお忘れなきように」
そう言うと、フィリスは扉を閉めた。
その瞬間
「!!!!!!」
挑戦者達は、何かの存在を感じた。
彼らのほとんどは、どこにでもいる普通の人間だ。
だけど、分かる。
何かが……いる。
人間じゃない。
なにか、恐ろしい物。
その圧倒的気配が、挑戦者達を混乱に陥れた。
「うわぁぁぁぁぁ」
一人の参加者が、扉に向かって走り出した。
それに釣られて、何人かが一緒に走り出す。
そして、そのまま部屋を出る。
そして……。
パァン!パァン!………
扉から出た人々は爆発した。
血しぶきが舞い、周囲の壁を赤く染める。
「何だよこれ……何なんだよ!」
優斗は思わず叫んだ。
「おやおや、神罰が下ったようですね」
扉の少し先にいたフィリスが、何事も無かったように参加者に語りかけた。
「何だよ、これは!こんな……何で!」
パニックになった一人の参加者が、フィリスに向かって走り出す。
しかし、彼女の胸ぐらを掴む為に扉から出た瞬間……
パァン!
爆発した。
「あらあら、いけませんよ。扉を出たら失格です。では皆さん、頑張ってください」
そう言ってフィリスは扉を閉めた。
再び残される参加者。
部屋に残るのは、未知の存在に対する恐怖。
そして、逃げたら死ぬという絶望。
「皆、集まろう!」
優斗はそう声を掛けた。
「皆で集まって、肩を組もう。それで少しはマシになるかも」
彼の声に、皆も頷く。
「そうだね」
「集まろう!」
皆で集まって肩を組んで輪になった。
それでも、怖い。
だけど……一人では無理でも大勢なら耐えられる。
たとえ今初めて会ったばかりの人同士でも。
こうして、それ以降誰も脱落者は出ず、全員が三十分間耐えきった。
「皆様、合格おめでとうございます」
その瞬間、何かの気配が消えた。
はぁ~
全員が気が抜けて尻もちをついた。
「では、一時間の休憩後、次の試験に移ります」
色々聞きたいことがあるが、全員疲れ果てていたので、後回しにした。
一時間後。
「では皆様、次の場所へ移動しますのでお立ちください」
だいぶ回復した全員は立ち上がると、フィリスに詰め寄った。
「なんなんだよあれは!」
「あれ、とは?」
「失格した奴らが死んだ事だよ」
「ああ、あれですか?」
フィリスは笑って続けた。
「あれは神罰です」
「神罰だって?」
「はい。恐れ多くも神の手を煩わせたのです。神に無駄な時間を使わせるような愚か者は、神罰が下って当然でしょう」
「神罰?あれが?殺人だぞ!」
「おっしゃられる気持ちはわかりますが……」
フィリアは頭を下げた。
「申し訳ありませんが、どんな神罰が下るかは私達にもわかりません。なにせ、神のなされる事ですから」
「ってか、神罰だろうと何だろうと、これは殺人だ!警察を……」
「警察を呼ばれるのは構いませんが、警察は何も出来ませんよ」
フィリスは楽しそうに笑って続けた。
「かつて警察を呼んだ人がいましたが、結局何も出来ませんでした。当たり前です。神の御業は、人には測れぬもの。私達信者の関与を疑っていましたが、証拠は何も出ませんでした。原因不明の死亡事故として判断され、私達はお咎め無しでした」
「そんな……」
全員が黙り込んだ。
確かに、こんな不可思議現象、現代科学で測れる事ではない。
「では、次の試験に移ります。先ほどの試験は前座。これからが本番です」
「本番?」
「ええ」
優斗の質問に、フィリスは答えた。
「先ほどの試験は、神に会う事が出来る最低限度の心の強さを持っているかを確認するだけです。次からは、神が御自らの手で判断するのです」
「神が、自らの手で……」
「はい、ですから私が出来るのは試験場に案内するだけです。試験の内容は何で、合格、不合格の条件すら私達にはわかりません」
おそらく、次の試験は今までよりさらに難しいだろう。
「あの……ここで辞める事は」
「可能です。ですが、先ほど申したようにここから全てを判断するのは神です。今までの参加者の中でも、途中で辞めて何も問題なく帰れた方や、先程のように死んだ方もいました。何度も言いますが、判断するのは私達ではありません。神なのです」
全ては神の気まぐれ。
生かすも殺すも神次第なのだから。
「「「……」」」
誰も、何も言えなかった。
試験に参加するか、それとも一か八か辞退するか。
「お、俺……帰る!」
結局、優斗は脱落を宣言した。
「では、お帰りのバスが用意してありますので、お帰りください。」
こうして、優斗は家に帰っていった。
「神なんて、命がけで会う価値ないさ」
そう優斗は自分に言い聞かせた。
数日後の夜。
「あー、よかった。やっぱり神罰なんか無かったんだ」
結局何もなかった
安心した彼は、そう呟いた。
スマホを見ていた優斗は、急にスマホ画面が消えて驚いた。
「あれ、充電したばかりのはずなのに」
そして、電気も切れた。
「停電?」
その時……
「!!!」
優斗は恐ろしい感覚を感じた。
それは、神の里で感じた気配。
それは、神の気配。
「だ、誰か……母さん」
優斗は、家にいる母親に助けを求めた。
父親は長期出張で家にいない。
「優斗、大丈夫!」
「母さん、助けて!!」
優斗は母親に助けを求めた。
そして、
「大丈夫?」
母親が心配しながら優斗を後ろから抱きしめて来た。
「母さん、よかった……いてくれて」
「……」
「母さん、どうしたの?」
母親は何も答えない。
優斗は振り返り、母親の方を見た。
その姿は、母親ではなかった。
「優斗、大丈夫?びっくりね。いきなりブレーカーが落ちるなんて。大丈夫だった?」
母親が優斗の心配をする。
だが、彼女が息子の声を聞く事は二度と無かった。
まず、謝罪から。
読まれました通り、打ち切りエンドみたいな形になってしまいました。
すみません。
でも、せっかく書いたんだからアップしようと思ってあげました。
これ以上長くなっても惰性かな~とか、思ったりしましたし。
人気があれば長編にするかも。
こういったデスゲーム形式ってやっぱりステージの面白さが物を言いますしね。
ちなみに、これは夢で見た内容を元に作っています。
【おまけ・夢で見た内容を走り書きしたメモ】
とある宗教団体では、神を知る事が出来る。
ゲームをクリアすれば、神に会える。
一つ目のゲームでは、只部屋にいるだけ。
しかし、神の気配に耐えられなかった人は出て行こうとすると死んでしまう。
第二の部屋は海の部屋
最後に残った三人は、最後のゲームに挑む。
しかし、その前に帰って来た一人が「もうやめよう」と言う。
「神なんて、命がけで会う価値ない」
そう言われた一人は、仲間(母)と一緒に家に帰る。
一人部屋にいると、傍に神の気配が。
神は背後から首を絞める。
苦しむが、やがて母親が帰って来る。
「お母さん、神が」
そう言って振り返ると、その後ろ姿は神(母)だった。
こんな内容でした。
これを膨らませたのが、本小説です。
この夢がなければデスゲーム系なんて絶対書かなかったと思います。
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