光線銃
編隊を組んだ何機ものメタルコメットは、荒野に到着した。
「見せてやる! 僕の力を!」
翔太は生唾を呑み、今度こそトレーニングの成果を発揮する。彼は自ら敵陣の機龍から飛ばされる十発のミサイルの囮となり、大きな円を描くように飛び回った。彼の乗るメタルコメットは機龍の背後でホバリングし、その場で回転する。同じ場所に留まりながら四方八方に回転する機体は、迫りくる敵機を次々と撃墜していく。そうして限界までミサイルを引き寄せたところで、翔太はメタルコメットを急上昇させた。直後、敵陣の機龍は自ら放った十発のミサイルを浴びる。
「よし、狙い通りだ!」
一先ず、敵の機龍に致命傷を負わせることができた。しかし同じ手は二度も通用しないだろう。今度は機龍が攻撃を切り替え、無数のレーザー光線が放たれていく。翔太がそれを必死にかわしていく最中、彼の自陣の機体は次々と撃ち落とされていった。それに応戦するように、彼も淡々と敵機を撃ち落としていく。そんな彼のメインターゲットは、敵陣のメタルコメットではない。
「こちらには、機龍が無いんだ! 先ずはあの機龍から片付けないと!」
無論、彼には考えがある。先ほどミサイルを浴びたことにより、敵の機龍は背面が少し損傷している。翔太は再びその背後へと潜り込み、損傷箇所めがけてレーザー光線を連射した。その間にも、敵機は彼の命を狙っている。
「杠葉翔太を援護したまえ! あの機龍を落とすのだ!」
通信機越しに、正和の大声が響き渡った。メタルコメットの群れは一斉に翔太の周りに集まり、敵機と交戦していく。
「生きて帰るんだ! 狼愛にはまだ、教えていないことが山ほどあるんだ!」
そんな想いを胸に、翔太は動き回る機龍の周りを旋回していく。機龍の背面は着実に装甲が削れ、漏電した配線が露わとなっていた。それでも機敏に動く敵機の一箇所だけを正確に狙い続けるのは難しい。そこで正和は、次の指示を出す。
「各自、機龍を撃ちたまえ! どこを向いていても弱点に被弾するよう、レーザー光線で囲い込みたまえ!」
彼の指示により、狐火軍のメタルコメットは一斉に配置につこうとした。しかしそれらはすぐに撃ち落とされ、残る兵士は翔太と正和のみとなった。撃墜される直前にベイルアウトした兵士たちは、次々と荒野に降り立っていく。
「ふん……どうせ撃墜されるなら、特攻でも仕掛ければ良いものを」
そんなことを呟き、正和はため息をついた。このままでは、狐火軍が敗れることとなるだろう。彼はすでに、撤退を指示することを念頭に置いていた。
その時である。
「ダメで元々!」
翔太の執拗な攻撃により、ついに敵陣の機龍が破壊された。それから翔太は空を跳び回り、残りの敵機を次々と撃墜していく。その最中、翔太は通信機を使い、正和と話をする。
「こちら杠葉翔太。生き残った兵士を回収するため、迎えを要請する。どうぞ」
「こちら蟒蛇正和。これより戦線から離脱し、大型ヘリを何機か手配する」
これで一先ず、兵士たちをスカイネストに戻す算段は立った。そしていよいよ、翔太は最後の一機と対峙することとなる。
「僕は、生き残るんだ!」
彼はレーザー光線を放った。それは、向こうからの攻撃とほぼ同時だった。二機のメタルコメットは煙をまといながら転落していった。翔太とその敵はコックピットから脱出し、光線銃を構えながら互いを睨み合う。
「向こうも……子供……?」
翔太は唖然とした。罪のない子供を戦わせているのは、狐火国だけではなかったのだ。翔太は息を整えつつ、なんとか手の震えを止めようとした。少しでも気を抜けば、それが命取りとなる。
「……ごめん」
そんな一言を零し、翔太は敵陣の少年を射殺した。少年は一瞬にして脳天を撃ち貫かれ、意識を失ったままパラシュートで空を舞った。