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王子とはしばらく会えません

「リックのいもうちょが病気なのに、なんでリックもダメでしゅか?」


 マスクの問題は解決されたがセドリック王子と遊べないということがまだ納得できないレオ君の質問攻撃が始まった。


「それはだな、その病気がうつりやすい病気でなあ」


「おたふく風邪をめされた人は、ほかの人に移さないようにお部屋でじっとしていなくてはならないのですよ」


 言葉をかみ砕いて陛下が説明し、レオ君の表情でわかっていないとわかるとバルト将軍が説明の補足をしていく連係プレー。



「あにょー、しょーぐんしゃん、「おたふくかじぇをめしゃれた」ってなんでしゅか? リックのいもうちょは赤ちゃんでも「おた……なんとか」という変な食べ物食べましゅたか?」


 召されたという敬語を違う意味で解釈したレオ君の若干頓珍漢な質問も加わったので一瞬爆笑の渦に包まれたが、「おたふくかぜ」が双子の王女様方の病気の名前だと理解。


「人間はいっぱい病気しゅると聞きましゅたが、大丈夫でしゅか?

 どうしたら治りましゅか?

 僕がリックのいもうちょのびょーき治すお手ちゅだい出来ることありましゅか?

 ちいしゃい赤ちゃん、二人もびょーき、可哀しょう」


 小さいながらもセドリック王子の妹の心配をするレオ君。

 なんて優しい!


 なんて、周囲の大人たちを感動させたのもつかの間、はっと一瞬動きを止めたレオ君。


「リックと一緒にあしょべにゃいのはいつまで?」


「うむ、おそらく一週間……、レオが七回夜眠ったくらいか?」


「七回もでしゅか?」


 陛下から約一週間セドリック王子と遊べないということがどれだけ長い期間か理解したレオ君のショックは大きかったようで、しゃがみ込んでいじけてしまった。


「おいおい、ルドルフ。レオがいじけてしまったじゃないか」


「学園長、そうは言われても、学園長ならレオにもし娘たちの病気がうつったとしても対処できますか?」


「それを聞かれると、俺もサビーナも記憶にある限り病気らしきものをしたことがない。

 分からん」


「えー?

 吸血鬼は病気しないんですか?」


「エルランジュ、いずれ教えるが、我々と人間は基本的に短命種と体のつくりが違う上に個体数が人間より少ないから強いのだ」


 おっとお。よくよく考えたら聞いていいのかこういう話。


 今この部屋にいるのは学園長の正体を知ってる人ばっかりだからいいけれど、やっぱりそういう長命種は頑強さも人間とは違うのね。

 私が学園長と病気の話をしている傍ら、陛下がいじけてしゃがみ込んだレオ君の側に寄って一生懸命ご機嫌を取っていた。


「レオ、セドリックと遊べないのは可哀そうだからな。

 その代わりと言っては何だが余が出来ることなら、レオがしたいことを叶えてやろう。

 だからそう落ち込むな、な?」


「あーい……」


「そう落ち込むな。

 セドリックの話では、レオは外で遊びたいと言っていたそうだが」


「リックがおーしゃまに、僕がおしょと行きたいこと言いましゅたか?」


「うむ。

 まだあのテレジアの仲間はまだ捕まっておらぬが、かといってレオのような小さな子供がずっと部屋の中ではつまらぬだろう。

 ここは王宮だから自由に遊びまわることはできんが、この魔導塔の側の騎士棟にある屋外闘技場に行ってみんか?

 そこは広いし、騎士達が剣や槍の練習をしているぞ。

 もちろん、騎士も魔法の練習をするぞ。

 広い場所に行って、魔法でも使ってみんか?」


「ふおーッ!

 お外で魔法?」


 泣いた烏がもう笑ったじゃないけど、外で魔法と聞いた途端、いじけていたレオ君が勢いよく飛びあがり、陛下に飛びついた。


「うおっ、どうした?」


「おーしゃま、僕はお空を飛べる練習がしたいのでしゅよ。

 ジジしゃんもシャールしゃんもすいすい飛びましゅ。お外で練習したいでしゅ」


「そ、そうか。

 空か。

 外で空を飛ぶ魔法の練習やると寒いがいいのか?」


「コーチョがありましゅよ!

 フィーしゃんからもらいましゅた!

 だいじょーぶ!」


 唾を飛ばす勢いで陛下に「だいじょーぶ」を連発し、一気にテンションマックスに跳ね上がったレオ君。


「コーチョ、とってきましゅ。

 今から行きましゅ」


 約束を取り消されたらたまらないとばかりに、コートがある隣の部屋に突進していった。


「おや、まあ。機嫌は直ったようですね」


「でも、いきなり訓練している場所に行ってもいいんですか?」


「大丈夫ですよ。

 ルジアダ嬢と学園長とレオ君の三人なら、帰って騎士の若手にはいい刺激になります。

 それにこの魔導塔の中での生活ばかりでは、息も詰まるでしょう。

 今まで、状況が状況でしたが、大人しくいい子でここにいてくれたことに感謝です。

 本来子供は外で元気に遊ぶものです」


「確かにそうだな。

 セドリックも庭で走り回るのが好きだしな

 レオも自由に遊べるようにしてやりたいものだ」


 とまあ、そんな流れでレオ君が外で遊ぶ話になったのだが、そこで何やら学園長が二人に耳打ちした途端、陛下達も一緒に騎士棟の屋外闘技場に向かう話になった。


 屋外闘技場に向かうと既に二つの小団体がそれぞれ整列し「イチッ」、「ニッ」と点呼をしていた。普段の訓練では甲冑などは身に着けず動きやすそうな服を着た騎士団の方々。

 そんな騎士団の方々の訓練する脇でレオ君と空を飛ぶ練習するのだと思っていたら、なぜか空を飛ぶ練習の話がいったん棚上げされ、私が一対一でエイドリアン・フォン・エギル様と試合することになってしまった。

 なぜ?


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