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ジェラシー?

「口の中は切れてないみたいだし、歯も違和感はないか?」


「はい。さっき林檎が喉の奥に触れたのでむせてしまいました」

フィガロ様より背が高いおじい様と学園長がいくら幼児の力とはいえ、先ほどレオ君が勢いよく突っ込んだ林檎でフィガロ様に口を開けさせ口腔内に怪我がないか念のため確認している。


「喉に詰まらなくてよかった。

 いやはや、子供の行動は人間も魔族も予測不能だ。

 フィガロ、すまんな」


「いえいえ」


 そして一方加害者レオ君はシャールに教育的指導を受けている。


「いいな、勢いよくものを人の口に突っ込むと怪我のもとだ。

 レオだっていきなり大きなお菓子を口に突っ込まれたらどうなる?」


「……くりゅしいでしゅ」


「硬い菓子ならどうする?」


「歯が欠けましゅ」


「人間は弱い生き物だからすぐに死んでしまうんだぞ。

 小さなセドリックに同じことをやったら、喉に詰まらせ死んでしまうこともあるんだ」


「ふおっ!

しょんな!」

]

「シャール、その教え方は良くない。

 レオ、人間だろうが魔族だろうが誰だろうが、だれかにさっきみたいに口に食べ物を運ぶときは、エルランジュにやったみたいに、優しくやるんだぞ。

 わかったな?」


「あ、あいっ」


 レオ君に目線を合わせる学園長の説教を聞いて、勢いよく返事をしたものの更に顔を青くしたレオ君は、くるりと回って椅子に座っているフィガロ様の顔を見ると、フィガロ様の膝もとに来るまでの数秒の間に涙と鼻水が決壊してぐしゃぐしゃの顔になってしまった。


「あー、フィーしゃん、ふぃーしゃん、ごめんしゃーい」


 レオ君はセドリック王子と仲良しになっているので万が一遊んでいる時に同じようなことが起きたら大変だと付け加えて説明したみたいだが、泣き顔に「ちょっとお灸をすえすぎたか」と頭を掻く二人。

 だが、謝ったレオ君の口から飛び出した言葉に皆が絶句する。


「別に、ぼ、僕はフィーしゃんを怪我しゃしぇたいわけじゃないでしゅよ。

しょれに、嫌いじゃないでしゅ。

 でも、ジジしゃんをフィーしゃんにとりゃれたくにゃいから、敵だとこの手がまたやってしまうかもしれましぇん……」


「レオ!」


「レオ君?」


 この手のせいだと自分の右手を左手で「めっ」と怒るレオ君の姿に、皆が「あー」と天を仰ぐ。

 なんともレオ君の言い訳がジェラシーに正直過ぎてフィガロ様は口をあんぐりと開け、さっき「言い過ぎたか?」と顔を曇らせたシャール達が微妙な顔をする。


 そこでなぜかエロイーズがレオ君の前にしゃがんで目線を合わせた。


「レオ君、それは嫉妬という感情で、母親のような存在のお姉様を取られたくないという小さな子供にはよくある気持ちです」


「エロイージュしゃん!

 ジジしゃんはおかーしゃんじゃないでしゅよっ」


「わかりました。

じゃあ、お姉様はレオ君が大好きな人ですね?」


「あーい」


 大好きな人と肯定されてにまにまとほっぺに手を当てて照れるレオ君。

 今日は泣いたり照れたり忙しいな、レオ君。


「フィガロ様も好きですけど、フィガロ様にお姉様を取られたくないから林檎で意地悪をしてしまったんですね?

 私は小さい頃乳母に育てられましたけど、きれいなお母様とおしゃべりする時間は大好きでした。

でも、お父様は夕方になるとお母様は夜会に行くから準備しろと声を掛けに来て、お母様はそれを合図にお部屋に私を置いて行ってしまいました。

それが嫌でお父様にいたずらして怒られましたわ。

 お父様の服にわざとお茶をこぼしてみたり、我が家の玄関の両脇にある今のレオ君のよりも大きな花瓶を割れば夜会に行けないだろうと玄関の大きな花瓶を割ろうとして、失敗して横倒しにして花瓶が倒れる音を聞きつけた家令に怒られたり、とにかく色々やって相当家の者を困らせましたわ」


「……え、エロイーズ、あなた、そんなことしてたの?」


「ええ、当時はまだあんな両親でも好きだったんです。

 まあ、そんな私のことは置いといて、そんな意地悪ばかりしたら、お母様は私のところに来なくなりました」


「えー?

 しょんな!

 エロイージュしゃんはしゃみしいからやっただけですよ?」


 私も初めて聞く妹の小さなころの実体験を聞いてレオ君だけでなく私も驚いた。

 しかも、可愛い顔の妹がやったことは子供がやったことと言って許すには行動が激しすぎる行動に、皆が若干顔を引きつらせていたが。


「目の前からいなくなると余計恋しがるから最初から会わない方がいいと判断したのか、子供の相手が面倒だったのかは知りませんが。

とにかく好きな人を取られたくないと思って、好きな人に近寄る人に嫌がらせをすると好きな人も去ってしまうということです。

 だから、好きな人には好かれるように、好きな人の周りの人にも好かれるような行動をしなくてはいけません。

 小さなレオ君には少し難しい話でしょうか?」


「わかりましゅ!

 僕は小しゃくてもエロイージュしゃんのお話、分かりましゅた!

 フィーしゃんにいじわりゅしないように我慢しましゅ」


 エロイーズに再度瞳を覗き込まれたレオ君が、選手宣誓のように片手をあげて答える姿はかわいいけど、言ってることが感情に正直すぎて、どう反応していいのやら。

大変久しぶりの更新です。首を痛め、長らく更新できず申し訳ありませんでした。最近やっと更新できるようになってきましたので、無理をしない程度の頻度で更新したいと思います。よろしくお願いします。

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