経緯
「ところでこの氷は……」
「妾の魔法じゃ。殺しとかんと目障りじゃろう?」
一瞬で氷漬けになったあれは、タマラさんが原因のようだ。
敵を凍らせることもできるのか。
「爆発とか氷とか以外にも色々出来たりするのか?」
「殺し方か? 他には、呪ったり、潰したり、貫いたり、燃やしたり……考えてみると沢山あるのう」
可能な殺し方じゃなくて魔法の属性とかを聞きたかったんだが……まあこれでも色んな魔法が使えることが窺えた。
多種多様な魔法を扱える。この世界のことはわからないが、恐らくすごいことなのは間違いないだろう。
「ミリ……姉ちゃんはどんな魔法が使えるんだ?」
「私はそんな使えない。でも空間系が得意」
「空間魔法のう……扱いが面倒ではないか? 妾はあまり好かん」
「私は好き」
「へー」
ミリアは空間魔法というのが得意とのこと。
全然わからないから早く習得して魔法トークに混ざりたいぜ。
「あ、それよりこの男の人だ。死んではないよな?」
「少し怪我してるけど大丈夫、失神してるだけ」
「回復魔法、みたいなものは……?」
「使えない」
「妾も自分しか治せんのう」
どうやら二人とも治療はできないらしい。
ていうかあるとは思っていたが、やっぱりあるんだな回復魔法。
二人が使えないということは覚えてる人が少なかったりするんだろうか。
それなら俺は回復魔法について学んでみようかな。
皆んなが使えないような魔法を使えるって格好いいじゃんね。
「まあ死んでないだけ此奴は幸運じゃろう」
確かにその通りではある。
俺たちがいなかったら多分死んでいた。
良かった、やられる前に間に合って。
「起きたら金でも貰って……面倒じゃ」
そう言うと彼女は水を生成し、男の顔に落とした。
「んう……はっ!? ドラゴン! ドラゴンは……!」
瞬間的に彼は身を起こし、焦った様子で首を振って辺りを見渡す。
「うわあああ!!」
「五月蝿い奴じゃの」
すると氷漬けになったそれを見て叫び、タマラさんが軽く吹き飛ばした。多分風の魔法とかで。
「おい、よく見ろ。もう死んでおるじゃろうが」
「! ほ、ほんとだ……! た、助かったのか、俺! ……ところであんたらは?」
なんだかこの人の扱いが雑い気がするタマラさんのことは置いといて、とりあえず彼に状況を話すことにした。
旅してたらドラゴンの前で人が倒れてたから助けた、といった塩梅の話だ。名前もそのあと名乗った。
そういえば関係ないが、ミリアが名前をくれたから、彼女が実質俺の母ということになるんだろうか。
この幼女をママと呼んでみることを想像すると……うーん犯罪臭が。
まあ別にどうでも良いんだけど。
「俺はライルだ。助けてくれて本当にありがとな!」
彼も自己紹介をし、事情を語り始める。
話を聞くと、なんでも馬車の護衛をしていたら、ここには普通現れないはずのレッサードラゴンが突然出てきたとか。
他の仲間と馬車は先に送り、なんとか必死に逃げ回って時間を稼いでいたが、不思議な香りがして眠気に襲われ、気合いで頑張るがとうとう眠ってしまったらしい。
「眠花じゃな。飛ばす花粉に誘眠作用があるんじゃ」
「へー、そんな花があるんだな」
その眠花でダウンしてドラゴンに攻撃される間際のところで、俺たちが彼を救出したという流れようだ。
「頼む、礼をさせてくれ! 街へ帰ってからになっちまうが……!」
そんなわけで、礼をしたいと言う彼。
しかもどうやら近くの街を知ってるっぽい。
人助けはやっぱりするもんだな。ゲームでしかしたことなかったけど。
「じゃあその街まで案内してくれないか? 実はそこに行きたいんだ」
「あと金じゃな」
「ああ、わかった。お安い御用だ!」
街までの案内人が仲間に加わった。