道中
「ほ、本当にライルにゃ……!?」
「ら、ライル……!」
「おう、俺に任せろって言っただろ?」
ライルと仲間達の感動の再会である。
しかしそれよりも気になったのは仲間の詳細。
一人はその典型的な言葉遣いからも分かる通り猫の獣人で、ケモ耳というわけではなくよりケモ度が高い見た目をしている。
顔が猫、というか全身に体毛が生えている。
馬車から顔を覗かせてたのは彼女である。
そしてもう一人はどっからどうみてもなエルフ。
耳が明らか長くて緑モチーフの衣装を纏い弓を引っ提げている。
どちらも女性。
ライルくんそんなハーレム状態で冒険してたのかと少し嫉妬。
まあ俺もよく考えたら似た感じではあるか。
「彼女たちが助けてくれたんだ。ここまでも運んでくれたし、感謝してもし足りないくらいだ」
「ほんとに、本当にありがとにゃ!」
「ありがとう……!」
「シルに……礼は彼女に沢山言った方がいい。最初に動いたのは彼女」
「ありがとにゃ!」
「本当にありがとう」
「お、おう……でも俺一人じゃ倒せなかっただろうし……」
ミリアにヨイショされてしまった。
嬉しいけどちょっと恥ずかしい。
まあ本当に良かった、助けられて。
「た、倒したにゃ!?」
「ああ、嘘みたいな話だが、いつの間にかあの巨体が丸ごと氷漬けにされてたんだ」
「妾の魔法じゃ。礼は金でよいぞ」
「すごいにゃ! ほんとにありがとにゃ!」
「ありがとう。この依頼の報酬は貴方達に分ける」
「ふん……」
タマラさんの態度は変わらないが、ちょっと照れてた。
まあついこの前までニートの人だもんな。褒められ慣れてるはずがない。
逆になんでそんな人なのにこんな自信に満ち溢れた態度が取れるんだろう。
普通に意味わからない。
「私はマロンっていうにゃ、よろしくにゃ」
「ルル……よろしく」
一段落すると互いに自己紹介をした。
三人は冒険者をやってるとのことで、いつもこの三人組で依頼をこなしてるらしい。
冒険者って職業本当に実在するんだ。嬉しい。
「あのドラゴンを倒してくれたんだって? 乗ってけ乗ってけ……と言いたいところなんだが、六人は流石にきつそうだな……」
その後は話の流れで馬車に乗っけてもらうことになったのだが、大きい幌馬車といえど中には荷物があり、面積的にきついとのこと。
ただの馬ではないとのことで、重さ的には余裕があるらしい。
それを聞いてミリアが馬車の中に乗り込んだ。
「これで大丈夫」
気になって俺も馬車に乗ってみると、なんか妙に長い。
外から見た時の見た目と中の大きさが違うような気がする。
いや絶対違う。なんか変。
「にゃ!? ど、どうなってるにゃ!?」
中を覗いたマロンが驚き、こちらを見てくる。
いや俺もわからないって。
「少し空間をいじった」
このくらいなら朝飯前らしい。
空間魔法すげえ。
「空間って……空間魔法にゃ!? ほ、本当に使える人がいるんだにゃ……」
「初めて見た」
そんなすごい魔法なのか。
ミリアは得意らしいし、タマラさんも使おうと思えば使えるみたいな感じだったからわからなかった。
確かに自由自在にとはいかなかったとしても、そこら辺に空間をいじれる人がいたら世界が崩壊しそうだし、ちょっと安心。
「こ、これ、大丈夫なんだよな?」
行商人の彼が問う。
「うん、私がいる限り大丈夫」
「いる限りって……」
「降りる時戻す」
「う〜ん……」
この馬車に愛着があるのだろう。彼は大分困った様子。
正直俺もちょっと怖い。なんか世界がバグったみたいで。
しかし彼は少し悩むも、最終的に許してくれることになった。
一時的にでも渋々良しとしてくれてるのは、ドラゴン討伐の恩恵だろうか。
「他にはどんなことができるにゃ?」
「こんなこと」
「にゃ!? どこから出したにゃ!?」
全員が馬車に乗り込み出発する。
他の人は空間をどうにかしたことに対して、特に不安はなさそうである。
冒険者という職業柄か、そんなものよりも好奇心が勝っている様子。
道中はこんな風に話しながらあっという間に過ぎていった。
「もうすぐ着くぞー!」
行商人がそう呼びかける。
身を乗り出して外を眺めると、見えてきたのは街……ではなく壁。
走る馬車の中から、なんかこう、いい感じに立ち並ぶ建物を見たかったな。