ご飯
「自給自足してるのか?」
「そうじゃな。肉は適当に狩って……食べられる草は覚えておるからのう」
五十までニートしてるただのダメニートかと思いきや、なんかサバイバルさせたらめちゃくちゃすごそうな特技を持っている。
座るように促され、クッション替わりの草にミリアと共に腰を落ち着ける。
意外と座り心地は良い。
「そういえば、街に入ったとしてお金って持ってるか?」
「持ってない」
そりゃそうか。
まああったとしても百年前のとか使えそうにない。
「けどお金になりそうなものならある」
「へー、見ても良いか?」
「これ」
どこからともなく出してきたそれらは、光を反射しキラキラと光っている。
「どこで手に入れたんだ?」
「錬金術で作った」
彼女、錬金術を嗜んでるらしい。
色とりどりに光るそれを、一つ持って観察してみる。
「綺麗だな」
「それ自信作」
宝石とかは全然わかんないけど、持ってみた感じちゃんと重さもそれっぽいし、確かに売ればお金になりそうだ。
「いつ作ったんだ?」
「覚えてないけど多分結構前」
そんな前に作ってまだこんな綺麗なのか。すごいな。
……あれ、もしかして何もできないのって俺だけ?
唯一できることといえば、宙にふよふよ浮くことくらい。
二人とは比べ物にならない。
俺もなんか色々学んでみたい。主に魔法を学びたいな。二人に教えてもらおうか。
てか魔法学校とかあったりするんだろうか? あるなら行ってみたい。
「お主ら、できたぞ」
話すことどのくらいか、思ったよりも早くご飯が完成した。
テーブルはないので、適当に座って食べる感じ。
「テーブルある」
かと思ったらミリアがどこからか机と椅子を召喚。
驚きつつも準備は進む。
素人目にも高級さがわかるようなそれは、この場所ではあまりにも浮いている。超絶ミスマッチ。
お皿やフォークなどの一式はタマラさんが用意してくれた簡素な物で、懐から出した小さな布袋から取り出していた。
調味料やらなんやらもそこから全て出していたので、恐らく見かけ以上に物が入る魔法の布巾着的なものなのだろう。
「いただきます」
適当な席に着くと、直に美味しそうな匂いが飛び込んできた。
作ってくれたのは何かの肉のステーキのようだ。
野菜とかの盛り付け方がなんかそれっぽい。超美味しそうである。
「うま」
めちゃくちゃうまい。
横を見るとミリアも黙々と肉にかぶりついていた。
タマラさん料理の天才かもしれん。
「主ら街へ行くんじゃろ? 妾もついて行って良いか?」
食べ進めていると、タマラさんがそう話しかけてきた。
「全然良いけど、どうしたんだ?」
「調味料が無くなりそうでな。買い足しておきたいんじゃ」
やったぜ、タマラさんともう少し旅ができるらしい。
ケモ耳要員としても調理要員としても有難い限りである。
でもふと思ったことが一つ。
「何でこんな所で自給自足生活してるんだ?」
「実家から適当に歩いたらここだったからじゃな」
特に理由はないらしい。結構適当なのかもしれない。
「街には住まないのか?」
「住むには金がいるじゃろ? 自分のことは良いんじゃが、命令されて働きたくはないんじゃ」
「調味料を買うのはどうするんだ?」
「家を出るときにもらった金の出番じゃな。大して貰ったわけではないが、調味料だけなら大分持つはずじゃ」
「それが尽きたら?」
「まあ調味料なしで自給自足か、自分で作るじゃろうな」
そうまでして働きたくないとは。
ニート歴五十年はやはり伊達じゃない。
片鱗を見てしまったような気がする。
「ごちそうさま」
ミリアが真っ先に食べ終わり、遅れて二人も完食。
今までで一番美味しかったかもしれないレベルの美味しさだった。
「何?」
「妾が口を拭いてやろう」
ちなみにミリアのベタベタの口を拭いたり、食器を洗ったりなどの後片付けは、ほとんどタマラさんがやってくれた。
やっぱりこういう所は妙にしっかりしてるんだよな。
不思議な人である。