前略、乙女座の星です。「チェックメイトおおお!」とか言う姫が私の加護を受けているという話のせいで困っています。
第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞応募作品です。テーマは「チェックメイト」。
※「前略、」の部分は詳しくは前作『「星座の愛し子」と言われている私との婚約を破棄されるなど正気ですの? わかりました。では鉄拳制裁で。』(https://ncode.syosetu.com/n6953hz/)に書かれています。
前作を読まなくても本作だけでお話は成立していますが、前作を読まれるとよりお楽しみ頂けると思います。
皆様今晩は。私は夜空に浮かぶ乙女座の星です。
私の事をスピカでも真珠星でも好きにお呼び頂いて構わないのですが、ひとつだけ聞き捨てならない事があります。
「エレナ、いい加減に寝ろ」
「私は公務と鍛錬で忙しいのです」
「夫婦の時間を過ごすのも王族の務めだぞ。無理にでも寝室に連れていこうか?」
「ふっ、乙女座の愛し子である私に勝てるとでも?」
あああ、これです。このエレナ姫、私に愛され加護を獲ていると言われていますが、それは事実ではありません!
私が本当に加護を与えたなら、愛に満ちた美しさMAXの姫になった筈。
しかし今彼女は書類を見ながら筋肉を育てています。誰だコイツに加護を与えた脳筋の星は。それも最強の力を!
彼女が産まれた時、その力の強さに私が驚いて瞬いたのだけど、それを見たポンコツ星占い師が「姫は乙女座の加護を受けている」って誤解を広めちゃったのよ……。
「試してみるか?」
ニヤリと笑ったのは彼女の夫のディール。美男子ですがコイツも戦闘狂です。二人はバルコニーから飛び出します。あれ? 人間って二階から飛び降りても平気なの?
ガキン! キィン!
空中で既に二人の攻防は始まっています。何故蹴りを腕で防いだだけで金属音がしてるの?
「やるわね貴方」
「お前もな。流石は戦乙女だ」
「当たり前ですわ。星の加護の力です」
姫が強すぎて戦乙女の二つ名を持つのは仕方ないとしても、強さを私の加護にしないでほしい。お陰で最近巷の男子達の「加護が欲しいランキング」1位が私なのよ。私は愛を与える星なんだってば!
「ではこれならどうだ!」
ディールが姫の両腕ごと身体を抱きしめました。……抱きしめたのよね? なんか拘束ついでにサバ折りをしている様に見えるけど気のせいね!
「ぬっ、ぐぅ」
そのままキスでもしなさい。私の愛の加護は存分に送ってあげるわ! はいキッス! キッス!
ブフッ!
「ぐわっ」
え? ちょっと! エレナ姫が口から毒霧を吹いたんだけど! いつから仕込んでたの? ていうかもう星の加護関係なくない?
毒霧をマトモに受けたディールがよろめき膝をつきます。その前で姫は脚を高々と上げました。はしたないわ!
「チェックメイトおおお!!」
青白い魔力を纏った脚で夫の脳天めがけ、踵落としをキメる姫。ちょっと! やりすぎよ!
カッ!
エレナ姫の踵を防いだのは……青白い魔力の盾?
「……貴方も?」
「フッ。そうだ」
ま さ か
「俺も乙女座の加護を獲ている」
ディール、お前もかあああ!!
お読み頂き、ありがとうございました!
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