合流
「あ、あの、これ怖いんだが、いつまで続くんだ……?」
木々を見下ろしながらライルがぼやいた。
俺たち四人は現在、空の旅の真っ只中である。
ライル以外の三人は自力で飛び、飛べない彼はミリアに浮かされている。
「とりあえず道が見えるまで」
「そ、そうか。道が見えたらすぐ降ろしてくれよ……?」
「うん」
歩くより早いからこう移動してるわけだが、竜と追いかけっこした時の半分の速度も出ていない。
とは言っても普通に走ってる時くらいの速度は出てるし、地上数メートルくらいの高さもあるので、確かに自分で飛べないと中々怖そうである。
「あ、あった」
「よし、本当にありがとうな……じゃあ降ろしてくれるか……?」
「もう少しで着くから」
「ああ……うん、わかった……」
移動し始めてから数分たらずで道を発見した。
しっかりした道がある。こっちに来てから初めて見たかもしれない。
土だけど平らに整備された割と広い道だ。確かにここなら馬車も通れそう。
「おお……ほんとに帰ってこれたのか、俺……」
到着するとライルは感極まった様子で立ち尽くす。
知らん場所で死ぬ寸前だったんだもんな。そうなるのも頷ける。
「どっちに進めばいいんじゃ?」
そんなことは意に返さず、タマラさんが聞く。
まあ確かに俺たちからしたら、そんなのどうでもいいわけだけれども。
「あ、ああ、こっち側に辿っていけば街に着くぞ」
「どのくらいで着くんだ?」
「それなりに距離はあるな……多分馬車もまだ着いてないと思う……追いつけたら色々楽なんだが」
「……」
何を思ったか突然ミリアが地面に何かを描き、それが終わると空中に浮かんだ。
「ちょっと待ってて」
そう言葉を残し、ものすごい速さで街の方へ飛んでいった。
同時に吹き荒れる風。
ドラゴンから逃げた時よりも早そう。
「彼奴、飛行魔法も中々じゃのう」
「何するつもりなんだろ」
まさか一人で街まで行くなんてことはないはず。
気になるのはミリアがここに描いた謎の紋様、厨二心をくすぐられるような、おそらく魔法陣というもの。
「んぅ……これは恐らく空間系の……」
「へー、全然わからん」
「俺もさっぱりわからんが、あのお嬢ちゃんすごいんだな。あんな速度で飛べて空間魔法まで使えるなんて……」
まあ百年は生きてるからな。と言いたくなったがやめておいた。
乙女は年齢に対してデリケートな生き物だからだ。
俺が教えるのは違うだろう。
「まあ百年は生きてるらしいからのう」
と思ってたらタマラさんが言っちゃった。
まあ別に大丈夫だとは思う。こういうの無頓着そうだし。
「ひゃ、百って……!?」
「人間の老いの速さも異常じゃがな」
「タマラさんも五じゅッ」
「おい、今何か言おうとしたか?」
ミリアの年齢勝手に言っておいて酷い。
なんて駄弁っている最中、
「ただいま」
「あ、お帰、え……?」
描かれた魔法陣が光り、ミリアが召喚された。
「皆んなこっち来て」
「え、どういう、そもそも何を……」
「いいから早くして」
何もわからないままとりあえずミリアと密着する三人。
ミリアが目を閉じると魔法陣が再び輝き出し、なにか不思議な感覚を味わう。
「どこだ、ここ」
目を開けると周りには原っぱが広がっていた。
下にある魔法陣は光が治まる。
近くには道が見え、馬車が走っていた。
「ここ、街の近くの……!? ……ん? あの馬車、俺が護衛してた商人の……!?」
こっち方面に向かって進んでいるようだ。
近づいてきた馬車から顔を覗かせていた一人がこちらをじっくりと見つめ、目を丸くして驚いた様子を見せる。
「ら、らららライル!!??」
どうやら本当に件の馬車らしい。