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妹はオジサマ好き?

「フィリパ学園の学園長様って、本当に若くダンディでてカッコいいですわ、お姉様。

 こんな素敵な学園長様がいらっしゃる学校に通えるお姉様が羨ましいです」


 シャールの勘違いで重い巨体にいきなり乗っかかられたものだから、若干キレ気味だった学園長。

 そんな時にタイミングよく騎士棟から妹とフィガロ様がやってきた。

 

 そして、部屋に入ってきて挨拶を済ませた途端、先ほどの妹のセリフである。


 フィガロ様はともかく、妹は学園長と直に会うのは初めてで、挨拶をした後なぜか妹は有無を言わせぬ勢いで学園長の隣に座り、目を爛々と輝かせて上目遣いで学園長を見つめている。


「あ、いや、その、なんだな。

 こんなおじさん褒めても何も出ないよ」


 さすが「王都の薔薇」と呼ばれた母の美貌を受け継ぎ「王都の薔薇の再来」と呼ばれる美しく可憐な妹だけある。

 レオ君の中で無敵ヒーロー殿堂入りの学園長も、大人になりかけの可憐な金髪碧眼の初対面の美少女に崇められるように、しかも身を乗り出して膝に乗っかりそうなほど引っ付かれたらたじたじらしい。


 あれ?

 待てよ。 


 今、その口から「おじさん」って自分で言いましたよね。


 レオ君が「おじさん」と言ったら罰を与えるなんて言ってた口が言うか?


「学園長、今、自分で「おじさん」と言いましたよね?

 じゃあこれからレオ君がそう呼んでも問題ないと思いますが?」


「エルランジュ、いや、あっちのエルランジュ嬢もエルランジュだから、あー」


「何をテンパっておるのだ。情けない。サビーナが見たら呆れるぞ。

 あれは妹のエロイーズだ。さっき名前を聞いただろが。

 エロイーズ、おぬしもそんなオヤジを相手に媚びを売るな。

 そしてもう少し静かに喋れ」


「えー、シャールったら酷い!

 媚びじゃないわ。崇拝よ!

 お姉様、学園長様はうちのお父様と比べたら月と鼈。

 とっても素敵な方じゃない。そんな方に「おじさん」だなんて酷いですわ。

 学園長様、私のことはエロイーズとお呼びくださいまし」


 キラキラリンなんて効果音付きのまばたきじゃないか?と思えちゃうほど目を輝かせ上目遣いで学園長を見上げる妹。

 その異様な妹の熱視線から逃れるかのように後ずさる学園長。


 えっと、これはどういう構図?


 エロイーズ、あなたまさか、ルーという婚約者がありながら、学園長にアプローチ?

 相手は既婚者だし、それに、公になってないけど学園長は魔族の中の吸血鬼よ!


「え、ええっと、エロイーズ、あなた、比べる対象を間違ってないかな?

 それにシャールが言う通り、今はレオ君が寝てるし、あなた、学園長と距離が近すぎよ。

 婚約者のルーが見たらどう思うかしら」


「だって、お姉様。

 こんなに大人の魅力を湛えた方、ルーのお父様とはまた違った魅力ですけど久しぶりに見ましたわ。

 お父様みたいなインチキ美男子じゃなくて、このダンディな雰囲気と……」


「エロイーズ、落ち着きなさい。

 レオ君が起きたらどうするんだ。

 まったく、君がルジアダに会いたいというから面会許可を貰って来たと言うのに、そんな風に騒ぎたいだけなら騎士棟に送る」


「あ、え、その、……ごめんなさい、フィガロ様」


 おっとお。

 実の姉より将来の義理の兄になる?フィガロ様の方が実の兄っぽい。

 妹の扱いにはたけているのか、フィガロ様の一喝で妹はしゅんと大人しくなった。

 

 だが「うみゅー」と少し離れたソファで、レオ君の声が……。


「あーあ、起きてしまったではないか。

 レオ、起きたのか?」


「……おはよーごじゃーましゅー」

 むくっと起き上がり、頭に手を当て帽子を被っていることを確認したレオ君は、側に寄っていったシャールに両手をあげる。

 いつもの「抱っこ」だ。


「五月蠅くて起きてしまったなあ。

まだ眠たいなら隣の部屋で寝るか?」


「ん-、だいじょーぶでしゅよー。

 シャールしゃん、ジジしゃんとレオおにーしゃんとフィーしゃんと、知らない人の声がしましゅた」


「知らない声って、やっぱりエロイーズの大きな声のせいで起きちゃったじゃないか」


「だってえ」


「ジルレ、そう怒ってやるな」


 頬を膨らますエロイーズを庇うように学園長がフィガロ様に「まあまあ」と間に入る。


「え?」


 学園長が間に入るような人ではないイメージが出来上がっていたけど、やはり学園長も男。美少女に弱いのだろうか。


「エロイーズは反省、学園長様もこの子をあまり庇わないでください。

 レオ君、おはよう。起こしちゃってごめんね」


「フィーしゃん!

 おはよーごじゃーましゅ」


「ごめんね。

 うるさかったでしょ」


 シャールに抱っこされるレオ君は謝るフィガロ様に「だいじょーぶ」と答えながら目をこすった後、その銀の目を見開き、フィガロ様の背後にいる知らない顔のエロイーズにじーっと視点を定め様子をうかがって、キッと目を吊り上げた。


 珍しい。

 

 よほどおかしな人じゃない限り自分から挨拶する子なのにどうした?


 いきなり威嚇するかのようにレオ君がぎゅんと勢いよくシャールの腕の中から身を乗り出した。


「お、おい。レオッ、どうした?」


「レオ君、どうしたの?

 この子はルジアダの妹のエロイーズだよ」


 しかも妹も、自分から挨拶すればいいのに、じっと見つめる幼児レオ君の視線を受け止めて見返してる。


 ん?

読んでいただいてありがとうございます。

評価、ブックマーク、いいね、お気に入り登録など大変ありがとうございます!

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