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それいけケマコ 3閑話休題

作者: みはらなおき

 朝日が、斜め横から稲荷神社の小さな祠に差しこんでいる。光の玉が、赤い鳥居をくぐり抜けて祠の前でピタリと止まった。小さな二つの光が、線香花火の火玉のようにぽとりと落ちた。元の光は稲荷大神の姿に、二つの火玉は、双子のロリっぽい女の子になった。


「ふぅ。もっかい寝ようかなぁ。あ、お疲れー」


「お疲れ様でございました」「お疲れ様でございました」

 稲荷大神が祠の中に光となって消えてゆく。女の子の一人芽乃は、くるっとトンボをきって台座に飛び乗ると同時に白い石の狐になった。葉乃もトンボをきる。だが、台座に立ったのは、白いシースルーのフレンチスリーブのブラウスに、ひらっひらのピンクのミニスカート、赤い安物サンダルに薄い白ニーハイソックスのロリっぽい女の子だった。


「え!え?あっそうだ私!」

 慌てて葉乃は台座から飛び降りると、祠を叩いた。

「神様神様ああ、私、狐に戻れないんですけど!!」


 祠の中からは、

「ふあ……、何?そっちで適当にやっといてよ」とか、ぼんやりした返事が聞こえる。


 芽乃狐も、気になって祠を振り向こうとするが、その時、本殿の方で人の声が聞こえた。


「今日も、ご参集ありがとうございます。ボランティアの皆さんのお陰で、境内はいつも……」


「き、今日は境内の清掃ボランティアの日ですぅ。見つかっちゃいますぅ」

 芽乃狐は、背伸びをして、本殿の様子を伺った。


「ったく、んじゃ、芽乃ちょっとだけ変身能力、貸したげなさよ」


 祠から白い腕が一本伸びると、芽乃に向かって振り下ろされた。

「きゃあああ」

 芽乃狐から変身能力の象徴である小さなホオノキの白い美しい花が浮かび上がった。

「やたっ」

 葉乃は、すかさず台座からジャンプしてホオノキの花に飛びついた。


 その時、

「うわわ!な、なぁにやっとるんじゃ!」

 葉乃は、地元の老人Aに発見されてしまった。


「きゃあ、あ」

 すかっ…、と葉乃はホオノキの花を取り逃がし、空振りのまま着地した。芽乃狐の台座にもたれて、何事もなかったかのように口笛を吹くが、焦って、


「すーすー」言うだけであった。


「こぉんな朝から、そんな恰好でどうしたんじゃ」

 老人Aは、葉乃に近づいてくる。


「あ、あーのー、あた、あたしも、ボランティアしよっかなあなんて思ったりしたんでございますぅ」

 葉乃は、慌てて言い繕う。


「あ、あんた!昨日行ったすすき野のメイド喫茶のハニーちゃん?」


「あ、ハニーでーす」


「どうした?なに騒いどる?」

 鳥居の影から、老人Bが現れた。老人Aが老人Bに振り向き、


「いや、昨日のハニーちゃんがボランティアに来てくれたんじゃ」と鼻の下を伸ばした笑顔になる。


「今だ!ハニーフラッ〇ュ!!」という勢いで葉乃はジャンプし、ホオノキの花をインストールすると、台座で石の狐に変身した。


「なにぃ?メイド喫茶のハニーちゃん?ハニーちゃんは、コスプレパブの子だろ?」


「あ、二軒目な!道理でミニスカ、ニーハイで来てくれたのけ?」

 老人Aが改めて祠に向き直った時には、女の子の姿はどこにもなかった。


「あれ?ハニーちゃん?」

 老人Aがきょろきょろするそばで、

「だいぶ飲み過ぎたようじゃの」と老人Bが言う。


 二匹の石の狐は、明後日の方を向いて、ぐっしょりと朝露に濡れていましたとさ。


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