家族構成の確認
口火を切ったのはレオ君だった。
「ジジしゃん」
「何?」
「ジジしゃん。
このおねーしゃん、ジジしゃんいじめたくしゃいおばしゃんにしょっくり」
なんとまあ、かつて「王都の薔薇」と呼ばれた母はレオ君にはただの「臭いおばさん」認定。
ああ、あの美にこだわり続けているという母が聞いたら卒倒するだろうと思うとなぜか笑える。
そして妹はいきなり「おねーしゃん」と呼びに驚いたのか、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして「お姉さん?私お姉さん?」とおかしな状態に。
「このおねーしゃんはジジしゃんの「いもうちょ」?
ジジしゃんをいじめない?」
「え、ええ。大丈夫よ。
私と似てないと思うけど妹のエロイーズ。
妹の顔は母に似てるけど良い子よ。
レオ君は「妹」て言葉はわかる?」
「あーい、あのくしゃいおじしゃんとおばしゃんからジジしゃんが生まれた後に生まれた子でしゅねー。
ジジしゃんいじめないならいいでしゅよ」
ああ、我が両親、完全に頭に着く形容詞が「くしゃい」だよ……。
でも、その言葉が妹のツボに入ったのか、妹が噴き出した。
そして母に似てても妹が「いい子」だと聞いた途端、レオ君の目つきが穏やかになった。
どうやら、あの両親襲撃の日に両親はレオ君の中で敵認定され、母に似ている妹を警戒したみたいだ。
「く……臭いおばさん。あのお母様が聞いたら卒倒しますわね」
「ごめんにゃしゃーい。でも、あのおばしゃん達が来た時、とってもくしゃかったでしゅ」
「そうね、両親は香水臭かったですわ」
うんうんとレオ君の言葉に同意する妹に、フィガロ様がぼそっと「君もだろ」と呟いていたが、どうやら妹の耳には入らなかったようだ。
「あにょー、はじめまちてー。
エロイージュしゃん、僕、レオ、二しゃい。
よろしくお願いしましゅー」
シャールの腕から落ちそうなほど勢い良くエロイーズに向かって頭を下げて挨拶するレオ君。
「あ、そうだわ。私としたことが自己紹介が遅れて失礼いたしました。
初めてお目にかかり恐悦至極に存じます。魔族の……」
膝を曲げ、スカートの端をつまみ王太后様が流行らせた長い挨拶をし始めたエロイーズにレオ君が「うみゅう」とおかしな声を出しながら首を傾げる。
「エロイージュしゃん」
「は、はい」
挨拶の途中で声を掛けられたエロイーズが顔をあげて首を傾げる。
「むじゅかしい挨拶はよくわかりましぇん。よろしくでしゅー」
「あ、そうね、その、私はエロイーズ。よろしくね。
レオ君と呼んでもいいの?」
形式ばった挨拶をぶったぎったレオ君に促されるまま、エロイーズがレオ君の笑顔につられてへにゃっと笑った。
「あいっ。
あにょー、ジジしゃん、エロイージュしゃん。
この前のあのくしゃいおじしゃんとおばしゃんがジジしゃんとエロイージュしゃんのおとーしゃんとおかーしゃん。
くしゃいおばしゃんのおとーしゃんがおじーちゃん。
エロイージュしゃんとあのくしゃいおばしゃんとおじ―しゃんは似てましゅよ」
ん?
うちの家族構成の確認か?
一体何を言いたい?
読んでいただいてありがとうございます。
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